部会の目的

 超高齢社会を迎えたわが国にあっては,日常的健康管理と在宅医療を中心とした予防医学の充実が必要不可欠である.日常的健康管理と在宅医療は,無意識・無拘束な環境の下,日常生活の妨げとならないシステムを用いて実施されなければならず,そのためには,情報通信ネットワーク,インテリジェントセンサなどを利用した生体計測システムと,それらによって得られた情報を元に対象者の健康状態を推定するシステムの適用が不可避である.このようなシステムの実現には,偏在的な情報ネットワークシステム,いわゆるユビキタスコンピューティングシステムが最適であり,これを用いた健康管理のための枠組みをユビキタスヘルスケアと定義する.ネットワークシステム・センシングシステムには,小型化,低消費電力化,家電製品や什器への実装などの課題があり,データ処理や通信アルゴリズムのための共通規格などの策定なども新しい課題となっている.また,個人差が大きく,生活状態に左右される複雑なデータの中から,特徴量を発見・抽出し,健康状態を推定するようなアルゴリズムの開発も重要な課題である.さらに,ヒトの心理や,行動パターン,など従来の工学の枠組みでは捉えきれない分野のニーズも大きい.

 したがって,このように複雑なシステムとなるユビキタスヘルスケアシステムの実現に向け,計測,制御,通信,知識・知能工学,医学,心理学,など多岐にわたる知識を結集し,高い生活の質(QOL:Quality of Life)を提供できる環境づくりが最も重要である.以上の点から,本部会では,ユビキタスシステムの実現に向け,まとまった議論のできる場を提供し,新たな知見の獲得とその応用開拓に寄与することを目的とする.さらに,同様の社会環境にある,諸外国の研究者との共同研究を視野に入れ連携を密にすることに努める.

 

カバーする研究分野

 ユビキタスヘルスケア部会では,「24時間健康見守り」環境の実現を目指して,“計測”,“通信”,“情報処理”のユビキタスヘルスケアに必要な3つの領域において研究活動を推進する.

1) 無意識・無拘束計測

生体計測,行動モニタリング

ウェアラブル計測システム,インテリジェント家電

低消費電力化

 

2) 情報ネットワーク

RF-ID,PAN(Personal Area Network)

Wifi, UWB, 広域無線LAN

センサネットワークシステム

通信規格の標準化

 

3) 解析アルゴリズム

データマイニング,パターンマッチング,データのモダリティ変換