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 論文集抄録

論文集抄録

〈Vol.37 No.9 (2001年9月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文] [ショート・ペーパー]
■ スポット光の入射位置と入射角度の1次元同時検出センサの提案

岡山大・大谷幸三,馬場 充,中国能開大・小西忠孝

 スポット光位置の検出は,レーザレンジファインダやモーションキャプチャなどの各種計測システムにおいて,空間位置情報を取得する手段として重要である.このような,スポット光位置検出に用いられる光学的位置検出センサには,代表的なものとして,PSD(Position Sensitive Detector)やCCD(Charge Coupled Device)がある.これらのセンサは,位置検出という観点からみればそれぞれ優れた点を有しているものの,一般的には,スポット光の入射角度の検出が原理的に困難であるとされている.もし,スポット光の入射位置に加えて入射角度が検出できれば,幾何学的に制約が少ない3次元形状測定や鏡面物体の傾き測定など,その応用上大きな効用が期待される.そこで本研究では,スポット光位置と同時にスポット光入射角度をも測定可能な,アレイ型光学的位置検出センサを提案し,従来の枠組みを越えた新たなスポット光を用いた計測系の展開を図った.

 提案した光学的位置検出素子は,多数のフォトダイオードから構成されているアレイ型構造であり,その位置・角度検出原理は以下の通りである.まず位置検出では,光センサアレイの中から最大出力センサ素子を探索し,その最大出力センサ素子の値と両隣のセンサ素子の値を用いて,2次曲線近似し位置を求める.また入射角度検出では,位置検出用の光センサアレイの前方にもう1つ別の光センサアレイを設置して,両者のピーク位置の差から入射角度を求める.本研究では,これらの処理をアナログハードウェアで実現し,高分解能特性と高速性の両立を図った.

 実際に試作したプロトタイプシステムによる特性測定実験では,レンズ系を介さずに行った結果,入射角度0°〜40°に対して位置検出誤差1.89%,pm20°の入射角度を最大誤差0.48°で検出可能であった.また,実際の測定系への実現可能性を検討するために行った,レンズ系を介した実験でも,位置測定誤差は1.85%と,先の実験とほぼ同程度の結果を示した.さらに,2次元位置測定は,精度的には検討の余地があるものの,2つの入射位置とそれらの入射角度だけから2次元位置測定が可能であることを明らかにし,提案手法の有用性を十分に示した.


■ 4点検出信号の短時間パワスペクトル解析による近方場移動不規則音源の3次元位置と速度の同時推定

筑波大・平田克己,佐々木公男

 移動音源の3次元位置と速度の同時推定は,自律移動ロボットの音環境認識系の開発において重要である.移動不規則音源の位置と速度の同時推定法としては,バイスペクトル解析を用いた直線配置3点検出による2次元速度推定の報告があるが,3次元空間での試みは報告されていない.

 一般に移動音源からの放射信号を空間的固定点で検出すると,ドップラ効果によって検出信号は時間軸伸縮を受け,非定常信号となる.

 そこで本論文では,4検出信号の短時間自己および相互パワスペクトルから,相対的なドップラ係数比,振幅比,直線位相の傾きの情報を抽出し,最小2乗法により単一移動不規則音源の3次元位置と速度を,音源放射スペクトルに依らず,逐次同時推定する方法を提案した.

 前提条件の明確化,提案手法の原理の定式化の後,提案手法の有効性と特長を,推定誤差の観点から基礎実験により明確化している.


■ State Variable Measurement for Transmission Time Delay System Using a Kalman Filter with Dual Models

Otsuma Women's Univ.・Naoyuki TAMARU,Joji YAMAGUCHI and Kazumasa KANEKO

 伝送遅れを有する系においてリアルタイムの状態信号を獲得することを目的として,その数学モデルと推定誤差の修正回路からなる状態量推定回路を作成した.系の安定性を向上させるために新規な2重モデル系のカルマンフィルタを提案した.ここでは,実験と計算機シミュレーションにより,推定精度を従来方法と比較検討した.その結果,実験と同様に遅延時間が増大した場合においてさえも推定誤差が増大しにくく,かつ安定な推定系を実現できた.さらに,計算機シミュレーションでも同様の結果を得た.


■ 無拘束エアマットレス型生体センサによる睡眠段階の推定―心拍数変動と睡眠段階―

法政大・渡邊崇士,渡辺嘉二郎

 ヒトの健康は,日々の睡眠に依存されている.したがって,日々の睡眠状態を誰しもが知りたい.従来ポリグラフィを使ったRechtschaffen & Kalesの方法が一般的である.しかし,この方法では装置が高価であり,被験者にとって肉体的,精神的苦痛を与え,とても日々計測できる方法ではない.そこで,簡便でかつヒトに優しい方法で睡眠の質をモニタする方法を開発することが望まれている.

