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 論文集抄録

論文集抄録

〈Vol.35 No.8 (1999年8月)〉

論 文 集 (定 価)(本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員)6,300円 (税込み)

  〃   (会員外)8,820円 (税込み)


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[論  文]


[論  文]

■ 複合型八角リングによるロボットハンド用多機能触覚センサの実現

米子高専・中山繁生,九工大・陳  鵬,松宮俊彦,豊田利夫

 ロボットハンドがさまざまな物体を把持するためには,ワイドレンジでの触覚情報を検出することが必要とされる.すなわち,実用的な触覚センサには,高感度で,かつ大きな力に対して特性に変化をきたさないことや,作業に耐えられる強度をもつことなどが要求されるが,これらの条件を満たすセンサの開発例は少ない.そこで本研究では,これまでに挙げられている触覚センサの問題点の中で,特に強度と感度の矛盾点を解決するために,センサに及ぼす多方向の外力を独立して計測し,さらにワイドレンジでの計測が可能である複合型八角触覚センサを提案した.本報では,センサの計測原理と構造,センサの幾何寸法の設計法およびセンサの性能検証の結果について報告する.本報で提案したセンサは,垂直力で最小0.05[N]から最大168.56[N],平行力で最小0.08[N]から最大30.77[N]の範囲で外力の計測が可能であり,ワイドレンジでの計測性能が優れていることを示した.


■ シボ面の視覚的なソフト感の解析

豊田中研・久保田 毅,和田隆志,松田守弘,豊田合成・永田雅典,安井真由美

 自動車室内にはインストルメントパネル,サンバイザー,ハンドルパッドなど,樹脂部品が多用されており,これら樹脂部品の表面には皮革表面のしわ模様であるシボを形成したものが実用化されている.室内樹脂部品では視覚によるソフト感も重要であるが,これまでソフト感に関する研究は見あたらない.

 本論文では室内樹脂部品として表面にシボが付与されたハンドルパッドを取り上げ,視覚的なソフト感を向上させるための設計指針を得ることを目的に,ソフト感の官能評価とさまざまな物理特性の測定を行い,ソフト感と物理特性の相関を調べた.その結果,シボ面の視覚的なソフト感は複数の物理特性が複合的に作用して生じる感性品質であり,ソフト感を向上させるには,浅い方のしわを浅く,光沢を高く/明度を低く(表面粗度を小さく),傾斜パワーを大きく(毛穴を深く),すればよいことがわかった.


■ 3次元物体の部分距離画像からの一般化円筒表現の生成

東大・本谷秀堅,奥村政彦,出口光一郎

 対象物体の部分距離画像より,その対象の3次元形状を一般化円筒モデルの1つSHGC (Straight Homogeneous Generalized Cylinder)により表現する手法を提案する.対象物体の3次元形状をSHGCにより表現するためには,対象の軸,断面曲線および掃引曲線を定める必要がある.本手法は,対象表面の放物的曲線が,SHGCにより表現する際の断面曲線もしくは掃引曲線と一致することを利用する.このことにより,対象物体の一部分の距離画像のみが与えられていても,その部分が放物的曲線を含んでいさえすれば対象のSHGC表現を作成することができるようになった.SHGC表現の作成手順を示し,また,シミュレーションおよび実画像による実験により本手法の有効性を示す.


■ GPSと内界センサを用いた起伏地における移動機の位置計測

日立・青野俊宏,藤井健二郎,初本慎太郎

 内界センサ(光ファイバジャイロ,車輪エンコーダ,姿勢センサ)とGPSを用いて,起伏地における移動体の位置を計測し,この位置をもとに移動体を制御したい.このために十分な精度の位置計測を行うには,@ヨー角速度の計測における起伏の影響,AGPSの遅れ時間と不連続性,B光ファイバジャイロのドリフト,C車輪1回転あたりの進行距離の変化,D内界計測の基準点とGPSのアンテナの位置のずれによる影響,を考慮する必要がある.本研究では,この5つの要因を考慮に入れたセンサの観測モデルを提案する.このモデルに基づき,各センサデータが与えられたときに位置を推定する方法を開発した.この位置推定方法をインプリメントした自律移動芝刈機を試作し,走行実験を行った.この実験において,GPSのデータに計算機内でノイズを加えることでさまざまな精度のGPSを模擬し,GPSの精度と,GPSと内界計測のセンサフュージョンによる位置計測精度の関係を調べた.その結果,GPSと内界計測のセンサフュージョンによる精度の向上が確認され,GPSの精度が1mのときにセンサフュージョンにより20cmの位置計測精度が実現できた.


