第2回「安全・安心の科学」シンポジウム

主催 計測自動制御学会 関西支部
共催 IEEE SMC Japan Chapter

計測自動制御学会関西支部では,3年前,関西支部講習会「安全の探求」を企画しましたところ,各方面から多くの反響を頂き,当時の関西支部長の熊谷貞俊大阪大学教授を中心に,同テーマの延長で継続的な学会活動企画を進めて参りました.これを受け,個人,家族,小規模共同体,会社組織,国家,民族,人類など,いろいろなレベルでの人間の安全への脅威が何によって生まれ,育ち,どのように人間に認知され,どのような回避の可能性があり得るのかについて,環境・資源・災害・事故などを包括した領域横断的な討論と情報交換の場として,「安全・安心の科学」の研究会を立ち上げ,昨年7月には,研究会の発足にあたって第1回のシンポジウムを開催し,多くの参加者を集めました.この度,第2回のシンポジウムを下記の要領で開催することになりました.皆さまのご参加をお待ちしております.

幹事代表 椹木 哲夫 (京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻)
幹事 熊谷 貞俊 (大阪大学大学院工学研究科電気工学専攻)
小島 史男 (神戸大学大学院自然科学研究科機械・システム科学研究科)
宇佐美 照夫 (三菱電機(株)先端技術総合研究所)
西 義和 (川崎重工業(株)システム技術開発センター)
岩木 保雄 (SICE関西支部)

テーマ『くらしの安全と安心』

講師

◎吉川 榮和 君(京都大学名誉教授) 「社会の安心と納得を希求する技術安全システムの探求−共生の視点から」
◎曽根 悟 君(工学院大学 工学部) 「鉄道における『安全』から『安心』への動き」
◎宮木 康有 君(江崎グリコ(株)冷菓開発研究所) 「食品業界における『安全』『安心』の取り組みと消費者意識」
◎古阪 秀三 君(京都大学) 「品質事故事例からみる建築生産システムの実態とその脆弱性」

開催情報

日時 平成18年12月6日(水)11:00 - 17:30 懇親会 18:00 - 20:00
会場 中央電気倶楽部
〒530-0004 大阪市北区堂島浜2丁目1番25号
TEL: 06-6345-6351(代) FAX: 06-6345-6877
(大阪駅から中央電気倶楽部まで徒歩約10分)
定員 80名
参加費 主催・協賛学協会会員 10,000円,会員外 15,000円,学生 3,000円(以上資料集代含む)
資料集のみ 3,000円(送料込み)
申込締切日 平成18年11月30日(木)
申込方法 「SICE関西支部安全・安心の科学研究会シンポジウム申込」と標記し,(1)氏名 (2)連絡先(名称,部課名,所在地,電話番号,FAX番号,電子メール) (3)所属学協会 (4)送金方法 (5)送金時期 (6)請求書宛先(必要な方のみ) をご記入の上,下記宛にFAXもしくは電子メールにてお申込下さい.
支払方法 原則として参加費は前払いとなっております.下記の方法でご送金下さい.
銀行振込: 京都中央信用金庫 百万遍支店 普通 0925880
計測自動制御学会関西支部安全安心科学 代表 椹木哲夫
  • 11月30日までに入金が確認できた方には参加証を事前に送付いたします.当日お持ち下さい.
  • 上記以降の場合は当日会場にて参加証をお渡し致します.
  • 請求書による支払いを希望される場合は,請求書の宛先などを申込書にご記入下さい.この場合11月30日までにお振り込みいただきますようお願い致します.
申込先ならびに問合せ先 〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻 椹木哲夫/湊忍
Tel/FAX:(075) 753-5233(湊忍)
Email. minato@kuaero.kyoto-u.ac.jp

プログラム

10:30〜 受付開始
11:00〜12:00 「安全と安心の科学研究会の概要」
代表幹事 京都大学 椹木 哲夫 君
幹事 大阪大学 熊谷 貞俊 君
幹事 神戸大学 小島 史男 君
《昼食》
13:00〜13:55 社会の安心と納得を希求する技術安全システムの探求−共生の視点から」(京都大学 吉川 榮和 君)
13:55〜14:50 鉄道における『安全』から『安心』への動き」(工学院大学 曽根 悟 君)
《休憩》
15:20〜16:15 食品業界における『安全』『安心』の取り組みと消費者意識」(江崎グリコ(株) 宮木 康有 君)
16:15〜17:10 品質事故事例からみる建築生産システムの実態とその脆弱性」(京都大学 古阪 秀三 君)
17:10〜17:30 「まとめと閉会挨拶」

