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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.38 No.5 (2002年5月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文] [ショート・ペーパー]
■ 窒化アルミニウム薄膜を用いた箔状フレキシブル圧力センサ

産総研・上野直広,秋山守人,池田喜一,立山 博

 アルミニウム箔表面に形成した高C軸配向性窒化アルミニウム(AlN)の薄膜の圧電性を圧力検出の原理に用いた箔状のフレキシブルな圧力センサを開発した.圧力によって誘起された電荷を検出する電極について,外部電極によって内部電極を包み込み,外部環境から完全に遮蔽するラミネート構造を採用し,発生電荷の外部へのリークの防止と誘導電荷の抑圧によって正確な発生電荷の検出が可能となった.また,AlN薄膜を内部電極の両面あるいは外部電極の内面に形成することで,誘起電荷を倍増させることができる.試作したセンサについて感度の直線性の検証を行い,優れた特性を有していることを示した.ただし測定された周波数特性は低周波数域でのゲインの低下と位相のずれの増大を示しているので,静圧を直接検出するためには補正が必要である.そこで,センサの電気特性についてモデルを構成,伝達関数を導出し,実験結果から推定されたパラメータを適用した逆伝達関数を用いて,準静圧状態の検出が可能であることを実測データによって示した.


■ 4点検出信号のウェーブレット解析による近方場移動不規則音源の3次元位置と速度の同時推定

筑波大・佐々木公男,小山高専・平田克己

 移動音源の3次元位置と速度の同時推定は,自律移動ロボットの音環境認識系の開発において重要である.移動不規則音源の位置と速度の同時推定法としては,バイスペクトル解析を用いた直線配置3点検出による2次元速度推定の報告があるが,3次元空間での試みは報告されていない.一般に移動音源からの放射信号を空間的固定点で検出すると,ドップラ効果によって検出信号は時間軸伸縮を受け,非定常信号となる.そこでわれわれは,この非定常性を短時間パワスペクトル解析により抽出する形で,4点検出による近方場移動不規則音源の3次元位置と速度の同時推定法を提案した.本論文では,4検出信号をウェーブレット変換によって得られる時間−スケール(周波数)の2次元パターンの相関解析により,ドップラ効果に起因するパターン全体の相対的伸縮率,すなわちドップラ係数比,相対的な伝播遅れ時間,および伝播距離に伴う振幅減衰比をそれぞれ抽出し,近方場移動不規則音源の3次元位置と速度を,音源放射スペクトルによらず,逐次同時推定する方法を提案した.
 前提条件明確化,原理の理論的定式化の後,提案手法の有効性と特長を,推定誤差の観点から基礎実験により明確化している.


■ 外乱入力点を考慮した2自由度PID調節計の調整法について

神戸市立高専・田口秀文,京大・荒木光彦

 PID制御は半世紀以上の歴史をもつ制御方式であり,パラメータ調整に関しても種々の提案がなされている.筆者らは2自由度PID調節計のパラメータ調整に関して,外乱応答を最適にした後に目標値応答を最適にするという2段階最適化法を提案した.これらのパラメータ調整の研究では,外乱は操作量と加え合わされる形でプラントに加わる(外乱が入力側に加わる)ものとして論じられている.しかし,実際の制御系では,主要外乱が必ずしも入力側に加わるとは限らない.
 本稿では,一般的な位置に外乱が入る場合にPIDパラメータをどのように調整すればよいかを検討する.そのために,「一次遅れ+むだ時間」と「積分+一次遅れ+むだ時間」のバッチモデルを想定し,外乱入力点の変化を一次遅れの時定数およびむだ時間の長さの変化として表現した.まず,PIDパラメータを従来の(すなわち,入力側に外乱が加わる場合の)最適値に固定して,外乱入力点の違いが外乱応答にどのような影響を与えるかを時間応答および周波数応答の観点から考察する.つぎに,2段階最適化法によって一般的な位置に外乱が入力する場合についての最適パラメータを求め,外乱応答と目標値応答がどのように改善される(場合によっては劣化する)かを検討する.最後に,これらの検討結果に基づいて,パラメータ調整の指針を示す.


■ 双腕1自由度フレキシブルアームのPDS協調制御

東工大・松野文俊,セイコーエプソン・林 彰史

 本論文では,双腕1自由度フレキシブルアームによる物体把持について論じている.剛体物体を把持した双腕1自由度フレキシブルアームを分布定数系としてモデル化し,有限次元近似を導入せず,無限次元システムとしての閉ループ系の安定性を保証する制御則を提案する.システムのもつエネルギーをすべて考慮したリアプノフ関数を導入することにより,各アームの角度・角速度・ひずみをフィードバックする簡単なPDS協調制御則を導出する.その閉ループ系の漸近安定性を分布定数系として証明する.提案するPDS協調制御は,フレキシブルアームの分布定数系としての性質をすべて反映したセンサ出力の直接フィードバックであり,実装が容易である.さらに,提案したPDS協調制御則の有効性を実験により検証する.


