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 論文集抄録

論文集抄録

〈Vol.35 No.9 (1999年9月)〉

論 文 集 (定 価)(本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員)6,300円 (税込み)

  〃   (会員外)8,820円 (税込み)


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[論  文]


[論  文]

■ 静的な息みを利用した人体積測定

熊本大・鳥越一平

 音響式の容積測定法と静的な息み動作を組み合わせて,人の実質体積を測定する方法を提案する.本法は,被験者が中に入る測定槽と容積既知の基準槽の2槽からなる装置を用いる.実質体積と肺容積を加えた人の見かけの体積は,著者らが先に提案した音響式容積測定法によって―すなわち,2槽に差動的な容積変動を加え,そのとき発生する圧力変動振幅の比から測定槽の余積を測定することで求める.一方,肺容積は,被験者に静的な息み動作を行わせ,このときの肺気道内圧力変化と肺容積変化とを測定し,ボイルの法則に基づいて計算する.本法では静的な息み動作を用いるので,肺気道内の気体の状態変化は等温的となる.このため,肺内の状態変化に疑義なくボイルの法則を適用することが可能となり,従来の体プレチスモグラフ法における疑問点が解決される.以上の方法の有効性を確かめるため,模型を用いた実験を行った.その結果,提案法によって,人体積測定装置を実現できる見通しが得られた.


■ 回転座標変換型LPFによる新しい三相スペクトル解析法の提案

茨城大・中野博民,内藤雅将,青野芳範,近藤 良

 これまで,三相電源のスペクトル解析は,三相のうちの代表相について単相のスペクトル解析を行い評価してきた.しかしながら,この従来の方法では三相電源を厳密に評価することは困難である.なぜなら,三相電源には,正相,逆相の周波数成分が存在するのに対して,単相には正相,逆相の概念が存在しないためである.結果,三相電源に従来の単相のスペクトル解析法を適用した場合,三相電源における正相,逆相の周波数成分を区別なく同一視してしまい,厳密な周波数解析を行うことができなくなる.

 そこで本論文では,上記問題を克服するため,三相一括とした新しい三相スペクトル解析法を提案する.この提案するスペクトル解析法は,三相電源における正相,逆相の概念を取り入れ,正相の周波数成分を正の周波数領域に,逆相の周波数成分を負の周波数領域に区別して把握することができる三相一括の新しい解析法である.そして,この提案解析法を用いることにより,三相電源のスペクトル解析を厳密かつ容易に行うことができる.

 本論文では,提案する三相スペクトル解析システムについて,先に筆者らの考案した拡張ボード線図による解析手法を適用し,提案解析法の妥当性を確認するとともに,シミュレーションによりその有用性を示す.


■ PVDFのバイモルフ構造を用いた表面形状測定用タッピングスタイラス

東工大・初澤 毅,ソニー・綾部和明,東工大・高橋 健,早瀬仁則

 電子デバイスやマイクロマシンなどの精密表面形状計測では,高分解能,大きな測定レンジ,非破壊的な測定手法が求められている.このような条件を満たす手法として,探針を振動させながら測定するタッピングスタイラス手法について研究を進めている.本論文ではこれまでに実現されている時計用音叉型水晶振動子に代わり,PVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムのバイモルフ構造を用いた新たなタッピングスタイラスを提案している.バイモルフを両持ち梁に加工し,中央にタングステン探針を付け,スタイラスの加振と接触状態のセンシングを簡単な構造により実現している.ピエゾアクチュエータを用いた走査型プローブ顕微鏡と同様の測定系を組むことにより,表面形状計測系を構成し,サブ μmオーダの高さをもつ回折格子の測定を行っている.測定性能として,繰返し測定精度は標準偏差で0.016 μm,総合測定精度0.1 μmが得られ,測定速度は従来の7倍に改善された.


