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 会誌・論文誌・出版物
 産業論文抄録 第2巻
 第1号 [論  文]
■マイクロ接触センサアレイの構造設計
     名古屋大・杜 立群,権 貴龍,新井史人,福田敏男,東海理化・糸魚川貢一,塚原靖典

 チタン基盤上にPZTの薄膜を付けてマイクロ接触センサーを製作した.PZT薄膜は水熱合成法により成膜され,センサーとして,またアクチュエータとして利用される.マイクロ接触センサーは製作に便利な構造をもっており,高温環境にも使える.本研究では,マイクロ接触センサーの構造とセンサーの出力を上げるための方法に研究ポイントを置く.すでに知られているCantilever-beamの理論を用いて,出力をあげる最適な数学モデルを提案し,実験による結果を報告する.振動周波数,電極の面積,そして位置によって最適なセンサーの構造が確認された.それに基づいてマイクロ接触センサーアレイを製作した.以上の結果をここに報告する.(2003年2月公開)

第2号 [論  文]
■ヘリカル巻きフィラメントワインディングプロセスにおけるモデリングと巻取り角度・張力制御系の構築
   豊橋技科大・今村 孝,寺嶋一彦,赤峰宏平,小笠原慎一,三菱レイヨン・竹本秀博

 軽量/高強度材料である炭素繊維を用いた強化プラスチック成形体は,製紙用送りロールや圧力容器の補強材料への応用需要も高い.その成形工程では,極細の炭素繊維を数千本単位で収束したTow材を,フィラメントワインディング成形により円筒体へ巻取る成形法が用いられる.このとき,繊維を緩みなく高密度に,適切な張力を与え,かつ,繊維の巻取り角度を制御することが,繊維材料の有する強度を十分に発揮した成形体を得る方法の一つと考えられる.しかし,産業界では巻取り張力制御に対して,ダンサロールなどによる張力変動の吸収・抑制を行う場合が多く,最適性を考慮した張力制御の開発が望まれている.
本論文では,巻取り軸回転速度と繊維搬送速度の比を用いたヘリカル巻き制御を適用し,まず,巻取り角度に対する張力発生プロセスをモデリングする.一方,張力制御系には2自由度PID制御系を適用し,目標値応答と外乱抑制特性の向上を図る.そして,張力発生モデルと遺伝的アルゴリズムを援用した最適化により張力制御系のパラメータ調整を行う手法を提案する.本手法により自由度の高い制御系を合理的に設計することが可能となり,また張力制御実験によって,提案する手法と張力制御系の有効性が確認された.(2003年2月公開)

第3号 [論  文]
■レーザーSQUID顕微鏡の開発と半導体検査への応用
     岩手大・大坊真洋,菊地利雄

 われわれは,高温超伝導SQUID磁力計とレーザーダイオードから構成されたレーザーSQUID顕微鏡を開発した.SQUIDは,半導体上における数百フェムトテスラ程度の大きさの光生成磁場を検出する.光生成磁場と励起光波長の関係を調べ,p-n接合構造における少数キャリア拡散長を求めた.その結果は,プローブ接触方式によって得られた値とよく一致した.さらに,われわれは多結晶シリコンにおける結晶粒界の計測も行った.レーザーSQUID顕微鏡は,完全非接触で不純物汚染のない計測を高い空間分解能で実現し,さらに定量的計測を可能とする.レーザーSQUID顕微鏡は,前処理なしで迅速な計測をすることに使用できる.これらの特徴は,半導体の製造過程のモニタリングに有効である.(2003年5月公開)

第4号) [論  文]
■Nelder Nelder-Mead 法条件緩和アルゴリズムによる制御パラメータのチューニング法
     東大・太田 順,金子慎一郎,新井民夫,前田雄介,杉 正夫,千葉龍介

