顔情報計測技術とその応用/奈良先端科学技術大学院大学 松本吉央君

人の顔は注意,意図,感情などの心理状態を反映して,視線の動き,表情,ジェスチャなど様々な,表現力に富んだ情報を表出している.我々は,これらの情報のうち,3次元的な視線方向,頭部の位置・姿勢に加え,瞬き,眉や唇の動きなどの情報を,定量的,非接触,リアルタイムに計測できるシステムの開発を行ってきた.本講演では,これまでに開発した顔情報計測システムの概要と,その応用として構築してきたヒューマンモデリングやヒューマンインタフェースのシステムについて解説する.


人間行動分析技術におけるデータマイニングの応用事例/(株)東芝 豊嶋伊知郎君

近年のセンサー及びネットワーク技術の発展から,実空間における人間行動のデータを取得・蓄積可能な環境が整いつつある.東芝研究開発センターでは,人間行動分析技術とそのアプリケーションに関して研究を行っているが,核となる技術はそれらのデータを解析するデータマイニング技術である.本講演では下記の3つの事例について,固有の問題設定を紹介し,解決に用いたデータマイニング手法について述べる.また各々の問題から抽出された,人間行動分析に共通する課題について議論する予定である.

  1. SEM・決定木による店舗内顧客行動分析
  2. 決定木・相関抽出による工場作業分析
  3. SVMによる逸脱行動検出システムの試作

生体運動特性のシステム・インテグレーション/広島大学 辻 敏夫君

人間―機械システムの設計には,「ユーザである人間にとって使いやすいか」という人間中心の視点が求められる.人間にとって使いやすく,意のままに操作可能なシステムが実現できれば,自動車などの移動機器はもちろん,福祉機器や医療機器の研究開発にも役立つと考えられる.そのためには,まず人間の感覚・運動特性を工学的に理解し,その特性をシステムにインテグレートすることが重要である.これにより,人間の特性に合った機械システムを実現することが可能となる.本講演では,特に筋骨格系の機械インピーダンス特性に着目し,人間の感覚・運動特性の計測とモデル化の方法について述べるとともに,その結果を福祉機器,移動機器などの開発に応用した例について紹介したい.


自動車運転におけるヒューマンファクタの研究/香川大学 和田隆広君

道路交通はドライバ,自動車,交通環境が一体となった社会システムであり,自動車運転はドライバが認知・判断・操作をリアルタイムに適切に処理することによって実現されている.このシーケンスの途中で何らかのエラー(ヒューマンエラー)が生じると,事故につながる可能性が高くなる.事故を未然に防ぐために警報,運転支援などの技術が導入されつつあるが,これらの最適な設計や運用にあたってはドライバの運転特性を把握することが必要不可欠である.本講演では各種支援策の基礎構築を目指した,ドライバの運転行動の理解に関する研究について講演者の研究を中心に紹介する.


モード分割とその遷移に基づく運転行動解析/名古屋大学 鈴木達也君

本講演では,観測された運転行動データに対して,動的特性に基づいたモード分割を行い,またモード間の遷移条件を数理的に表現することで,操作と判断の混在した運転行動モデルを得る手法を紹介する.このアプローチは,システム工学的視点から見れば,人間行動をハイブリッドシステムのあるクラスとして表現することを意味しており,これまで個別に扱われることが多かった人間行動における「操作系」と「判断系」を共通の観測データから統一的に抽出・モデル化することが可能となる.具体的には,前方車追従,前方車回避,右折等の様々な運転シチュエーションにおける解析結果を紹介する.また,ハイブリッドシステムモデルに基づいた人間行動支援器の設計方針についても述べる予定である.