■ 音響センサを用いたボイラ内温度分布計測

山口大・田中正吾,廣澤 聡,佐伯正裕

 ボイラ内の温度分布が計測できれば,ボイラ内部を的確に把握できるようになり,結局は,ボイラの稼働率の向上に役立つ.本論文は,ボイラ側壁に設置した複数の音響センサ間の音の伝播時間を計測することにより,ボイラ内温度分布を計測することを考えたものである.しかしながら,これまでのCT手法では,測定領域を小さなセルに分割し,このセル内の温度は一定であるとする温度分布計測法が採られてきた.そのため,高精度な計測は望めなかった.

 そこで本論文では,複数のガウス形関数を一次結合したものにバイアス成分を加えることにより,わずかな未知パラメータで温度分布を滑らかに,かつ高精度に計測することを考えた.さらに,温度分布が高精度に計測できる最適センサ配置についても考察した.


■ 双線形システムに対する非線形H∞状態フィードバック制御則の一設計法

東京商船大・清水悦郎,NTTコミュニケーションズ・久保田健太,東工大・三平満司,古賀雅伸

 本論文では,双線形システムに対して,非線形H∞状態フィードバックをもちいた非線形制御則を設計することを考える.双線形システムは原点において不可制御となるため,システムのL2ゲインは原点での値よりも小さくすることができない.一方,状態が大きくなることによって双線形システムは可制御となるので,原点より離れたところではシステムのL2ゲインを小さくすることができる.そこで原点より離れたところでのL2ゲインを積極的に小さくさせるために,評価出力に非線形な重みを導入し,非線形な一般化プラントを構成し,H∞制御問題を解くことによって非線形状態フィードバック制御則を設計することを考える.本論文では非線形重みがある制約を満たすものに限定することによって,代数リカッチ不等式を解くことによって非線形状態フィードバック制御則が設計できることを示す.さらに与えられた制約条件を満たし,かつ望ましい制御特性が得られるような非線形重みを示す.


■ 入力状態安定性に基づいた非線形系のYoulaパラメトリゼーション

京大・藤本健治,杉江俊治

 kernel 表現とは線形制御理論での左既約分解を非線形系に拡張したものであり,著者らはすでに状態観測器の性質である可検出性をkernel 表現にもたせることで,状態空間でのすべての安定化補償器のパラメトリゼーションが得られることを示している.しかしこの結果ではシステムが入出力写像として定義されており,その安定性である入出力安定性は,状態空間では大域的な安定性に相当する.このため,従来結果では状態観測器として大域的に状態を推定できるものが必要であった.

 そこで本論文ではシステムの安定性に入力状態安定性を採用し,この安定性に基づいたkernel 表現とその性質について議論する.またこの安定性のもとで,局所的にも大域的にも同様に成立するすべての安定化補償器パラメトリゼーションを与える.さらに,制御対象と補償器の同時パラメトリゼーションについても議論し,局所的にはすべてのパラメトリゼーションが得られることを示す.


■ Stability of State Delay Systems Based on Finite Characterization of a Lyapunov Functional

Pusan National Univ.・Young Soo SUH,Univ. of Tokyo・Seiichi SHIN

 First finite characterization of a Lyapunov functional equation for state delay systems is proposed. The finite characterization can be computed using a matrix exponential function, while conventional computation has been relied on numerical approximations. Secondly based on the finite characterization, a stability condition for state delay systems with unknown but bounded constant delay is proposed.


■ 非正規目的関数のもとでの並列機械スケジューリング問題―重みつき納期ずれ和の最小化―

神戸大・玉置 久,京大・杉本竜彦,荒木光彦

 正規的でない目的関数をもつスケジューリング問題に関しては,全仕事で納期が共通である場合や機械数を1に限定した場合に関する研究が中心であるが,実際のスケジューリング現場への応用を考慮すると,このような問題のみを扱っているのでは不十分である.そこで,仕事ごとに異なる納期が設定されている場合に,仕事の早完了と遅完了のそれぞれに対して与えられるペナルティ係数を重みとした重みつき納期ずれ(絶対値)の和を最小化する等価並列機械型のスケジューリング問題を取り上げ,まず数理計画型の問題としての定式化を通して問題を明確に記述する.つぎに,仕事の機械への割付け決定,機械上での仕事の順序決定および仕事の開始時刻決定といった3つの部分問題への分解に基づく解法の基本的考え方を示した上で,順序決定問題と開始時刻決定問題に対するヒューリスティック解法を新たに提案する.さらに,提案手法の最適性に関して2つの定理を導出するとともに,全体問題に対する計算実験結果を通して提案する枠組みの有効性を確認する.