 本論文では,多関節型マニピュレータの高速制御のための制御パラメータ設定法を提案している.現在当該作業は,人間が,ある特定の数種類の運動パターン(テスト動作パターン)に対して,それらを適切なものにするべく多数個の設計パラメータを手作業でチューニングするという過程により行われている.これには熟練技能を必要としかつまた調整に数ヶ月かかる問題点を抱えている.本論文では,この問題を,最大オーバーシュート量と最大トルク値を制約条件とし,サイクルタイムを評価関数として最小化を目指す制約条件つき最適化問題として定式化し,simula-tion-based optimizationに基づく繰り返し順問題解法による制御パラメータ設定法を提案している.最適化手法として評価関数の勾配情報を用いないNelder-Mead法を利用する.ある特定のパラメータセットに対してシミュレーションに要する時間は多大なものとなるため,その評価回数をできるだけ減らす必要がある.そこで,計算の高速化のために一部の制約条件を緩和して解の導出を行う条件緩和アルゴリズムを設計した.66種類のパラメータ数,12個のテスト動作パタンに対して約3時間弱の計算時間で解を得ることができた.(2003年5月公開)

第5号 [論  文]
■ヒステリシスの大きな空気圧式調節弁に使用する電子式ポジショナの高性能化
     早稲田大・涌井徹也,橋詰 匠,横河電機・西島剛志,石井 実

 ヒステリシスの大きな空気圧式調節弁に使用する電子式ポジショナの高性能化プロセス制御の操作部には調節弁が多く用いられ,その多くはステムの位置制御を主目的とするバルブポジショナを使用する.高温・高圧ラインに使用される調節弁では,流体の漏れ防止のため,グランドパッキンの締め付け力が増大している.結果として,調節弁のヒステリシスが増大し,調節弁・ポジショナ系の制御性能を著しく悪化させる要因となっている.また,より高度な調節弁の制御を実現するべくポジショナの電子・多機能化も進んでいるが,ヒステリシスの大きな調節弁に使用する場合には,各構成機器が有する非線形要素の相互干渉により不具合を生じることが少なくない.この不具合を改善するためには,機器のさらなる改良・高性能化が求められるが,電子式ポジショナの離散演算部での制御手法の改良のみでこれを実現できればより実用的である.そこで本論文では,空気圧式調節弁・電子式ポジショナを一制御系(システム)と捉え,まず,調節弁のヒステリシスが大きな場合に見られる不具合現象の発生要因を実験調査により抽出している.さらに,これをふまえて制御性能を向上させるために,位置制御調節計の積分器入力信号にギャップを設けて微小偏差を許容し,その上でダイヤフラム室内圧力の制御ループを付与したカスケード制御を導入した制御手法を開発し,その有効性を明らかにしている.(2003年6月公開)

第6号 [論  文]
■構造化データフィールドアーキテクチャと情報制御システムの稼動中移行
     日立製作所・鮫嶋茂稔,河野克己,足達芳昭,日立ハイコス・松野 強,東大・新 誠一

 設備制御と情報処理を統合した情報制御システムは、製造業を始めとする産業基盤分野で重要な役割を果たしている.こうした大規模なシステムでは,システムを稼動させたまま段階的に構築していく必要があるとともに,需要に応じて柔軟かつ迅速に増改造できることが求められている.ここでの課題の1つは、一時停止したり拡張したりしたサブシステムと,稼動中のサブシステムの間でデータの整合性を確保することにある.本論文では,サブシステム間を疎結合化するために,従来自律分散システムで用いられていたマルチキャスト通信を用いる.またデータの一致を行うために,マルチキャスト通信の位置透過性を時間軸方向に拡大したアーキテクチャを提案する.これは任意の計算機に送信データを種類に応じて蓄える情報在庫をもたせ,受信側が必要に応じて過去のデータを取得できるようにしたものである.このアーキテクチャに基づき,各サブシステムがシステムに参入した際,自律的にデータの復旧を行う技法を合わせて提案する.本提案アーキテクチャと技法は,FAシステムを始めとする複数のシステムに適用し有効性を検証した.(2003年6月公開)

第7号 [論  文]
■トラック運行管理ASPによる業務向け交通情報サービスの開発
     日立製作所・岸野清孝,石田 康,伏木 匠,権守直彦

 GPS,携帯電話パケット通信網を利用したトラック運行管理ASP“e-trasus”(e-Transport Support System)を構築し2001年4月より業務向け交通情報サービスを開始した.サービス機能としては,車両位置動態管理,車両運行実績管理,目的地への到着時間予測および到着自動認識を開発した.
 VICSは旅行時間や渋帯度の提供率が平成12年度現在30%と低いため,最適な経路誘導や個別目的地への到着時間予測には不十分である.そこで,トラック運行管理ASPの位置データをプローブカー情報として利用することを考え,トラックの位置データを道路リンクにマップマッチングし,その走行経路を推定することにより,アップリンク時間間隔の長い(15分)位置データを走行経路の速度データに変換する方法を開発した.実走行データを収集し,約9割の位置データが交通情報として活用できることを確認した.さらにプローブ情報から求めた旅行時間情報を利用した到着時間予測システムを開発した.到着自動認識では,目的地に対して認識半径を事前に設定し,車両の現在位置データから目的地までの相対距離と認識半径と比較することにより,到着/未着を判断する方式を開発した.実証実験を行い,自動認識半径は50mでほとんどの場合認識可能であることを確認した.(2003年7月公開)

