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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.35 No.6 (1999年6月)〉

論 文 集 (定 価)(本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員)6,300円 (税込み)

  〃   (会員外)8,820円 (税込み)


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[論  文]


[論  文]

■ Eye-Sensing Head Mounted Displayの開発

松下電工・福島省吾,京大・新井 豪,森川大輔,下田 宏,吉川榮和

 仮想現実感は,医療,建築や娯楽など多方面の応用が期待されているが,その一方で現実との不一致によりもたらされる生理的な悪影響についても指摘されている.たとえば映像提示装置として利用されているHead Mounted Display (HMD)を使用したとき,視覚機能および中枢機能への影響が懸念されている.本研究では, HMDの生理的影響を調べるために,瞳孔運動,眼球運動および瞬目活動などの眼機能に関連する生理指標の実時間取得が可能なHMDを試作開発し,Eye-Sensing HMD(ES-HMD)と命名した.本稿では最初に,開発したES-HMDの仕様と瞳孔画像の処理方法について述べ,開発したES-HMDの性能を明らかにした.つぎに,計測により得られる指標に関して,瞳孔の大きさと瞳孔中心位置について述べた.瞳孔の大きさに関しては,瞳孔径と瞳孔面積の計測データの比較を行い,分解能に関しては瞳孔面積のほうが優れていることを示した.最後に,瞳孔中心位置から両眼ディスプレイの注視位置を導出する較正計算方法に関して,注視領域を分割する方法を新たに提案した.従来の線形補間による較正法に対して,著者らが提案した視点位置較正方法によれば視点位置精度が向上するという結果が得られた.


■ ホイッスルキャビティにおける流れのシミュレーションと発生音の可視化

法政大・佐藤浩志,奥田日出治,渡辺嘉二郎

 ホイッスルとその要素は,吹き込み量と線形に比例する音が発生する.このことは実験的に知られている.ホイッスルを構成する要素の中で,円筒キャビティは,広範囲で流速に比例した正弦波に近い音を発生する.すなわち,ホイッスルの円筒キャビティ要素は,周波数検出型流量計としての優れた機能を有する.

 しかし,円筒キャビティ要素の内部で起こっている流体現象や,なぜホイッスルが鳴るのかは,明らかにされていない.本論はこれらの現象を,可視化実験とシミュレーションにより円筒キャビティ内での流体現象を明らかにすることとする.

 まず初めに,流れ現象をキャビティの両端部分において可視化実験結果とシミュレーションの結果を比較する.両結果は,同じ特性を表わしている.

 つぎに,実験では調査できない詳細において,シミュレーションにより解析した.

 最後に,円筒部の開放部分で円筒外部から内部へ入り込む循環流れが,発生音の原因であることを明らかにした.


■ 水晶振動子による3成分把持力把持位置センサ

大阪工大・村岡茂信

 現在,ロボットなどに使用されている力センサは歪みゲージ式が主流で,このセンサは出力がアナログ量でそのレベルも低いため,ノイズ除去用フィルタ,信号増幅用アンプ,コンピュータとのインタフェースとしてのA-Dコンバータなどを要することが多い.また,フィルタの使用による帯域制限が問題になることも考えられる.これに対して水晶振動子の発振周波数が外力により変化することを利用した力センサは,出力が周波数であるためノイズに強く信号処理が容易で高感度高分解能といった特長を有する.さらにこの周波数が一般の環境ノイズより十分高いため,フィルタを併用しても広い帯域が確保できる.したがって水晶振動子は速い応答速度や耐ノイズ性が重視されるところで使用する力センサとして有用である.

 本論文では,水晶振動子をロボットの把持力センサとして使用するため,水晶振動子の静荷重と衝撃荷重に対する強度,外力と周波数変化量の関係,水晶振動子を把持力センサに用いた場合の差動法,振動外力に対する応答について検討してから,水晶振動子による3成分把持力把持位置センサの構成例と原理を示し,試作センサの性能を実験的に検証し,水晶振動子が把持力センサとして有用であることを示す.