■ 壁打ちタスクにおけるタスク実現の難易度の変化

明石高専・武内将洋 阪大・宮崎文夫,松嶋道也,河谷雅人,橋本尚明

 本論文では,ボールを壁に向かって打ち,壁と床で反発して返って来たボールを再び壁に向かって打ち返す,というプロセスを繰り返す『壁打ちタスク』を取り上げる.このタスクは『器用さ』が必要とされる打撃タスクの典型的な例である.離散システムの安定性解析を通して,タスク遂行に必要とされる器用さがボール軌跡の形状によって変化することを明らかにする.また,外乱のもとで壁打ちタスクを継続して行うための打撃時のラケットのフィードバック制御計画の提案を行う.


■ 切除平面法によるインターポレータのサンプル値設計

京大・若佐裕治,安福大輔,永原正章,山本 裕

 インターポレータはマルチレート信号処理の基本要素の1つであり,アップサンプラとディジタルフィルタで構成される.近年,サンプル値制御理論によって信号処理系全体のアナログ特性を陽に考慮したインターポレータのディジタルフィルタ設計法が提案された.しかし,これまで提案された設計法では,(@)解くべきサンプル値制御問題を等価な離散時間問題に変換する際の条件が非常に厳しい,(A)高速サンプル/ホールド近似を用いれば,(@)の問題点は解決できるが,かなり高次元の問題を解く必要があり,線形行列不等式などによる通常のH∞設計では実用規模の問題を解くことが困難である,という問題点があった.(A)の問題点は線形行列不等式のサイズとそれに含まれる変数の数が非常に大きくなることに起因している.この点に着目して本論文では,設計問題を線形行列不等式で記述して解くのではなく,フィルタの係数のみを変数とするH∞ノルム最小化問題に帰着して,これを切除平面法によって解くことを提案する.この方法により,上記の問題点が解消され,32,64倍などの実用的なアップサンプル定数のインターポレータの設計が可能になる.


■ 強化学習における矛盾の概念に沿った漸増的な状態空間の構成法

岡山大・半田久志,二宮 明,松江高専・堀内 匡 中国能開大・小西忠孝,岡山大・馬場 充

 本論文では,知覚入力空間が多次元連続空間として規定される環境において,矛盾の概念に基づき,ARTニューラルネットワークを用いて逐次的に状態空間を構成する手法を提案する.提案手法では,エージェントがARTニューラルネットワークを用いて認識した状態と,その時刻にとった行動,およびつぎの時刻において認識された状態を状態遷移記録テーブルとして保存し,テーブルに格納されている状態遷移記録間の整合性を取りつつ,状態空間の構成を行う.本論文では,特に「同一状態・行為から同一状態に遷移しない矛盾」と「共通領域で生じる矛盾」に着目し,それぞれに対する解消法を提案する.提案する状態分割法と代表的な強化学習アルゴリズムであるQ学習を併用した手法を,倒立振子制御問題および自律移動ロボットの光探索問題に適用し,ARTニューラルネットワークのみを用いた状態分割法が粗い分割を行うときでも,それぞれのタスクに応じた適切でかつ合理性を有する状態分割が得られることを示し,提案手法の有用性を明らかにしている.


■ ニューラルネットワークおよび局所探索法を用いた共同学習におけるペアの組合せ決定法

京工大・新池一弘,京都教育大・中峯 浩 京工大・三宮信夫

 近年,教育現場では生徒の習熟度に適応するため,さまざまな学習形態が採用されている.ペア共同学習においては,学習効果の向上が期待できるが,ペア間に協調性がない場合はかえって悪い結果をもたらすこともある.そこで,ペアの組合せを誤らない学習指導方法の確立が望まれる.
 本研究は,共同学習の場面において生徒の学習効果を効率的に向上させるためのペア決定法を提案する.共同学習の課題として,プリント配線基板の設計問題を取り上げる.まず,設計問題に対する学習者の適性能力等のデータを得るために実験を行う.つぎに,実験結果に基づいて問題正答率を予測するニューラルネットワークモデルを構築し,その妥当性を検討する.さらに,ペア共同学習におけるペアの組合せ決定法として改良された局所探索法を提案する.
 その結果,予測値であるが学級全体が70%以上の正答率を示すようなペアを構成することができた.また,生徒の自由意志で決定された実験時のペアや通常行われているクラスの名簿順によるペアと本手法により求めたペアを比較することにより,本手法で得られたペアは教育現場での経験にかなったものであり,ペアの組合せ決定法に有効であることがわかった.