 筆者らはエアマットレス型センサを使うことで無拘束に,ヒトに優しく生体情報を計測するシステムを考案してきた.そこで,もしエアマットレス型センサより得られた生体情報とポリグラフィを使って判定した睡眠段階との間に定量的な関係をみいだせれば,簡便に睡眠の質を推定できることになる.

 本研究では,心拍数の変動と睡眠段階の推移を低周波帯域,中周波帯域,高周波帯域に分解して両者の分析を行った.その結果からつぎのようなことがわかった.

 低周波帯域:睡眠段階の変化率と心拍数の変化率の間には強い相関があった.

 中周波帯域:睡眠段階のノンレム―レム振動と心拍数のウルトラディアンリズムの間には強い相関があった.

 高周波帯域:ノンレム睡眠は心拍数の変動から推定できる.

 この結果よりエアマットレス型センサから得られた心拍数変動のみから推定できる簡単な数学モデルを構築した.


■ 二次元加速度計測信号の複素スペクトル解析とその応用 加速度ベクトルの時間変化に関する定量的比較評価法

筑波大・山本広樹,青島伸治

 計測平面をガウス平面と見なすことにより2自由度の加速度計測信号を複素信号として扱うことができる.これを利用してフーリエ変換による複素スペクトルを基にした加速度計測信号の解析方法を提案した.この方法は,複素スペクトルの正負の周波数におけるスペクトル値を組みとして考えて求めた評価関数を用いるものであり,自動車の衝撃加速度データに関する解析例からその有効性か示された.本方法による評価指標はベクトルの時間変化に関する特徴を定量的に評価できるため,複数データの特徴を比較する際に効果的である.また,二次元の時系列データであれば,加速度のかわりに変位などを用いてもよく,多様な応用が考えられる.


■ 双対連鎖散乱表現で記述されたモデル集合のグラフ位相に基づく解析

トウェンテ大・軸屋一郎,東大・木村英紀

 双対連鎖散乱表現で記述されたモデル集合のロバスト安定化可能性について考慮した.そして,LTIもしくはNLTVコントローラによりロバスト安定化が可能であるためには,モデル集合を記述する双対ホモグラフィック変換がグラフ位相の意味で連続であることを示した.


■ 状態推定フィードバック閉ループシステムにおける誤差スペクトル整形

広島大・雛元孝夫,マツダ・山本俊介

 ディジタルフィルタにおける誤差スペクトル整形の技法を応用して,状態推定フィードバックからなる閉ループシステムを対象に,ディジタル制御器における積和演算結果の丸めに起因して発生する閉ループシステムの出力雑音を,有効に低減する問題を取り上げている.まず,同一次元状態オブザーバとレギュレータからなる閉ループシステムを記述している.つぎに,このディジタル制御器に丸め誤差のフィードバックを施し,閉ループシステムの出力雑音を低減する誤差フィードバック係数行列の設計法を提案している.ここでは,誤差フィードバック係数行列が一般形の場合,対角形の場合,単位行列のスカラー倍の場合のそれぞれについて考察している.また,ディジタル制御器が入力平衡実現形で与えられる場合についても検討している.数値例では実現コストの削減のために,誤差フィードバック係数の最適値を整数または2のべき乗和のいずれかに丸めて使用し,各場合についてその有用性を確認している.


■ 状態および入力の制約を考慮した閉ループ系の目標値生成

京大・杉江俊治,山本浩之

 現実の制御対象には,入力飽和に代表されるような,制御入力や状態に関する制約が存在する.本論文は,これらの制約を満たす範囲で,制御系の出力が与えられた設定値に速やかに収束するような,目標値信号をオフラインで生成する手法を与えるものである.これに関する従来研究としては,目標値信号をオンラインで修正するレファレンスガバナに関するものがある.しかし,そこでは,(@)閉ループ系の状態量の情報を必要とする,(A)制約条件を満たす際の保守性が高いなどの問題がある.また,システムが制約条件の範囲内で稼働している場合,(B)本質的に従来法では応答特性を改善することはできない.本論文では,設定値をステップ関数に限定した上で,上記の従来法の問題点を解決する目標値生成法を提案している.具体的には,出力の目標値追従性能を考慮した評価関数を導入し,線形行列不等式を用いて定式化することにより効率的に修正目標値を得る手法を与えた.さらに,数値例により提案手法の効果がきわめて大きいことを確認している.