講演概要

「社会の安心と納得を希求する技術安全システムの探求−共生の視点から」

京都大学 吉川 榮和 君

○講演概要

社会の安心と納得を得るための技術システムの安全確保には,(1)社会のインフラを支える機械システムとそれの安全を支える人々との調和,(2)そのようなシステムに関わる人々の組織と社会・環境との調和 の2つの切り口がある.最近,これを失敗やヒューマンエラーという見方で接近する動きが産業界で活発である.しかし「ひと」の失敗,ヒューマンエラーは根治できない.そこには結局のところ,(a)「正しい」ことが判らないひともいる,(b)「正しい」と頭では判っていてもひとは必ずしもそうするとは限らない,(c)人々は何が「正しい」かで考え方が違う.これらは資質・教育の問題,ヒューマンエラー・安全文化の問題,価値判断・合意形成の問題,と上がっていくことを考えると,逆にエラーなき(=エラーを許さない)技術社会を目指すのは,危険な社会思想のように思う.完璧でなくても人々の社会をうまく回らせるための思想(共生の思想),常に共考する仕組み(学習する組織)を考える方が良いのではないか,と考える.

技術と社会との共生には,人々の「共感」を生み出す仕組み,そのための広い意味での「アフェクテイブ」なヒューマンインタフェースの創出が求められる.筆者は人々が(1)でも(2)でも,(a),(b),(c)のそれぞれにおいて,社会的によりセンシテイブになっていくこと(=クリテイカル・シンキングができるようになること)が重要と考えて,そのようなヒューマンインタフェース機能創発への取り組みとして,ITを活用した技術者と一般社会とのリスクコミュニケーションや,コンピュータネットワークを活用したデイベートシステムDEEVによるデイベート教育を進めている.本講演では,そのような文理融合での多角的な取り組みの一端を紹介することとしたい.

○講師略歴

工学博士,京都大学名誉教授.1970年京都大学工学研究科博士課程修了,京大原子エネルギー研究所助手,動燃事業団副主任研究員,京大原子エネルギー研助教授,同教授,エネルギー科学研究科教授,同研究科長を経て2006年3月京大退職.現在,特定非営利活動法人シンビオ社会研究会会長,大連理工大学軟件学院客員教授,京大非常勤講師等.ヒューマンインタフェース学会元会長.専門分野:マンマシンシステム学.

「鉄道における『安全』から『安心』への動き」

工学院大学 曽根 悟 君

○講演概要

近年事故や災害により鉄道の安全に関する社会的な不安が広まっている.それでも統計上は間違いなく鉄道が一番安全な乗り物ではあるが,このように言い張っても世間の納得は得られない.一方,さまざまな要因によって,鉄道の運行に関する信頼性は世界中で低下の傾向が見られ,比較的ましな日本の状況がヨーロッパ(スイスなどの比較的信頼性の高い国)からの関心と注目を集めている.鉄道分野でのこのようなことに関するさまざまな模索を紹介して,他分野での取り組みを交えて一緒に改善法を考えてみたい.

具体的な内容としては,鉄道の安全性の統計的な実績と社会的な評価との乖離,鉄道利用者の不安の内容と鉄道事業者への不信の原因,技術的に見た安全性と信頼性との関連(特に鉄道が他分野に先駆けて広く導入したフェイルセーフ技術に対する鉄道内部の評価や意見),交通全体の中での鉄道の立場や社会的政策などを考えている.

○講師略歴

1939年東京生まれ,1962年東京大学工学部電気工学科卒業,1967年同大学大学院工学系研究科博士課程修了,工学博士,同大学講師,助教授(電子工学科,総合試験所)を経て1984年教授(電気工学科,電子情報工学科),2000年定年退官,同年東京大学名誉教授,工学院大学教授,現在に至る.