■ Network Structure Oriented Evolutionary Model: Genetic Network Programming―Its Comparison with Genetic Programming―

Kyushu Univ.・Hironobu KATAGIRI, Kotaro HIRASAWA, Jinglu HU, Junichi MURATA and Michitaka KOSAKA

 本論文では新しい進化論的計算手法Genetic Network Programming(GNP)を提案する.提案手法の特徴は任意の有向グラフで表現されるプログラムの自動合成を行う点にある.具体的にはGNPプログラムは与えられた判定処理を行う「判定ノード」群と与えられた行動処理を行う「処理ノード」群を有向線分で接続し,グラフ構造のもつ時間・時系列情報の表現を利用した複雑で知的なプログラムの生成を目的としている.このため,おもに木構造のプログラム合成を行っているGenetic Programming(GP)と比べ,GNPでは過去の情報を自然な形で将来の行動に利用することが可能になる.本論文ではタイルワールドと呼ばれるエージェントのテストベッド環境を用いることにより,グラフ構造のGNPと木構造のGPとの違いを明らかにし,GNPの有用性を示した.


■ 画像による横断歩道の距離推定

京工大・北脇 卓,呉 海元,京工大・塩山忠義

 視覚障害者が単独で安全に横断歩道を横断するために,本論文では,画像から横断歩道の終端部分を検知し,道路幅(横断歩道の長さ)を推定する方法を提案する.はじめに,われわれは濃淡画像を二値化することで,横断歩道における白線を抽出し,条件付きHough変換より白線の輪郭線を検出する.つぎに,画像情報を用いて得られた各白線の輪郭線から横断歩道全体の輪郭線を推定し,その3次元ベクトル方向を透視変換のもとで求める.そして,それらのベクトル解析により路面の面方位ベクトルを導き出す.最後に,視覚障害者と横断歩道の終端点間の距離を推定する.多数の横断歩道における実画像を用いた実験を行い,本提案手法の有効性を確認した.


■ センサレスベクトル制御駆動による無変速機電気自動車の開発

神奈川大・新中新二,竹内 茂

 電気自動車(EV)のための最も重要な技術の1つは,駆動源たるモータの駆動制御技術である.EV用モータとしては,交流モータが多用されている.EV用交流モータの駆動制御技術としては,以下の特性をもつことが求められている.
(1) モータの駆動制御に,回転子に装着されるべき位置・速度センサを必要としない.
(2) 高速な,効率のよい,あるいは正確なトルク発生を可能とするベクトル制御法に立脚している.
(3) 広い動作領域を有し,変速機を必要としないEVの実現を可能とする.
(4) 良好な回生特性を有し,純電気ブレーキのみでEVの停止を可能とする.
これらの4特性を同時に達成するには,いわゆるセンサレスベクトル制御法が不可欠である.最近,著者の1人は,高性能なセンサレスベクトル制御法の1つとして,周波数ハイブリッドベクトル制御法を開発した.本論文は,FHベクトル制御法を活用したセンサレスベクトル制御駆動EV,特に,変速機を必要としないセンサレスEVという革新的なEVの開発を,設計,実現,フィールドテストの観点から新規に報告し,その有用性を明らかにするものである.


■ 偏相関を用いたパイプ検査システム

熊本大・鳥越一平

 偏相関技術を応用したパイプ検査システムを提案する.管の一端にスピーカを取り付けて雑音を放射し,他端に伝播してきた音圧信号をマイクロホンで検出する.この信号を,音源やマイクロホンの特性を補償するための逆フィルターに通したのち,偏相関分析を行って,偏自己相関(PARCOR)係数を求める(逆フィルターは,欠陥のない直な管を伝播してきた音圧信号を偏相関分析することで自動的に決定できる).偏自己相関係数は,管を短い音響管の連鎖でモデル化したときの区間境界での反射係数に対応しているから,この係数から管の断面積分布を推定することができる.原理を確認するため,アクリルパイプを用いたモデル実験を行った.その結果,人工的に製作した狭窄・拡大の音欠陥について,断面積分布を正しく推定することができた.


■ シミュレーテッド音響インダクター

熊本大・鳥越一平

 音響的なインダクタンスを等価的に実現する方法−シミュレーテッド音響インダクターを提案する.ある場所における音圧をマイクロホンで検出し,その場所の媒質を,そこにパイプが開口している場合と同じ速度で加振する.このとく,その場所を音響的に見れば,パイプが実際に存在する場合と区別が付かない.原理を確認するため,音圧検出にエレクトレットマイクロホンを,媒質の加振にピストンと積層形圧電素子を用いた装置を試作した.この装置を容器に取り付けて音響的な共鳴器を構成し,容器容積と共鳴周波数の関係を測定した.その結果,長さ70mmの本装置が,等価的に約1200mmのパイプとして動作していることが確かめられた.最後に,シミュレーテッド音響インダクターの計測への応用について考察した.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会