■ 分数次微分システムの最適レギュレータ設計

都立大・池田富士雄,川田誠一,渡辺 敦

 本論文では,分数次微積分(Fractional Caluclus)で記述されるシステムの最適レギュレータ問題を定式化し,最適フィードバック制御則を導出するアルゴリズムを証明し,提案する.通常ある関数f(t)に対するn階導関数Dnf(t)=dn/dtnf(t)は,nが正の整数として定義されるのに対して,分数次微積分は,nが分数として定義される.これまで粘弾性体などの動特性は,従来の整数次階の微積分を用いたモデルでは十分に表現できないことが指摘されている.それに対して整数次の中間微分である分数次微積分を用いることにより,より適切にモデル化されることが知られている.しかしながら,分数次微積分による制御系の応用に関する研究はまだ十分ではなく,これまで設計法の提案もあまり見当たらない.

 本手法は状態空間表現された制御対象に対し,状態量の初期値に関する2次評価関数の期待値を最小とする最適レギュレータ問題を考え,それをリアプノフ方程式,およびラグランジュの未定乗数法を用いて最適制御入力を求める.その結果,最適フィードバックゲイン行列が3つの連立行列代数方程式を満たす解として得られることを導いた.これらの方程式は繰り返し計算による収束法により解かれ,ゲイン行列が求められる.


■ 評価関数に基づく非線形サーボ制御器の設計とニューラルネットによる近似

慶應大・志水清孝,三島 直

 本論文では,評価関数に基づく非線形サーボ制御器を研究する.従来研究された非線形サーボ問題は偏差を安定かつ漸近的にゼロにすることが目的だった.本論文では,2乗誤差のような評価関数を考えそれが時々刻々減少するように制御器を設計することで,直接勾配降下制御を応用し収束速度の改善を行う.同時に,中心多様体の性質を利用することにより,この設計方法は局所的な漸近安定性も保証する.また,非線形サーボ制御器を設計するときに解かねばならない非線形出力レギュレーション方程式―1階の偏微分方程式であらわされる―を,3層ニューラルネットを用いて近似的に解く方法を提案する.設計された制御器に対してTORAモデルによるシミュレーションを行い有効性を確かめた.


■ ニューラルネットワークによる変動形態が未知な時変システムの同定

広島市大・小林康秀,沖田 豪,田中伸一

 本論文ではニューラルネットワーク(NN)を用いてシステムの時変パラメータを推定する方法をを提案している.周囲環境の変化などによってシステムのパラメータは時々刻々変化する場合を考える.このような未知変動は,あらかじめ仮定した特定の関数では十分表現できない場合も考えられる.そこで,適応,学習,汎化能力に優れた階層型3層NNを用いてパラメータの変動形態を表現している.

 パラメータの変動形態は,時刻に関する非線形関数と見なすことができるので,NNの入力には時刻をある区間で規格化した信号を用いている.学習に用いる誤差評価関数には,観測値を教師信号としてモデルの出力との2乗誤差規範を用い,一括型の学習を行う.この誤差評価関数は,最適化変数について強い非線形特性を呈するため,極小値に陥ることがある.そこで,過去に得られた推定値を利用してより簡単な評価を考え,まずそれを最適化して得られた最適値を本来の誤差評価関数の初期設定値に用いる方法を提案している.これにより,変動するパラメータを効率的に推定することができる.

 さらに本手法により,種々な未知変動するシステムの変動パラメータを良好に推定できることをシミュレーションにより確認している.


■ バックドライバビリティを利用したパラレルロボットの高速柔軟作業制御システム

東北大・金 斗亨,内山 勝

 本論文では,高速かつ高精度の6自由度パラレルロボットHEXAを用いて,高速柔軟な作業を行うための制御システムを提案する.制御法として,運動・力・コンプライアンス統合制御法を提案する.この制御法は,重力およびモータ摩擦を補償しながら,自由空間では位置制御,拘束空間ではコンプライアンス制御,また,拘束空間で力を加える際には力制御を適切に選択し,切り替えて制御する方法である.この方法では,ダイレクトドライブモータのバックドライバビリティ特性を活かし,接触力を直接測定せずに,力制御およびコンプライアンス制御を実現している.この実現のひとつの鍵は,フィードバックとフィードフォワードの摩擦補償である.以上の制御を統合し,複雑な作業を高速に実行するための制御システムを構築する.そして,このシステムで,ピン挿入作業,バリ取り作業,クランク回転作業などの作業実験を行い,その有効性と実用性を検証する.