■ 睡眠中の心拍,呼吸,イビキ,体動および咳の無侵襲計測

法政大・渡辺春美,渡辺嘉二郎

 本論文は,病院でも家庭でも使用できる新たな健康モニタ用センサについて記述してある.本センサは無侵襲,無拘束でベッドにいる人間の生体情報を計測することができ,これにより睡眠の段階を評価することが可能になる.

 ベッドの上に敷かれたエアマットレス,エアマットレスの中の圧力を計測する微圧センサ,フィルタが提案するシステムの基本要素である.鼓動,呼吸運動,イビキ,寝返りや咳による体動はエアマットレスの内圧に直接影響を及ぼし,この内圧変動に適当なフィルタを施すことで体動の原因が分離・推定できる.

 本論では,エアマットレスの空気圧的な動特性について数学モデルを作り,この動特性で望ましくない効果を取り除くフィルタ条件および,体動の原因を分離する条件を明らかにした.さまざまな姿勢でベッドのどの場所にいても,重要な生体情報を無侵襲,無拘束で計測できることを実験で確かめ,本方式の有効性を示した.


■ 音速ノズル流出係数のレイノルズ数依存性の簡易相対測定法

計量研・石橋雅裕,高木正樹

 すでに校正済みである数本の音速ノズルを基準とし,未知の音速ノズルの流出係数のレイノルズ数依存性を相対的に測定する新しい方法を開発した.本方法では,基準ノズルと被試験ノズルを組み合わせて3つまたはそれ以上の直列接続を構成し,それぞれのノズルを共に臨界に保ったときのノズル間圧力を比較することにより,流出係数を支配する2つの定数を求める.上流側はあらかじめ設定された基準状態に近い一定な状態に保たれるため,装置の実現と測定作業が容易である.用いられる測定器は,限られた範囲内で直線性のみが確保されている圧力計1台のみである.この圧力計の感度は,音速ノズルの直列接続が発生する安定した圧力比を用いて同時に測定される.また,すべての圧力測定値が比の形で用いられるため,圧力計がもっている一定量のシフトにも影響されない.不確かさ解析とさまざまな形状の音速ノズルについて実証測定を行い,短時間のうちに十分に高い精度の結果が得られることを示した.


■ 超音波センサを用いた受波時刻マップに基づく溶鉱炉の炉壁異常診断

山口大・田中正吾,川鉄・吉原孝次

 溶鉱炉の内部炉壁(内壁)は常に過酷な状況に置かれており,時間の経過とともに欠損は免れない.したがって,溶鉱炉の安全管理および効率的使用のため,溶鉱炉内壁のモニタリングはきわめて重要である.

 この観点から,著者らは先に超音波センサを用い,超音波を外壁から内壁に向けて送波したときに得られる溶鉱炉内部の各境界面および炉壁底面からの複雑な重畳反射波を,送受波器の物理特性に従って導かれた基本反射波波形に基づき分離し,これにより内壁の厚みを高精度に計測するシステムを提案した.しかしながらこの方法では,溶鉱炉内壁の各境界面および底面からの反射波の受波時刻を同定するに際し,実験用に切り出された高炉用ステーブ(炉壁)に対し実験によって検出された反射波受波時刻の態様を基に,実際の溶鉱炉炉壁からの各反射波伝播経路を特定するなど,まだ完全には系統立った手続きをとっておらず,一般性の点で問題があった.