■ 無限遠点に零点をもつディスクリプタシステムに対するJスペクトル分解と一般化リカッチ方程式

名大・宮崎 孝,細江繁幸

 本研究では,モデルマッチング問題に関連したディスクリプタシステムで表現された有理関数行列のJスペクトル分解について考える.従来の状態空間表現で無限遠点に零点をもたない場合についてのリカッチ方程式の解を用いたJ-スペクトル分解に対し,本研究ではディスクリプタシステムを用いて無限遠点に零点をもつ場合や非プロパーである場合に適用可能な一般化リカッチ方程式を用いたJ-スペクトル分解を求める.Jスペクトル分解が存在することとモデルマッチング問題が可解でことが等価であることが示される.

 本論文で用いる一般化リカッチ方程式は,レギュラーでない場合をふくむペンシルを用いた形で定義される.そして,いくつかの条件を付加した一般化リカッチ方程式の解を用いて,Jスペクトル因子が求められる.また,一般化リカッチ方程式の安定化解の存在条件および一般化固有値問題による解法を与える.この結果は,H∞制御問題に応用可能である.


■ 自由境界を有する確率的双曲型方程式の解の安定性と分岐について―マイクロトンネル機械への応用―

東京理科大・相原伸一,クボタ・壁内輝夫

 本論文では自由境界をもつ双曲型編微分方程式の解の安定性と分岐について考察する.この微分方程式の物理モデルとして,マイクロトンネル機があげられる.このトンネル掘進機は,開削工事をすることなく地中にパイロットパイプを設置する機械である.このマイクロトンネル機械では鉄パイプが,油圧ジャッキにより地中に挿入されるのであるが,このパイプは数十センチの短いパイプがヒンジ結合されており,全体として見れば柔軟梁のような性質をもっている.地盤の支持係数に依存するが,縦方向の撓みが生じることかある.この撓みが増大すれば,挿入パイプの先端は推進せず,撓みがなければこの先端は挿入速度に比例して前進する.すなわち挿入パイプの先端位置は,挿入されたパイプの撓みに依存して変化することになる.このことは挿入パイプの先端位置の決定は,撓みに依存した非線形の関係式で支配されることになる.これが自由境界条件と称されるものである.さらに油圧ジャッキで発生されるパイプを挿入する押し込み力は,不規則に変動する.結局,撓みを支配する方程式は,よく知られた柔軟梁で用いられる双曲型偏微分方程式でかつ自由境界と不規則入力を有するものになる.

 本論文の構成は以下のとおりである.まず,システムモデルの解説を行う.さらに3節ではシステムが記述される確率的偏微分方程式の解の存在を証明する.解の存在が証明されたことにより,その解の安定性を論じることができ,4節で確率的安定性の十分条件を導出する.さらに擬定常解の概念を導入し,座屈現象と得られた安定条件との関連を解析する.最後にシミュレーションによる検証を行う.


■ 時変のパラメトリックな不確かさをもつ状態空間型モデル集合の部分空間法の利用による一同定法

Royal Inst. of Tech.・長棟亮三,阪大・山本 茂

 近年システム同定の分野で「ロバスト同定」と「部分空間法」が注目されている.ロバスト同定は,ロバスト制御理論で用いられるモデル集合を実対象からいかに作るかという問題であるが,これまでの研究では,扱われるモデル集合は伝達関数型モデル集合が主で,状態空間型モデル集合を求める有効な手法が得られていないという問題点がある.部分空間法は,状態空間型単一モデルを求める手法であるが,ロバスト同定への発展は今のところなされていない.本論文の目的は,部分空間法を一部変更することにより,時変のパラメトリックな不確かさをもつ離散時間系状態空間型モデル集合を同定する一手法を提案することである.本論文では,モデル集合のデータ再現性と最小性に着目した同定問題を定式化し,この問題が凸最適化問題に帰着されることを示す.扱うモデルの係数行列が,不確かさにアフィンの形で依存するので,このモデル集合はロバスト制御に適した表現となっている.パラメトリックな不確かさは,いくつかのノルムを用いて測られるが,いずれの場合の同定問題も凸最適化問題に帰着できる.


