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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.38 No.9(2002年9月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文] [ショート・ペーパー]
■ 地中探査レーダのための逆投影ヒストグラム法による画像再構成

東工大・田中正行,高山潤也,大山真司,小林 彬

 地中探査レーダのレーダ画像の水平分解能を信号処理的に向上させる目的で,新たな画像化手法として逆投影ヒストグラム法を提案した.提案手法は大きく逆投影による画像化処理と画像の重ね合わせ処理に大別される.画像化処理では,マイクロ波モデルとして簡便な幾何光学モデルを採用し,このモデルに基づき反射係数を逆投影することにより,ひとつの観測波よりひとつの画像を再構成する.地中レーダを走査することにより,複数の観測点に関する観測波が得られ,それぞれの観測波に対応する画像が複数得られる.そこで,相加平均に対応する加法型重ね合わせ処理と相乗平均に対応する乗法型重ね合わせ処理を組み合わせた混合型重ね合わせ処理により,複数得られた画像を重ね合わせることにより,最終的にひとつの画像として再構成する.
 埋設物の探査実験に先立ち,マイクロ波の減衰特性に関して基礎実験を行い,減衰特性のパラメータを同定した.ここで得られた減衰特性を利用し,2つの埋設管の探査実験を行ったところ,従来法では2つの埋設管を区別することは難しいが,提案手法により2つの埋設管が弁別され,埋設物の大きさの比較も可能であることがわかった.


■ 赤外線センサを用いた無接触型咀嚼回数測定装置

豊橋技科大・小幡賢三,日立通信システム・佐伯高志 豊橋技科大・田所嘉昭

 近年の食品の軟食化によって,特に子供の咀嚼回数が減少し,咀嚼回数の確保の必要性が言われている.そこで,咀嚼回数を簡単に測定するための装置を提案する.従来装置の問題点であった頭部への圧迫感を低減するため,赤外線による反射型センサを用い,無接触による測定を試みた.咀嚼回数の検出は,センサとこめかみ部分の間の距離変化を測定することで行った.そして,咀嚼によるセンサ出力信号の周期および強度を利用し,食事と会話の動作を区別することで,咀嚼回数を正確に測定する方法を検討した.赤外線センサを眼鏡のつる部分に取り付けたメガネ方式を採用することで,測定中の装着を簡便にした.また,センサの受光部の負荷抵抗を変化させることで,センサとこめかみ部分の距離の個人差を容易に調整できる仕組みを設けた.
 実験の結果,実用レベルの誤測定率を得た.また,測定のために要する装着や調整時間も,従来法と比較して短時間で済むことが確認された.


■ 独立型二足歩行ロボット用姿勢センサユニットの基礎的研究

広島工大・白井義人,北山正文

 本論文では,水銀を用いた姿勢センサとジャイロを組み合わせた,水平に対する傾き角度を計測する,独立型二足歩行ロボット用姿勢センサユニットのコンセプトを提案することにした.
 ジャイロを用いて,水平に対する傾き角度を計測する場合,誤差が累積されるので,適当な間隔でリセットする必要がある.また,二足歩行ロボットのような軸が固定されていない系において,その上体の水平に対する傾き角度を計測することは困難である.しかし,ジャイロによる傾き角度の計測値(積分値)を姿勢センサによって計測した傾斜角度値でキャリブレーションすると誤差の拡大は起こらず,水平に対する傾き角度が検知できる.
 まず,ジャイロにとって準真値となりうる値を計測するための姿勢センサについて説明し,そのセンサによる傾斜角を計測するための信号処理手法を提案する.
 つぎに,本姿勢センサとジャイロを組み合わせる場合の計測理論を提案して,その特性を検証した.その結果を基に,姿勢センサユニットのプロトタイプを作製した.また,実用に近い状態での実験も行い,提案の有効性を検証した.