 本論文は,炉壁各境界面および炉壁底面での多重反射,多重透過を考慮した(理論的な)系統立った予測受波時刻マップの作成を考え,しかるのちに,これをこれまでの波形分離によって得られる実際の受波時刻マップと比較することにより,炉壁内壁の厚み計測,言い換えれば,内壁の欠損状態を正確に診断するシステムを考えたものである.


■ パラメータ学習による船舶姿勢オンライン計測の高精度化

山口大・田中正吾,宇部高専・米澤俊昭

 これまで,船舶の姿勢信号を状態変数表示の線形ダイナミックモデルで表わし,これにサーボ型傾斜角センサ,加速度センサによる観測方程式と組み合わせカルマンフィルタを適用する船舶姿勢オンライン計測システムを提案してきた.これらの計測システムでは,長・短周期波の支配的な周期長に固定候補を設け,候補ごとにカルマンフィルタを適用し,ベイズの定理により求められた事後確率によるカルマンフィルタ出力の期待値を求め,ローリング,ピッチング,ヒービングの計測を行っていた.そのため,時間の経過に伴う支配的な周期波成分の周期長の変化に十分速やかに追従できるようになってはいなかった.

 そこで本論文では,応答性を高め計測精度をさらに改善するため,各時刻ごとにデータウインドウを設け,データウインドウの初時刻でカルマンフィルタおよびベイズ定理の初期値をリセットし従来の計算手続きを用いる船舶姿勢オンライン計測システムを提案する.なお,このとき,仮に従来の固定候補を用いれば,データウインドウごとに数多くの候補を用いて計算を行わなければならないため,計算時間が増加する.

 そこで,オンライン計測の観点から,計算時間を節約するため,候補空間において効率的に最適候補を探索・学習する方法を新たに考えた.


■ パラメータ表現された出力フィードバックスライディングモード制御器に関する研究

武蔵工大・野中謙一郎,東工大・古田勝久

 本稿では,安定有理関数上の既約分解とYoulaの自由パラメータを用いて表現された,出力フィードバック型のスライディングモード制御則を提案し,一般化プラントを制御対象とした閉ループ系におけるBIBO安定性を証明している.

 一般化プラントを制御対象として外乱除去をモデルマッチング問題として扱うことにより,提案する手法はスライディングモード制御における明確な外乱除去性能の記述方法を与えている.加えて線形制御器との外乱除去性能の違いも,モデルマッチング問題を通じて明らかにしている.

 従来のスライディングモード制御則はプラントに関する厳しい条件を有するものが多かったが,提案する制御器はそういった制限を必要としない汎用的なものとなっている.また,規約分解表現を用いることによって,従来のスライディングモード制御器より簡潔な形で記述されている.

 数値シミュレーションでも,本手法の有効性は示される.


■ ピリオドグラムに基づくセットメンバーシップ同定

京大・福島宏明,杉江俊治

 本論文では,与えられた実験データから計算したピリオドグラムを用いて,システムの公称モデルとその不確かさの上界を与える重み関数を求める新たなセットメンバーシップ同定法を提案する.従来のセットメンバーシップ同定法の多くは,雑音の独立性や入力との無相関性といった経験的に知られている特性が考慮されず,データ数に関わらず同じ雑音の集合を用いているのに対して,提案法で用いるピリオドグラムに含まれる雑音は,その無相関性からデータ数の増加とともに小さくなる信号の集合として記述することができる.これにより,モデルの不確かさを評価する際の雑音の影響はデータ数の増加とともに低減され,保守性の小さいモデル集合を同定を行うことが可能となる.また,この雑音集合は凸集合であるため,同定における計算の複雑さの面からも実用的である.さらに,提案する方法の有効性を数値例によって検証している.