■ 主緩和双対法によるBMI問題の大域的解法

京大・若佐裕治,日立・佐々木正弘,阪大・谷野哲三,京大・片山 徹

 多くの制御問題が線形行列不等式(LMI)に関する最適化問題に帰着でき,内点法に基づくアルゴリズムによって効率的に解くことができることが知られている.しかし,LMI問題の解では保守的な制御結果となるため,双線形行列不等式(BMI)に関する最適化問題に帰着してその解を得ることが望まれる制御問題も数多く存在する.BMI問題はLMI問題とは異なり,凸計画問題ではなく,一般に大域的最適解を効率良く得ることが困難であるが,近年,BMIの性質を利用し,分枝限定法などを適用したBMI問題の大域的解法が提案されている.

 一方,LMI問題やBMI問題のような最近現れた行列不等式に関する最適化問題ではなく,従来からのベクトル値関数を制約関数,目的関数とするような非凸最適化問題に対して,さまざまな大域的最適化手法が研究されている.

 本論文では,主緩和双対法と呼ばれる双凸ベクトル値関数に関する大域的最適化手法をBMI問題に適用して,大域解を得る手法について述べる.また,高速化のためのアルゴリズムの改良を提案する.数値例では,アルゴリズムの幾何学的説明を行い,提案する方法の有効性を示す.


■ 飽和時の応答を考慮したアンチワインドアップ制御器の設計

広島大・佐伯正美,和田信敬,土屋正樹

 線形時不変な制御器を入力飽和のある制御対象に適用すると,ステップ応答のオーバーシュートが過大になるなどの制御性能の劣化が生じ,これをワインドアップ現象と呼ぶ.その抑制法として新たな補償を制御器に付加する静的補償器の設計法が検討されてきた.その構造は種々提案されているが,補償器のゲインの最適設計法は十分に整備されていない.この背景には,ワインドアップ現象の厳密な定義がなく,評価関数を経験的あるいは直感的な議論を許して導かざるをえない事情がある.最近では,ワインドアップを抑制するための評価関数を与え,最適問題に帰着する試みが始められている.ロバスト安定性も考慮されつつある.

 本論文では,ワインドアップ抑制のためには飽和時間区間における飽和要素の入力が大きくならないように制御器の状態を制御することが望ましいことを指摘する.これより評価関数を導出し,H2あるいはH∞制御問題に帰着して解く.なお,制御系のロバスト安定性はルーリエの安定解析手法で保証するにとどめ,解析結果は評価関数のパラメータを再決定するのに用いる.数値例により評価関数の妥当性を示す.


■ 非線形H∞出力フィードバックをもちいた線形システムに対する非線形制御則の一設計法

東京商船大・清水悦郎,東工大・三平満司,古賀雅伸

 本論文では,線形システムに対して制御則のゲインが,状態の変動が原点近傍である場合ではローゲイン(ハイゲイン)であり,変動が大きくなることに応じて,ハイゲイン(ローゲイン)となるような,非線形な特性をもつ出力フィードバック制御則を設計することを考える.このような特性をもつ非線形制御則を設計するために,評価出力に非線形重みをかけた,非線形な一般化プラントを構成し,このプラントに対して非線形H∞出力フィードバックをもちいて非線形出力フィードバック制御則を設計することを考える.本論文では非線形重みに対して制約条件を与えることにより,代数リカッチ不等式を解くことによって,大域的に安定化させる,非線形出力フィードバック制御則が設計できることを示す.さらに制約条件をみたし,かつ設計された非線形制御則が望ましい特性をもつような非線形重みを示す.


■ 非線形システムのフィードバック可安定性と平衡点集合の関係について

東工大・石川将人,三平満司

 本稿では非線形システムを局所漸近安定化する連続状態フィードバックが存在するための必要条件について,平衡点集合の観点から考察する.このような必要条件として,Coron('90)による条件が知られている.これは状態空間の位相幾何学的性質である特異ホモロジ―群の誘導準同型を用いて記述されているためかなり広いクラスのシステムを扱うことができるが,きわめて一般的な形で述べられていることもあって,「どのようなシステムが不可安定であるのか」といった構造が明らかになっているとはいえない.