■ コンベアライン上での連続秤量における精度の向上

豊橋技科大・野田善之,三桜工業・桜井祥晴,都立高専・山崎敬則 
新光電子・大西秀夫,小林政明,小山高専・黒須 茂

 近年,コンベアライン上に搬送される秤量物の質量測定の高速,高精度化の要求にともない,質量測定器(はかり)により秤量された計測データに関係のない誤差信号が重畳されており,その対策が重要な課題となっている.とくに,コンベアライン上で秤量する場合には,コンベア本体ならびに秤量物の固有振動による周期的な誤差成分が発生しやすい.
 本研究では,FIRフィルタと2次的にローパスフィルタとを併用したデータ処理を提案する.まず,秤量物がコンベアライン上に搬入され,荷重受部を通過していく際の,秤量物とロードセルを含むコンベアラインの動的モデルを構成する.シミュレーションと実測データからモデルの妥当性を検証し,秤量物,計測コンベアの幾何学的寸法から秤量を可能にする条件を導いている.そしてFIRフィルタを設計し,種々のダウンサンプリング周期に対して平滑化処理を実施し,平滑化されたデータの最大値をもって秤量する簡易測定法を提案する.実測データを基にデータ処理し,その誤差率の分布特性から補正曲線を求め,それによって補正した結果,本測定法の実用性が高いことを明らかにしている.


■ 最適性に基づく適応制御系の再設計

統数研・宮里義彦

 適応制御の研究においてこれまでの議論は適応系の安定性に関するものが大部分であり,過渡特性を含む制御性能については多く論じられてこなかった.これに対して近年のバックステッピング法によって,簡便な形式で適応制御系の安定解析ができるようになっただけでなく,適応系や非線形系の過渡特性を詳細に議論することができるようになった.さらに非線形H∞制御や逆最適性に基づく非線形制御の研究では,最適性の観点から非線形制御の特性が論じられている.このような背景をふまえて本論文では,漸近安定であるだけでなく特定の評価関数に対して最適あるいは準最適となるような適応制御系の構成法について論じる.これは適応制御の安定解析に用いるリアプノフ関数とHamilton-Jacobi(あるいはHamilton-Jacobi-Isaacs)方程式の解を部分的に関連づけることにより可能となる.その方針に基づいて本稿では3つのタイプの適応最適制御問題;Type 1:入力項の評価を含めないH∞制御問題;Type 2:入力と出力の2次規範を最小化する最適制御問題;Type 3:入力項も評価に加えたH∞制御問題;を考える.特にモデル規範形適応制御問題や適応サーボ問題も含む一般的な適応制御問題に対して,従来型の適応制御器との相違点が明確になるように,最適制御器の陽な表現形式を与える.これにより従来は自由パラメータであった設計変数の一部が,評価規範に応じて明確に指定できることも示す.


■ スライディングモード制御による加熱炉の温度追従制御

能開大・坂本憲昭

 この論文では,加熱炉内の雰囲気温度計算に対して,スライディングモード制御による計算方法を提案する.鋼片の表面温度が追従すべき昇温パターンを与え,そのパターンに追従するための鋼片の雰囲気温度をスライディングモード制御により計算する.
 モデルの誤差などをまとめた不確かさを与え,その不確かさがあっても,昇温パターンに対する追従性を補償する.
 実機による動作確認では,昇温パターンへの滑らかな追従を確認した.


■ 適応的ランダム探索法RasIDの拡張とその評価

九州大・平澤宏太郎,宮崎弘幸,胡 敬炉

 最適化問題は理学,工学等,さまざまな場面で重要であり,そのため,適応的ランダム探索法RasID(Random Search with Intensification and Diversificaiton)が提案されている.RasIDは通常の進化論的計算手法(GA,GP,EP,ES)とは異なり,1個体の集中化探索と多様化探索により大域的最適解を探索する手法であり,探索のための確率密度関数を過去の探索の成功あるいは不成功の情報により適応的に修正していく点に特徴がある.
 (1+1)ES(Evolutionary Strategy)においてもランダム探索法の探索幅を過去の探索情報により変更しているが,(l+1)ESでの探索のための確率密度関数はガウス分布であり,RasIDのように左右非対象のきめこまかな探索ができるようにはなっていない.
 本論文では,RasIDをつぎの2点で改良し,23個の複雑な目的関数を利用して最近発表された進化論的計算手法(EP,FEP)との体系的な比較評価を行っている.改良点は,個々の変数の探索幅を個別に調整できるようにして,するどい溝のある複雑な関数の最適化にも対応できるようにしたこと,および確率密度関数の修正の信頼性を高めるために,1候補解ではなく複数個の候補解により確率密度関数を変更している点である.
 シミュレーションの結果,改良したRasIDは1点探索であるにもかかわらず,最新の多点探索と同程度の探索性能を示すことを明らかにしている.


