SICE 社団法人 計測自動制御学会
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 会告 : 横断型研究開発を推進するための基盤整備の重要性
 

最近の技術開発の新しい顕著なトレンドのひとつは垂直型の研究から横断型の研究への軸足の移動である。その背景には次のようなことが上げられる。

  • 個別技術がある程度成熟した場合、要素技術の深耕より要素技術の組合せやそれらの間の融合調和、さらに利用技術などに付加価値の重心が移る。現在幾つかの先端的分野を除く多くの分野でそのような傾向が見られる。ハードウェアとソフトウェアの付加価値がいたるところで逆転しているのはそのひとつのあらわれである。
  • 通信手段の発達によってシステムの統合が進み、その結果部分的な最適化よりも数多くの異種類の要素を含むシステム全体の最適化が志向されるようになった。
  • 人々が生活のレベルでさまざまの先端技術と接することが多くなり、その結果人間と技術の接点に価値の基準をおく総合的な視点が必要になった。

このような技術の流れの著しい変化にもかかわらず、伝統的な価値観を引きずった技術開発の現場では、個別技術・要素技術を深めることによって製品の性能を向上させ生産コストを下げることに依然として主要な力点が置かれている。企業における研究開発の主流はユーザのニーズを受動的に受け止めたハードウェアとしての製品の改良にあり、大学における工学は依然として土木工学、機械工学、電気工学など19世紀以来の縦割りの文化が支配している。

個別技術を深めることはもちろん重要であるが、これと並んで、多様な個別技術を横断的に支える横断型の科学技術を発展させ、それにもとづいて多くの個別技術の特徴を生かしつつそれらを融合して新しいシステムと新しい価値を創造する横断型の研究開発がこれまで以上に重要になっている。従って横断型思考にもとづき横断型の研究開発を推進することが現在の緊急課題である。たとえば環境問題は横断型のアプローチのみが解決に通じる人類規模の問題であり、アメリカにおける新しいビジネスモデルの提案は横断型思考が生み出した成果である。わが国では従来から横断型の研究開発が重要であることは指摘されており、横断型研究開発を目指す学会も多く生まれている。産業界にもそのような思考を生かそうとする新しい芽も見られるが、横断型研究開発を推進する社会的基盤は弱く、新しい芽は必ずしも順調に育ってはいない。科学技術立国を目指す科学技術政策において、横断型融合という現代技術のメガトレンドを反映したものは打ち出されていない。技術の新しい方向を先取りする横断型研究開発の基盤を早急に整備強化し、それにより新しい世紀で研究開発におけるわが国のリーダシップを確立することが望まれる。

横断型研究のシーズはすでに数多く存在している。モデル科学、設計学、システム科学などはその例である。わが国ではさまざまの学会や大学で横断型の教育や研究が個別に担われているが、それらを有効に技術開発の現場に根付かせその継続的な発展を図るためには、国による体系的持続的な政策の実施とそれを支える財政的な裏づけ、さらにその基礎を深めシーズを開発する中核的な研究組織が必要である。横断型研究開発の社会的基盤を整備することにより、先端分野における技術と社会の調和、成熟分野における技術のいっそうの高度化が実現し、新しい知の創造と知による活力の創出に貢献できる。さらに、これまでわが国に欠けていた社会を総体として合理的に設計するための方法論がもたらされることにより、知による豊かな社会の創生が現実のものとなる。

横断型研究開発の社会的基盤を育てるために、次の3つの事項を提案する。

  1. 現在の科学技術政策の立案および実施、評価に横断型科学技術の専門家を参画させる。
  2. 大学等への研究費配分の機構を垂直型と横断型の2次元構造とする。
  3. 横断型科学技術の戦略的な推進とそのアカデミックな研究を行う「新システム総合研究センター」(仮称)を設置する。


2001年12月26日

計測自動制御学会会長
システム制御情報学会会長
精密工学会会長
日本ロボット学会会長
日本ファジィ学会会長
ヒューマンインタフェース学会会長
日本バーチャルリアリティ学会会長
人工知能学会会長
スケジューリング学会会長
日本植物工場学会理事長
日本オペレーションズ・リサーチ学会会長
日本リモートセンシング学会会長      
小野敏郎
英保 茂
吉田 庄一郎
江尻 正員
廣田 薫
井上 紘一
原島 博
白井 良明
木瀬 洋
高辻 正基
長谷川 利治
津 宏治
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