第8号 [論  文]
■シングルチップマイクロコンピュータと信号圧縮法によるインパルス応答計測装置の製作
       筑波大・青島伸治

 信号圧縮法は著者が以前に考案した方法で,コンピュータにより作成した特別な試験信号を使って線形形のインパルス応答を求めるものである.この方法でインパルス応答を計測するのに便利な,シングルチップマイクロコンピュータH8を使った装置を設計・製作した.この装置はEIA232C規格のインタフェースを介してパソコンのシリアルポートと接続して使用する.試験信号はパソコン中でMATLABソフトウエアにより作成され,ウインドウズの標準機能であるハイパーターミナルにより製作した装置に送られる.試験信号はH8プロセッサに内蔵されているD/Aコンバータによりアナログ信号となって計測対象に印加される.そしてその線形系の応答はH8内蔵のA/Dコンバータにより取り込まれてSRAMメモリに格納される.こうして得た計測データをパソコンに送り,MATLABのプログラムにより信号圧縮法の処理を行う.信号圧縮法は最初は音響系の計測のために開発されたものであるが,他のいろいろな線形系にも適用可能である.開発したH8ベースのデータ入出力装置と通常のパソコンとの組合せにより線形系の動特性の測定が容易にかつ便利に行えることが確かめられた.本論文では開発したハードウエアとソフトウエアの技術的詳細について述べる.(2003年7月公開)

第9号 [論  文]
■オリマルジョン漏洩検知装置の開発
     関西電力・小松原 彰,トキメック・茂木良平,小沢金吾,鈴木由起彦,若泉貴之

 従来の油膜を利用した漏洩検知装置では検知が困難であったタンクヤードの溜桝に適した早期漏洩検知が可能なオリマルジョン油の漏洩検知装置を開発した.
 画像処理技術を応用したもので,オリマルジョン油を回転する半透明なプラスチックメッシュに付着させ透過照明を用いて投像し画像処理して,透過光の相対輝度の低下からオリマルジョン油の付着を検知している.画像処理のクラッターとなる溜桝の落葉・ゴミ等については,メッシュの輝度変化の周期性を利用して誤検知を防止している.透過光には実験結果から識別性能の高い青色LED照明を採用した.
 装置は溜桝の水位変動に対応できるフロート型とし,フロートを分割して重心位置を低くして安定な構造としている.(2003年10月公開)

第10号 [論  文]
■直流側電圧の垂下特性を考慮したPWMインバータの動的モデルと電流追従制御
      防衛大・佐々木清吾

 太陽電池や蓄電池を電源とするPWMインバータシステムでは,電力変換による直流側電流の脈動に伴って直流側電圧が変動する.これは,電源の電圧降下特性によるものであり,交流側電流等の波形が歪む原因になる.本稿では,スイッチ素子を駆動する制御器を,直流側電圧の降下特性を考慮して設計し,この問題点に対処する.理論的には,この問題は交流側波形の2倍の周波数の振舞いに起因する.線形制御理論では対応できない問題である.したがって,本稿では、非線形な制御器を構成する.具合的な設計手順はつぎの通りである.まず,PWMインバータのスイッチモデルを直流側電圧の降下特性を考慮して導出し,状態平均化法を用いてその状態平均化モデルを得る.つぎに,そのモデルが非線形システムであることから,電流追従制御問題を非線形H∞制御問題としてとらえる.そして,その制御問題を凸計画問題に帰着し,具体的に制御器を得る.最後に,数値シミュレーションにより,設計したPWMインバータ制御システムならびに使用した設計法の有効性を検証する.そこでは,線形制御器による結果との比較も行う.(2003年9月公開)

第11号 [開発・技術ノート]
■PLCプログラミング言語ST(IEC61131-3)によるスライディングモード制御理論の実装について
      法政大学・坂本憲昭