■ 同期加減算処理に基づくリアルタイム音高判別システム

豊田高専・齋藤 努,小林 滋,豊橋技科大・小沢美織,松江高専・和田守美穂,豊橋技科大・田所嘉昭

 楽器音の採譜では,その隣り合う音高の周波数比が21/12であることや,倍音が多く含まれていることなどが,採譜の処理を複雑にしている.本論文では,各音高の周波数に同期して加減算するだけの非常に簡単な処理により音高の検出を検討する.サンプリング周波数に同期する信号に対しては,その加減算の累積値が単調増加する特性を利用したものである.はじめに,同期加減算(Synchronous addition and subtruction: SAS)処理による周波数検出原理を示す.ここでは基本アルゴリズムと,その特性を改善した改良アルゴリズムを説明する.ついで,この改良アルゴリズムを用いて, SAS法による音高推定について検討した後,実際の音高検出システムの構成を示す.そしてこのシステムを用いて,実音のリアルタイム音高検出を行った結果を示し,システムの有効性を明らかにする.


■ Estimator型可変階層構造学習オートマトンによるノイズを含む観測値を用いた大域的最小点探索

徳島大・最上義夫,大阪教育大・馬場則夫,三菱電機・松下正樹

 多峰性未知関数のより一般的な最適化問題を考えるとき,関数の値が正確には得られない場合,すなわち,関数の値を観測するとき何らかの観測ノイズが含まれる場合も考慮することが必要であろうと考えられる.この問題は,観測ノイズが存在する場合の多峰性未知関数の最適化問題となるわけであるが,この場合,従来の最小点探索手法を用いることは基本的に不可能である.

 そこで,本論文においては,不確実な情報のもとでも学習に基づいて徐々に最適解を見出してゆくという特性をもつ可変階層構造学習オートマトンに着目し,これを用いることによって観測ノイズが存在する場合に多峰性未知関数の大域的最小点を見い出すような探索アルゴリズムを構築する.このとき,可変階層構造学習オートマトンの学習アルゴリズムとしてEstimator型学習アルゴリズムを用いることにする.この学習アルゴリズムは,従来用いられていたLR-I型学習アルゴリズムよりも少ない探索回数で大域的最小点を見出すことが可能な学習アルゴリズムである.そして,2次元多峰性未知関数の大域的最小点の探索に本探索アルゴリズムを適用した数値シミュレーションによって,本探索アルゴリズムがノイズを含む観測値しか得られないような場合に,LR-I型学習アルゴリズムを用いた従来の探索アルゴリズムよりも少ない探索回数で大域的最小点を見出すことを示す.


■ 遺伝的共生アルゴリズム

九大・平澤宏太郎,石川靖剛,胡 敬炉,村田純一

 D.E. Goldberg とJ. Richardsonが1987年に提案した,シェアリングを用いた遺伝的アルゴリズムという手法は,個体が最適解周辺に集中することを抑制し,個体群の多様性の維持を可能としている.しかし,この手法にはまだ改良すべき点が残されている.

 本論文では,この従来の手法の問題点を解決するため,新しい遺伝的共生アルゴリズム(GSA)を提案する.GSAは現実の生態系で繰り広げられている共生関係をその理論の基盤としている.シミュレーション結果では,このGSAがさまざまな特徴をもった多様性豊かな個体群を生成できることを示している.


■ 航行管制のための最適平面内誘導―複数の移動機の経路計画―

立命館大・杉山正治,秋下貞夫

 本報では未来の航空管制の自動化への1ステップとして,コンピュータを活用し,3次元(空間2次元と時間1次元)の最適経路の計画を取り上げる.本研究のねらいは,人力に頼っている現状の管制業務をコンピュータによりその一部を代替または支援し,より安全で効率よい迅速な空港周辺の交通の流れを生成することである.

