計測と制御 2008年2月号

VOL. 47, 2008

特集「ユビキタス社会のサービス・コンテンツの人間中心設計」

ユビキタス時代と言われて久しいが,「ユビキタス時代に本当に適したサービスやアプリケーションとは何か」はいまだによくわからず,多くの開発者や技術者たちは模索を続けている.その原因の1つは,「ユビキタス」とは実体が何かがよくわからないこと,そしてそのため,そこで展開すべきサービスやコンテンツのイメージがうまく作れないことにある.ユビキタスの実体がわかりにくいことの原因は,専門化の議論においても,システムやインフラといった技術的な側面の議論とユビキタス本来の考え方であるHuman-Computer Interactionの観点からの議論が混在し,また,技術的側面や新しいインタラクションを中心に考えたサービスやコンテンツの研究開発が進められており,ユビキタス時代に「単に便利である」という観点以外の生活や社会がどのように変化するかと言った人間中心の視点からの議論があまり行われて来ていないためである.
従来,サービスやコンテンツを創出する場合,すなわちシステム企画を立てる場合には,市場調査や要求分析を行うことが一般的である.しかし,ユビキタス時代にはその方法論は通用しない.要求分析はユーザが現在抱えている問題点の抽出や改善は可能でも,ユーザ自身に密着していない事柄や近未来に関する事柄を質問しても,有効な回答を得ることは困難なためである.
そこで本特集では,ユビキタスをシステム・インフラの観点,インタラクションの観点,サービス・コンテンツの観点を整理しながら編集を行っていく.特に,本特集では人間中心のサービス・コンテンツをどのように生み出していくかの方法論に重点を置き,編集を進めていきたい.具体的には,フォトエッセイやフォトダイアリーと呼ばれる手法を用いたフォトシナリオ法の紹介や,実践事例などが含まれる.
これまで,サービスやコンテンツの開発はアカデミックというよりは,それぞれの開発者の勘や経験などで進められてきた.本特集は,そのようなユビキタスという枠組みを超えて,人間中心のサービス・コンテンツ創出に対するアカデミックな取り組みと方法論の提供にも役立つことを目指している.


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