■ BMPC法における解領域と解領域更新新アルゴリズム

東工大・鳥海不二夫,清華大・曹  麗,東工大・大山真司,小林 彬

 人間の感覚による曖昧量の計測,すなわち尺度付けにおいて比較的良い結果が得られる手法の1つに一対比較法がある.帯関数モデル型一対比較法(Band function model paired comparison method; 以下BMPC法と略記する)は比較判断モデルを改良し,直線性の仮定の替わりに単調増加関係を仮定している.すなわち,人が比較判断する際,与えるべき尺度値の差が大きい試料間の比較ほど判断はより明確になり大きな値の判断結果が得られるものと考え,さらに判断に飽和現象が現れる可能性も考慮してモデル化がなされている.また,人の判断には曖昧さがあり,ばらつきも生じるので,単調増加関係に適当な幅をもたせた帯状の関数で比較判断特性が表現されている.一方,尺度付けに対応する解を得る場合,比較判断モデルの関数型を規定していないため一対比較結果から解析的に解を直接得ることはできないので,単調増加関係を根拠として,与えるべき尺度値の差の間の大小関係から定まる不等式を利用し,多数個の大小関係から導かれる連立不等式を解くことにより解を求めている.連立不等式から解が求められることに伴い,解は一意でなく領域として定まり,この解領域はその端点を意味する複数の稜ベクトルを用いて記述されるが,ここにBMPC法の大きな特徴が現れる

 本論文では,解領域を記述する稜ベクトルの性質を分析し,データ構造として「登録係数ベクトル」を活用することを提案し,この方法により解領域更新時,隣接稜ベクトルの探索が容易になることを明らかにした.また,BMPC法において不等式を立てる際に冗長な不等式が数多くできることから,不等式を連立不等式に追加する順番について考察し,直接比較不等式および間接比較不等式を差分比較不等式に先行させる方式を提案し,効率的な解領域更新が行えることを実証した.2つの新手法の導入により計算速度,必要メモリー容量は大幅に改善され,このことにより,より多くの試料の尺度付けにも大きな効果をもたらすものと期待できる.


■ Genetic Symbiosis Algorithm for Multiobjective Optimization Problems

Kyushu Univ.・Jiangming MAO, Kotaro HIRASAWA,Jinglu HU and Junichi MURATA

  Evolutionary Algorithms are often well-suited for optimization problems. Since mid 1980's, the interest in multi-objective problems has been expanding rapidly. Various evolutionary algorithms for multiobjective problems have been developed which are capable of searching for multiple solutions concurrently in a single run. In this paper, we propose a new genetic symbiosis algorithm (GSA) for multiobjective optimization problems (MOP) based on the symbiotic concept found widely in ecosystems. In the proposed GSA for MOP, a set of symbiotic parameters are introduced to modify the fitness of individuals used for reproduction so as to obtain a variety of Pareto solutions corresponding to user's demands. The symbiotic parameters are trained by minimizing a user defined criterion function. Several numerical simulations are carried out to demonstrate the effectiveness of the proposed GSA.


■ イビキ発生時の心拍・呼吸の無拘束無侵襲計測

山口産技センタ・松本佳昭,山口大・土本健太郎,田中正吾

 高齢化社会を迎え,個人の健康に対する関心が日々高まっている.そのため,家庭,病院,養護老人ホーム等において長期間にわたり健康状態を簡易に計測できる無拘束無侵襲計測システムの開発が望まれている.

 このようなことから,先に筆者らは,加速度センサの一種である心音センサを用いた心拍および呼吸の無拘束無侵襲計測システムを提案しており,安静時には,心拍と呼吸の平均周期および瞬時周期がともに臥位や着衣によらず高精度に計測できることを示した.

 しかしながら,就寝時においては,安静状態のみでなく,寝返りや咳などの体動やイビキなどが外乱として発生することもある.この観点から本稿では,就寝中イビキをかいているときの平均心拍周期および瞬時呼吸周期の計測が可能になるシステムを提案する.

 具体的には,心音成分とイビキの影響による信号成分を適切なフィルタで分離することにより,イビキ発生時にも平均心拍周期および瞬時呼吸周期が高精度に計測できる方法を提案する.さらに,瞬時呼吸周期計測の前処理として,心音センサ出力の全波整流方式よりも局所的実効値トレンド方式の方が,センサ出力のエンベロープを強調できることも示す.

 
copyright © 2003 (社)計測自動制御学会