 本報では航空機の初期位置,初期方向角が与えられたときに着陸直前に配置されたouter marker と呼ばれる地点までの軌道を生成する.本報では一定速度で平面内を移動する場合の時間最適飛行経路を構築する.このような経路は最大バンク角制限の下,直進と左旋回または右旋回を組み合わせた12通りの経路型の中から最短時間になる軌道を選択することによって行う.

 シミュレーションとして,同時に8機の初期位置,初期方向角が与えられたときに,全機がニアミスを起こさずに全機の到着時間の合計が最短となる経路を計画する.また,平行滑走路が2本ある場合についての経路が,同一のアルゴリズムで構築可能であることを示す.


■ 環境中の局所誘導情報に対する自律移動ロボットの繰り返し搬送の作業効率評価

理研・倉林大輔,東大・小西克己,理研・淺間 一

 本論文では,自律移動ロボット群を,局所的な誘導情報管理に基づき繰り返し搬送作業に適用した場合の,作業効率を解析的に評価する手法を構築する.柔軟な搬送作業の実現は,移動ロボットの最も基本的な目的であるため,局所的な誘導情報を利用して作業効率を向上させる手法が多数提案されてきたが,その定量的評価はほとんどなされていなかった.本論文では,自律ロボットが,環境中での進路分岐において,その内部の情報ではなく,環境自体に蓄積された,局所的な誘導情報を得て動作すると仮定する.これについて,ロボットの動作環境と,環境から与えられる局所誘導情報に基づく挙動を,単純マルコフ過程を用いてモデル化する.状態遷移行列の級数より,目的地到達の平均ステップ時間として,ロボットの作業効率を定量的に評価することを可能とした.また,実環境中で局所的な通信および情報管理を可能とするデバイス,知的データキャリア(IDC)を実現した.シミュレーションおよびIDCを用いた実験により,提案手法が実ロボットシステムにおいて有効であることを明らかにした.


[ショート・ペーパー]

■ メインループ定理とマルチプライアに基づく離散時間系の μ解析

阪府大・陳  幹,京大・杉江俊治,阪府大・藤中 透,柴田 浩

 構造化特異値μは構造的な不確かさをもつシステムに対する安定解析や補償器設計などに有効であることが知られているが,その真の値を計算することは困難であり,一般にはその上界が代用されてきた.この上界は定数行列と不確かさに対しての計算方法であり,動的システムに対する上界を求めるためには,周波数各点において上界を計算する必要があった.しかし,μの値が周波数に対して不連続に変化したり,鋭いピークをもつケースが報告されており,周波数各点での上界は動的システムに対する上界を常に保証するわけではない.この問題点に対して周波数各点での計算を必要としない,状態空間でのμの上界が提案されているが,その多くは連続時間系を対象としている.本論文では離散時間系の動的システムと不確かさからなる閉ループに対して,マルチプライアとメインループ定理を用いることで周波数各点での計算を必要としない厳密なμの上界を示す.


■ 離散時間系のSPR条件とASPR条件について

阪府大・李 徳宇,柴田 浩,藤中 透

 システムのSPR(Strictly Positive Real: 強正実)性は適応制御や非線形制御などの安定性に関して重要な条件である.離散時間系F(z)(=C(zI−A)-1B+D)においては,SPR性に対して2つの定義が与えられている.両者の等価性はF(z)+FTz-1がz平面においてほとんどいたるところでフルランクであるという仮定のもとで,連続時間系の結果に双一次変換を施して証明されている.本稿では,Bがフルランクという具体的な条件のもとで両者が等価であることを証明する.

 システムのASPR(Almost Strictly Positive Real)性は簡易型適応制御の安定性を保証する重要な条件である.離散時間系においては,ASPR性に関する必要十分条件は証明されていない.本稿では,Bが列フルランクという条件に注意し,それを証明する.

 
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