■ 組合せ計量方式を用いた袋詰め操作における実行不可能解の特性化

関西大・村上佳広,倉田純一,内山寛信,上野貴史

 袋詰め問題においては,合計重量が,与えられた目標重量となるように対象物を何個選ぶかを決めることが重要になる.袋詰め問題に対する解の候補をすべて列挙したとしても,ある場合には,目標重量からかなりはずれた解しか得られないことがある.目標重量に関して許容できる上限値を合計重量がこえないという制約を加えれば,目標重量からはずれた解は,実行不可能な解となる.その実行不可能な解の特徴を明確にするために,袋詰め問題を整数計画問題として定式化した.
 定式化したモデルにおいて,袋詰め問題は制約充足問題として扱っている.まず,2つの目的となる制約条件を考慮した.1つは,合計重量が目標重量以上でなければならないという制約であり,もう1つは上限重量以下でなければならないという制約である.つぎに,適切な解の候補を効率良く探索できるように,探索空間を絞り込む制約を追加した.これらの制約に対して解の候補を列挙できるアルゴリズムを提案した.また,このアルゴリズムを使って袋詰め操作をシミュレーションできるようにした.
 袋詰めのシミュレーションにおいて,解が存在しない場合の条件を明確にした.1つは,解の候補を探すことなく解が存在しないことがわかる場合(case i))で,もう1つは,解の候補をすべて探索した後に解が存在しないことがわかる場合(case ii))である.case i)について,いくつかのパラメータ値を変更してシミュレーションし,実行不可能解の特徴を明らかにした.その結果,対象物の組合せを作る段階でcase i)にならないようにすれば,実行不可能解の個数を減らすことができることを示唆した.


■ 長期記憶を導入した階層型ニューラルネットの追加学習アルゴリズム

神戸大・小林正宣,小澤誠一,阿部重夫

 訓練データが逐次的に与えられるような環境では,新規データの追加学習にともなう結合荷重の修正によって,ニューラルネットに分散されて記憶されている過去に獲得された入出力関係が壊されてしまう.この現象は追加学習による「干渉」と呼ばれ,「可塑性と安定性のジレンマ」として古くから知られてきた問題である.本論文では,ニューラルネットの追加学習モデルとして,Plattが提案したResource Allocating Network(RAN)に長期記憶(Long-Term Memory, LTM)を導入したRAN-LTMモデルを提案する.RAN-LTMでは,干渉の抑制に有効なLTMデータを優先的に想起し,それを訓練データと同時に学習することで,高速で優れた追加学習性能が実現されている.これを確認するため,訓練データの発生分布が変動する問題および訓練データにノイズを含む問題において,さまざまな観点からRAN-LTMの追加学習性能の評価を行った.その結果,従来手法に比べて関数近似の精度および学習の高速性において優れた性能をもつことを確認した.


■ 音楽の生演奏時における聴取者と演奏者の相互作用の解析

東工大・山本知仁,三宅美博

 音楽をCDなどのメディアから聴くときと,コンサートなどの生演奏で聴くときでは,同じ曲を聴いても違う印象を受け,生演奏の方が良い印象を受けることが多い.これまで,その原因として考えられてきたのは,音響設備や演奏に伴う視覚的な情報であった.しかし本論文ではその原因として,生演奏における演奏者と聴取者の作用の双方向性に注目した.つまり,CDなどのメディアから音楽を聴くときには,聴取者は流れてくる音楽を一方向的に聴く.それに対し,生演奏時には,演奏者が聴取者から影響を受けて演奏を変化させることがある.そして,それが音楽を良く感じさせる原因になっているのではないかということである.本論文ではこの生演奏時における相互作用を具体的に解析するにあたり,演奏者側では音楽の小節周期,聴取者側では呼吸周期に注目して解析した.
 結果として,第1に聴取者の呼吸周期が演奏者の各演奏に影響を受け変化することを示し,第2に,対面演奏時に演奏者が各聴取者から影響を受け演奏を変化させていることを示した.第3に聴取者の呼吸周期と演奏者の小節周期の作用関係が双方向的であることを示唆し,両周期の間で相互引き込み現象が起こっていることを示唆した.


■ 観測波を使った誘導モータの回転子抵抗値推定について

近畿大・谷本浩一,長田 朗

 近年,センサレス制御と呼ばれる,回転センサを使用しない,誘導モータの制御法が開発されている.しかし,いくつかのセンサレス制御法においては,回転子抵抗値の変動のために,回転速度の推定値に誤差が発生してしまう.そこで,今回われわれは,観測波を使用した,誘導モータの回転子抵抗値の推定法を提案する.そして,シミュレーション結果から,今回提案した方法が,有効であることを示す.

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