「食品業界における『安全』『安心』の取り組みと消費者意識」

江崎グリコ(株) 宮木 康有 君

○講演概要

近年わが国では食品の「安全」「安心」に関する関心が極めて高くなってきた.食品企業も対消費者やマスコミを意識してかなり緊張しながら活動をしている.原因は1990年代後半から相次いで起こった不祥事に起因する事が大きい.大手乳業メーカーの食中毒事件,遺伝子組み換え食品の認可・市場流通,BSEの国内発生,未認可香料の使用と連日の回収広告,製品虚偽表示や日付の改ざん等々の企業側の不祥事が社会的な不安を煽っていると考えられる.

現在では,毎朝の新聞社会面の下の食品企業回収広告こそ少なくなった.企業それぞれの品質保証体制が進んだ結果なのであろう.今回の講演では,ここ数年の食品業界の「安全」「安心」に関する意識の変遷,消費者の関心や誤解,マスコミの視点等の現状を整理して,食品業界と消費者を取り巻く問題点や業界最新事情をまとめ話題提供したい.

○講師略歴

1955年愛知県生まれ,1980年山梨大学工学部大学院工学研究科修士課程修了.(醗酵生産学専攻),技術士(農芸化学),1980年江崎グリコ(株)入社,冷菓開発研究所,食品開発研究所,開発企画部,中央研究所等にて製品開発研究及び製品企画の立案,食品の機能性研究,食品の安全性研究等に等に従事.2002年品質保証部長,2005年冷菓開発研究所長,現在に至る.

「品質事故事例からみる建築生産システムの実態とその脆弱性」

京都大学 古阪 秀三 君

○講演概要

日本の建築物の品質は他の製品と同様に高い評価を受けてきた.しかし,近年,品質に関係するトラブルが数多く散見されるようになった.この問題を建築生産システムにおける品質確保の視点から捉え,日本の建設業における品質確保のための仕組みは4つのレベルで構成されていると考える.第1は建築基準法・建築士法といった“法規範”,第2は団体標準・社内標準等の各種標準,いわば“準規範”,第3は契約書・設計図書・施工計画書といったような“プロジェクトごとの計画”,そして第4は最終的に建築物を作る“技術者/技能者の技術/技能”である.これらそれぞれが実効性を持ち,互いに補完しあって品質確保の仕組みは機能してきた.さらにそれらと相まって,TQCや元請下請関係などの日本独自の方法によって高い品質を確保してきた.しかし,分離発注やCM方式といった発注方式の多様化,プロジェクトの大規模化・複雑化,PCといった技術の高度化・多様化が進展する中で,建築物の事故・欠陥・瑕疵が表出するようになってきている.この実態について議論する.

○講師略歴.

1974年京都大学工学部建築学科卒,74年清水建設株式会社入社,76年京都大学工学部助手,87年同工学部助教授,現在に至る.90年日本建築学会奨励賞(論文),99年日本建築学会賞(論文)受賞.01年日本コンストラクション・マネジメント協会設立とともに会長に就任(〜2005.6).現在建設産業専門団体連合会理事.著書に「進化する建築保全」(共著,学芸出版社, 2002),「発注方式の多様化とまちづくり」(日本建築学会編,2004),「建築企画としてのプロジェクトマネジメント」(マネジメント時代の建築企画,分担執筆,日本建築学会編,2004)など.


協賛

応用物理学会,化学工学会,情報処理学会,照明学会, 精密工学会,映像情報メディア学会,電気学会,電子情報通信学会, 日本エム・イー学会,日本機械学会,日本航空宇宙学会, 日本電気計測器工業会,電子情報技術産業協会,日本人間工学会,自動車技術会 (以上関西支部), 日本建築学会,日本化学会 (以上 近畿支部), ヒューマンインタフェース学会, 関西造船協会,高分子学会,システム制御情報学会,日本神経回路学会, 人工知能学会,センシング技術応用研究会, 日本オペレーションズ・リサーチ学会,日本原子力学会, 日本ロボット工業会,日本神経科学学会,日本心理学会,日本分子生物学会, 日本生物物理学会,日本電気制御機器工業会,日本認知科学会, 日本ヒューマン・ロボティクス研究会,日本知能情報ファジィ学会,日本物理学会, 日本リモートセンシング学会,日本ロボット学会,バイオメカニズム学会, レーザー学会,日本放射光学会,日本結晶学会,日本鉄鋼協会, 日本医用画像工学会,可視化情報学会,応用物理学会分科会日本光学会,日本金属学会,創成科学フォーラム,日本信頼性学会,安全研究会,他(依頼中)