(社)計測自動制御学会中部支部
計測自動制御学会 中部支部 第39期 支部賞
(敬称略)

研究賞(2件)

  • 受賞者:不破 勝彦(名古屋工業大学)
    題 目:「極及び零点配置に基づいた制御系設計とその応用に関する研究」


     時不変線形システムの振舞いは、零入力応答と零状態応答の重ね合わせにより決定される。零入力応答はシステムの極により特徴付けられるが、零状態応答はシステムの極ばかりでなく零点にも依存するため、極および零点の配置は所望の入出力特性を得る意味で重要な制御問題である。
     本研究では、所望の極および零点配置を達成するための制御系設計手法を提案している。基本的な考え方は、入力空間の拡大ならびに分割を行なうことにより配置のための自由度をつくり、フィードバックやフィードフォワードを用いて、極および零点を配置することである。この結果を巧妙に応用して、初期値補償、外乱抑制、サーボ、零感度の各種制御問題を解決し、その有効性を明らかにしている。
  • 受賞者:山田 宏尚(岐阜大学)
    題 目:「遠隔操作・臨場感提示建設ロボットの研究」


     遠隔操作建設ロボットにVR技術を導入し,オペレータに作業現場の十分な臨場感を与えるとともに,コンピュータの支援に基づく高度かつ精密な作業を人間に優しいヒューマンインターフェースにより実現するシステムの構築を行った.とくに,@油圧マスタ・スレーブ制御法において油圧シリンダの摩擦・減衰特性を補償しつつ良好な力フィードバックを可能とする新規のマスタ・スレーブ制御や外乱オブザーバにより建機制御の精度を高める手法等を提案した.また,Aコンピュータグラフィックスを用いて,オペレータに視覚情報を効率的に与えるため新規システムを開発し,B3軸揺動装置を用いて,擬似的に4自由度以上の動きを揺動体感させるための手法を開発した.さらに,上記@〜Bを組み合わせた実用的なバーチャルシステムの開発を行い,その評価を行った.


技術賞(1件)

  • 受賞者:浅井 彰司(豊田中央研究所)
    題 目:「操舵反力模擬装置の開発」


     自動車のハンドル操舵角1deg以下の微小操舵領域における操舵トルクは操安性に大きく影響することがわかっているが,従来この領域の操舵トルクを再現する手段が無かった.このため,これまで様々な車両のベンチマーク走行実験に留まっており,網羅的な詳細解析が困難であるという重要技術課題が存在していた.  
     本研究では,微小操舵領域のハンドル弾性摩擦をモータの高性能制御によって実現し,実車の操舵感を高度に模擬する操舵反力模擬装置を開発した.この装置の応用により,操舵システムの摩擦特性や非線形ばね特性を個別にかつ自由に設定できるようになり,パワステ制御系などの人間の触覚感受特性に基づく最適化が可能となった.


奨励賞(3件)

  • 受賞者:関 健太(名古屋工業大学)
    題 目:「耐震試験用振動試験装置の高性能化を目指した実用的な制御系設計手法に関する研究」


     構造物の耐震性能を評価する手法として,振動台を用いた実加振実験がある。振動台では,テーブル上の試験対象物が振動することにより発生する反力の影響で波形再現性が劣化する。本研究では,この問題に対し,制御系の外乱抑圧特性向上を陽に考慮したFB補償器の設計と適応アルゴリズムを併用したFF補償器を構築し,地震加速度波形の再現性の向上を実現している。
     一方で,振動台には積載重量,スケールの限界があるため,実大大型構造物を直接加振することが困難となる。そのため,全体の数値計算と,主要な一部の部分構造実験を組み合わせたハイブリッド実験システムの開発が進められている。ハイブリッド実験では,油圧加振機の応答遅れがシステムの安定性を劣化させるとともに,応答帯域が制限され,正確な振動応答解析の実現を阻害する要因となる。そこで,システムの安定化と目標値追従特性の両者を改善する2自由度制御系を構築し,システムの性能向上を実現した。
  • 受賞者:高木 賢太郎(名古屋大学)
    題 目:「イオン導電性高分子アクチュエータの動的システムモデリングに関する研究」


     イオン導電性高分子金属複合体は筋肉のように柔軟な新しいアクチュエータとして期待されているが,動作原理が十分には解明されておらず,また定電圧下で応力が緩和してしまうことが知られている.従来モデル化に関して,高分子物理学の観点からの応力拡散過程の定式化に関する研究や,制御工学の観点からシステム同定手法に基づくブラックボックスモデルの研究などがある.本研究では,イオン導電性高分子アクチュエータの動作原理の理解と,高精度な制御を目的としたモデル構築のため,物理定数によってパラメトライズされた動的なモデルの導出を目指している.具体的には,ポリマーの変形に関する電気化学と力学から,偏微分方程式,近似された状態空間表現,さらに分布ポートハミルトン系表現などに基づく動的システムモデルの構築を行った.モデルは電気系,電気機械変換系,機械系の3つのサブシステムからなるものとし,それぞれが偏微分方程式系で表されることを物理的な仮説に基づく支配方程式と実験から確認している.
  • 受賞者:中島 正博(名古屋大学)
    題 目:「電顕下ナノマニピュレーションによるナノ計測・ナノアセンブリ技術」

     
     現在,各種デバイスのさらなる高精度化・高集積化・高感度化が進んでおり,マイクロ・ナノスケールの微細な構造物を単一で操作するマイクロ・ナノロボットマニピュレーション手法により,その場で微細加工・精密組立てを行う技術が注目を集めている.本研究では,走査型・透過型電子顕微鏡下でのハイブリッドナノマニピュレーションシステムを構築し,ナノ構造物のその場計測・ナノアセンブリを行うシステムを提案した.本システムにより,従来まで困難であったマイクロ・ナノ構造物を走査型電子顕微鏡内でより効率的に設置・作製し,透過型電子顕微鏡による高分解能観察環境下においてマニピュレーションする仕組みを提案した.本システムにより,単一の多層カーボンナノチューブを操作し,その外層の一部を除去加工したテレスコピング・ナノチューブをその場作製した.また,テレスコピング・ナノチューブに外部電圧を印加することにより,その内層コアのナノアクチュエーションをその場観察した.


功労賞(0件)


  該当なし
 



戻る