 多くの研究者によりさまざまな制御理論が提案されているが,その理論を現実のプロセス系に適用することは容易ではない.なぜなら,研究に使われるハードウェアはパソコン,ソフトウェアはC言語やVisual Basic(米国Microsoft社の登録商標)などが多いのに対し,現実に使われている制御装置は,PLC(Programmable Logic Controller)やDCS (Distributed Control System)である.ラダー図やメーカー固有のプログラミング言語で制御則を記述しなければならない.そこで,開発した制御理論を移植容易で,かつ現場に受け入れられる制御機器が望まれる.
 この要望に対し,製造現場という環境からPLCを選択すれば,PLCのオープン化を目的に制定された国際規格IEC61131-3(JIS B 3503)のひとつであるST(Structured Text)が有効と考える.制御理論をこのST でプログラミングして実装する.しかしながら,STを用いた事例紹介は海外で数件あるが,国内は皆無である.
 そこで本研究では,具体的な制御理論として筆者らが研究しているセルフチューニング型のスライディングモード制御を取り上げてプロセス系の簡単な実験を行い,STによるプログラミングは,C言語からの移植が容易であり実装しやすいことを確認した.(2003年10月公開)

第12号 [論  文]
■五極子熱線パルス法を用いた2次元流れの場における砂質土壌の熱前線伝播速度ベクトルおよび熱特性の同時計測法およびその応用
     岩手大・遠藤 明,原 道宏

 農地土壌や都市地盤の水分不飽和域において,汚染水の水分輸送の量や方向といった汚染物質の輸送状況を把握することは,農業生産基盤や地下水源の環境評価を行う点でとても重要なことである.筆者らは,原(投稿中)の理論に基づき,間隙流速(PWV)ベクトルと熱特性を同時に測定するための五極子熱パルス(QPHP)センサを開発し,流束場におけるPWVと熱特性の同時計測方法および計算手順を明確に示した.QPHPセンサは,プローブの中央({x, y}={0, 0})にある熱源ロッドと,熱源ロッドの周囲にある4本の熱電対ロッドから構成される.定常流条件下の砂柱において,5種類の熱パルス印加時間を熱源ロッドに印加した後,温度上昇の差と和の経時変化を計測し,正規化速度ベクトルと熱前線伝播速度(TFAV)を計算により求めた.砂の体積含水率,間隙水体および計測した体積熱容量からTFAVをPWVに換算した.同定したPWVは高流速範囲において±10%の誤差範囲で設定PWV(カラム底部からの流下水総量の増加速さから求めたPWV)と合致した.流れのある状態で同定したカラム砂の熱物性は,±10%の誤差範囲で双極熱パルス法を用いて測定した熱物性と非常によく合致した.(2003年10月公開)

第13号 [開発・技術ノート]
■ニューラルネットワークを利用した医療機器産業の開発実態の問題点分析
     経済産業省・笠井 浩

 医療機器産業の研究開発の実態を明らかにし,問題点を定量的に分析するため,医療機器産業およびロボット産業に対して研究開発状況に関するアンケート調査を実施し,回答結果をニューラルネットワークで分析した.
 ロボットの回答をSOMで分類すると「需要側との連携重視型」「専門技術発展型」「研究体制確立型」に分かれた.また,このロボットの回答で生成された結合加重マップで医療機器を分類すると,医療機器は「需要側との連携重視型」と「専門技術発展型」の中間に分類され「研究体制確立型」の近傍には分類されなかった.
 つぎに,アンケートの回答内容を入力層,競争力の有無を出力層として中間層も有するたニューラルネットを構築し,教師データとしては競争力の有無とその背景が明確な医療機器およびロボットの回答を取り上げBP法で学習を行った.学習後のネットワークに医療機器の回答を入力し,出力値の競争力をみた.
 結果は,統計上の競争力より計算上の競争力が低下する機器が多く,特に治療系の機器では開発リスクの大きさを反映して低下度が大きい.また,画像診断機器では,ロボットを教師とした場合競争力が向上しており組織重視の研究体制が見てとれる.
 また,産業分析分野でもニューラルネットの応用が有益であることが実証され,他産業の分析や,景気分析などへの応用も考えられる.(2003年12月公開)
copyright © 2010 (社)計測自動制御学会