 そこで本稿では,Coron の条件がシステムの平衡点集合というある程度具体的な構造とどのように関わっているかを調べる.まず最もシンプルかつ応用範囲の広い結果として,この平衡点集合の次元が制御入力の数と等しいことが可安定性の必要条件であることを示す.これはきわめて直観的な条件であって,多くの実例において,Coronらの条件よりもはるかに容易に可安定性を判断できる.つぎにより一般的な場合について,判定条件から可安定性に影響しない要素を取り除き,よりホモロジー次数の低い条件に簡略化できるための条件を与える.特にアフィンシステムの場合,正則な入力ベクトル場はすべて可安定性の条件から取り除かれることを示す.


■ 間接法MRACSのロバスト構成法とその安定解析

防衛大・鈴木良昭,板宮敬悦,鈴木 隆

 本論文では,間接法形式のモデル規範形適応制御系を対象として,非モデル化動特性と雑音からなるモデル化誤差の存在にロバストに対処しうるシステム構成法を示すとともにその安定性を論ずる.間接法では,プラントの未知パラメータそのものが同定の対象となるので,物理的意味が明確であると同時に,適応則により直接調整されるパラメータの個数が少なくてすむという利点がある.提案のロバスト構成法では,不感帯付きの適応則と積分性の固定補償要素が併用される.前者は雑音の存在に起因するパラメータのドリフトを防止するためのものであり,後者は不感帯付き適応則の使用により生ずるパラメータの調整ずれに起因する制御性能の劣化を改善するためのもので,両者の併用によりモデル化誤差の存在下でも満足な制御性能が達成できる.システムの安定性は,適応則により保証されるパラメータ変化率のL2性を基に,系内信号のL2δノルムを評価し,その結果にBellman-Gronwallの定理を適用することにより論じられる.本論文に示す解析法は安定条件に関わる定数の値を保守性が少ないという意味で鋭く評価できるという長所を有する.提案のシステム構成法の有用性はノミナル部が2次のプラントを対象としたシミュレーション実験により検証されている.


■ NLMS,RLS,KF型適応アルゴリズムの適応性能比較

徳島文理大・森本滋郎,山本由和,小林郁典,古本奈奈代,田渕敏明

 本論文は,回帰型線形システムyt=φtTθt+etの未知パラメータθt追跡のための代表的な適応アルゴリズムであるNLMS,RLS,KF 型の適応性能比較を扱うものである.

 従来法では,ytの予測誤差εt(γ)をもとにV(γ)=E{εt2(γ)}を最小に,または,θtの追跡誤差θ~t|t-1(γ)をもとにξ(γ)=E{‖θ~t|t-1(γ)‖2}を最小にする設計変数γが解析的に求められ,その設定値のもとでのV(γ)または,ξ(γ)の最小値の比較が行われる.しかし,この場合には,θtの変動を非常に緩やかなランダムウォークと仮定しなければならない.

 本論文では,γに関する単谷の評価関数J(γ)=1+E{logE{εt2(γ)●z-t}},z-t={yi-1,φi;i●t}の数値的最小化を通じて,V(γ)を最小にする意味で最適なγの設定値を見いだし,その設定値のもとで,同一例に基づく数値実験を通じてNLMS,RLS,KF型の適応性能を横断的に比較する.このとき,θtの変動に関する仮定は必要ない.すなわち,θtの変動を任意に設定した場合,また,実データに対する適応性能比較も可能である.


■ 部分空間同定法の逐次化について

東大・奥 宏史,木村英紀

 多入出力系の同定手法として部分空間同定法が注目され,90年代前半から多くの研究者によって盛んに研究されてきた.部分空間同定法は特異値分解により拡大可観測性行列を求めるところにその特徴がある.しかし,これらの行列分解がシステム同定にとって好都合な逐次的なアルゴリズムの導出を困難にした原因でもある.

 本論文では,Verhaegenらが提唱したPO-MOESP法(MIMO Output-Error State Space model identification with Past Observations of the input and output sequences)に対して,部分空間同定法の逐次化に対する一手法として,特異値分解を行う前の行列の逐次アルゴリズムを提案する.PO-MOESP法はな部分空間同定法の1つであり,プロセス雑音と観測雑音をもつ線形時不変離散時間系の同定に有効である.本論文で提案する逐次アルゴリズムは基本的には最小二乗推定に対する逐次化と同じであるが,状態空間モデルとの関連がはっきりしているという点で特徴がある.

