福祉工学部会見聞録

 

2004年5月10日(月) 14−17:15、第3回福祉工学部会運営委員会にて

場所 初台リハビリテーション病院(以下、初台リハ病院と略記)

URL http://www.hatsudai-reha.or.jp/

 

 平成124月の診療報酬改定により、特定入院料に「回復期リハビリテーション病棟入院料」が設けられました。この新たな制度の基本になった回復期リハビリ病棟を初めて作ったのが、この病院の石川誠院長です。現在200を越える回復期リハ病院がありますが、初台リハ病院のようには、まだまだ体制が整っていないところが多いと聞いています。

 

 初台リハ病院を訪れ、お話しを伺いました(理学療法士の吉川和徳委員のご紹介で、吉川委員からも補足説明受けました)ので、その一端をご紹介します。

 

 よくリハビリという言葉を聞きますが、リハビリとは、その人の在宅地域で再び生活できるようにすることを意味します。病院での手足などの機能訓練は、その一部分です。リハビリは機能訓練、補助機器の利用、その人の環境の観点から総合的に考える必要があります。

 例えば、病院で10m歩けるようになっても、家の中で歩行困難だったり、横断歩道を時間内に渡れなかったりすると、地域で生活するとき困ります。したがって退院することが、リハビリが終わったということになるとは限りません。

 

 初台リハ病院では、複数の職種(医師、看護師、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーなど)の人が、その当人が生活することを想定し関わります。そのため、初台リハ病院ではナースステーションはなく、看護師、理学療法士、作業療法士などがいっしょにいる場所を作り、スタッフルームと呼びます。またナースコールでなくスタッフコールと呼び、鳴ると看護師に限らず近くのスタッフが対応します。

 リハビリに係わる職員の方々の服装は、腕のワッペンの色違いで職種が異なる以外はチノパンとボタンダウンシャツで、色は自由です。看護師、理学療法士、作業療法士、医師など、みんな一緒で、白衣を着ている職員はおりません。廊下に音楽が流れていて、明るく、病院というよりホテルのような感じです。

 理学療法士・作業療法士は訓練室だけでなく、病室にも出向きます。モーニングケア、イブニングケアといって、まさに朝おきたあと、就寝前の訓練も行っています。おトイレに行きたいとき、洗顔するとき、入浴するとき、そのときそのときいっしょにそのための訓練ができるからです。

 初台リハ病院のリハビリ訓練は、365日お休みの日がないのも特徴です。(他の病院は年始年末、土日休みが多い)

 

 

見学箇所

・エスカレータホール、エスカレータへの乗降訓練もできる

・言語療法自習室、ドアが「引き込み戸」になっていて、車いすの人でも開けや すい。

・スタッフルーム ノートPCが並びネットカフェのようでした。

・理学療法室、ひろびろと縦長で、端は前面窓で明るく、たくさんの方々がリハビリしており、体力増強トレーニングマシンもある。

・作業療法室、押入れのある畳の部屋や、キッチン、食卓テーブルとイスなど生活の一部が再現できる。

・病棟のスタッフルーム(壁がない!)、誰がいるか見渡せます。

・病棟の食事する場所、3方向の廊下の交点にあり、部屋を仕切る壁はない。食卓のテーブルの高さがいろいろあり、様々な人に対応している。

 

参考文献 

・夢にかけた男たちある地域リハの軌跡 三輪書店 河本のぞみ・石川誠

・訪問リハビリ入門―脱寝たきり宣言! 日本看護協会出版会 伊藤隆夫・吉良健司

 

感想

 見学中に、例えば理学療法室を歩いているときに、職員の方々とすれ違うとき、職員の方々から、「こんにちは」と、われわれに声をかけてくださり、とてもさわやかな温かみのある感じで、普通の病院のイメージと違いました。リハビリしている会場は(明るく広いところに様々な色のカラフルなシャツを着た職員がおり、病院の雰囲気とかなり異なる)、ディズニーランドのように感じた者もおりました。様々な職種の人が一丸となって連携している好印象を強く受けました。

 地域も戻られた方々のケアとのつながりに関しても、努力を続けておられるようで、リハビリの教育と普及、社会システムの向上を期待すると同時に、病院スタッフの方々に敬意を表したいと思います。ご多忙の中、ご説明下さった伊藤隆夫リハケア部長に感謝いたします。

                                            (文責 小野栄一)