 本手法はシステム行列(A,B,C,D)の直接的な逐次化にはなっていないが,更新項からただちにそのシステム行列が計算できることから実質的にその逐次化とみなすことができる.


■ Fault-Tolerance of Control Systems with Dihedral Group Symmetry

Keio Univ.・Reiko Tanaka,Kyoto Univ./Univ. of Tokyo・Kazuo Murota

 This paper deals with the fault-tolerance of systems that are symmetric with respect to the dihedral group Dm. The group Dm generally represents the geometric symmetry of a regular m-gon. We reveal the underlying mathematical mechanism of the loss of controllability for Dm-symmetric systems induced by failures and derive a necessary and sufficient condition to retain the controllability despite a failure. Moreover, we show the minimum number of functioning modules needed to retain the controllability despite the failures. It serves for a quantitative evaulation of fault-tolerance.


■ 姿勢を考慮したロボットマニピュレータの軌道計画法

 ロボットマニピュレータの軌道を計画する際,エンドエフェクタの通過する軌道だけでなく,その時のマニピュレータの姿勢を求めておく必要がある.本論文では,マニピュレータの姿勢を考慮した軌道計画法について報告している.本手法ではエンドエフェクタの軌道と姿勢を独立に計算することができる.軌道の計算方法としては,途中の通過点を一点で指定する代わりに任意の領域で指定するスプライン法を用いる.このとき軌道上の各座標が直線とフーリエ級数の和であると仮定して軌道を求めている.またこの手法では軌道中に直線部分が含まれる場合について考えている.与えられた条件下で最適な軌道を求める問題は線形計画法に帰着でき,シンプレックス法を用いて解くことができる.姿勢については四元数を用いて計算を行っている.主要な通過領域における姿勢はオイラー角であらかじめ与えておき,与えられたいくつかの点における姿勢を四元数に変換した後,それらを補間することによって軌道上のすべての姿勢を求めている.エンドエフェクタの姿勢が決定した後でマニピュレータの関節角を幾何学的に求め,全体としての姿勢を求める.シミュレーションにはマニピュレータのスケルトンモデルを用いて,数値計算例を示している.


[ショート・ペーパー]

■ 鉛およびインジウムの超伝導転移点の静的測定

計量研・櫻井弘久

 超伝導転移点は低温域での温度計の校正や温度計の管理などに利用されている.従来,潜熱を伴なわない2次の相転移や金属定点は,温度をスキャンする方法で測定されてきた.この方法では試料と温度計との熱平衡の確認が困難であり,その評価は測定者の技術に依存していた.一方,温度定点で温度計を校正するには,相転移している状態と温度計とを熱平衡にすることが不可欠であり,また,校正結果の不確かさを評価する際に最も考慮すべき要因である.

 ここでは転移点で温度を一定に保ち,転移の中間状態と温度計とを熱平衡にする静的な方法での測定を試みた.温度を一定に保つ静的な測定方法では,試料と温度計とを熱平衡にできる点に最大の利点がある.温度をスキャンする方法では,スキャン速度の設定などの装置や周囲温度,測定者の技量に依存する要素が多く,測定結果を客観的に評価することが不可能である.これに対し静的な測定では,特殊な技術やノウハウが不要であり,測定結果を統計処理することにより,客観的な評価ができるという特徴がある.


■ 複数の評価構造の統合について

北陸先端大・平石邦彦,沖北陸システム開発・清水美保子

 階層分析法(AHP)をグループ意思決定に適用する場合,グループ内のメンバ間で合意された共通の評価構造を作る必要がある.評価構造を作成する方法としては,ISM等の構造モデリングを用いる手法,あるいは,KJ法を用いる手法等が提案されているが,これらはブレーン・ストーミング等を通じてグループ内で合意された1つの評価構造を作ることを目的としたものである.これらに対し,本論文では,大内らが提案したのFISMの手法を利用し,木構造をもつ複数の評価構造を構造モデリングの考えに基づいて統合する方法を提案する.サブグループで作られた複数の木構造の評価構造を与え,まずそれらの可到達行列から差異を求める.そして,不一致要素についてはサブグループ間の議論により合意値を決定する.提案手法はそれらの不一致要素の合意値に対し一意に定まる木構造を求める.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会