■ A Neurofuzzy-Based Adaptive Predictor for Control of Nonlinear Systems

Kyushu Univ.・Jinglu HU, Kotaro HIRASAWA,Kyushu Inst. of Tech.・Kousuke KUMAMARU

 This paper proposes an adaptive predictor for general nonlinear systems based on the use of a class of neurofuzzy models. The neurofuzzy-based predictor can be interpreted as a linear predictor network consisting of a global linear predictor and several local linear predictors with interpolation. It has some distinctive features as well as good prediction ability: its parameters have explicit meanings useful for initial value setting in parameter adjustment; it may be transformed into a form linear for the variables synthesized in control systems, which makes deriving a control law straightforward. Simulations on applying it to adaptive control of nonlinear systems demonstrateits usefulness.


■ 出力インターサンプリングに基づいた閉ループ同定

慶大・孫 連明,佐野 昭

 本論文では,出力インターサンプリングに基づいた離散時間閉ループ同定法を提案している.従来法による閉ループ系の可同定性条件は,閉ループ制御器の次数がプラント次数よりも高いことを要求しているが,本論文で提案する直接法はプラントへの入力のサンプリングレートよりも高速なレートで,プラントの出力をインターサンプリングすることにより,目標値変化やテスト信号を用いることなく,また制御器の構造に直接には依存することなく,出力をインターサンプリングしたプラントの入出力データのみを用いて閉ループ同定を行っている.従来の可同定性条件が満たされない閉ループ系に対して,出力インターサンプリングしたプラント表現や入出力信号の性質を明らかにすると同時に,これらを利用して,1回でもインターサンプリングすることにより,閉ループ同定が可同定性を満たす条件を明らかにした.また数値計算例を通して本手法の有効性について検討を行った.


■ 連続時間系の有限時間整定制御器の1設計法

東工大・田中 聡,古田勝久

 有限時間整定制御とは,制御量の偏差を有限時間内に整定させる制御のことであり,離散時間系では古くから研究されてきた.しかし,連続時間システムに離散の有限時間整定制御を適用すると,サンプル点間では整定しないリップルが起きることが知られている.これを回避する1つの方法として,連続時間系の有限時間整定制御があり,近年,黒沢や延山らによって1入力1出力系のサーボ系の有限時間整定制御器の設計法が提案された.延山らの方法による設計法は,すべての1入力1出力のシステムに対して設計できるが,誤差信号が目標信号の有限時間整定信号を含む設計法となっている.一方黒沢による方法は,誤差信号が目標信号の有限時間整定信号を含まない制御器も設計できるが,不安定非最小位相系に対しては設計できない.またこれらの方法は,目標値がステップ関数の場合,むだ時間要素の数だけ制御入力が不連続になる問題を残している.そこで本研究では,黒沢の方法を拡張し,すべてのSISOの制御対象に対して安定化する有限時間整定制御器の設計法を示す.この方法は,むだ時間要素が1つで設計でき,制御対象の初期状態によらず有限時間整定することができる.また,他の有限時間整定制御では入力が不連続になる問題が残されているが,さらに拘束条件を加えれば,制御入力を連続にすることができる.最後に数値例でその有効性を確かめる.


■ 送り駆動系の簡単化ディジタル制御

福岡県工業技術センター・末廣利範,九工大・大川不二夫,ローランド・外村隆行

 一般に,送り駆動系から構成される工作機械などでは,負荷条件の変動や摩擦抵抗などの影響により制御性能が低下するため,それらの補償が重要になっている.特に,非線形摩擦である静止摩擦とクーロン摩擦はさまざまな要因に起因し,さらにその値は動作条件によって変動するため,正確な解析,同定およびその補償は非常に困難である.本研究では,まず,送り駆動系に対する簡潔な離散時間近似モデルを導出する.このモデルは,速度信号情報を必要とするが,非線形項や外乱に依存しないため,これらに関してロバストな形式であり,簡潔な制御系設計に有用である.つぎに,このモデルに基づく,極配置および適応制御系をそれぞれ設計した.制御実験を行った結果,制御系の構成が非常に簡潔であるにもかかわらず,良好な制御性能が得られることが確認された.これにより,制御アルゴリズムなどの演算処理の短縮化やモデル中のパラメータ変動に対する補償が可能となり,ロバスト性の向上が図れるようになった.


■ 後工程引き取り型生産システムにおける部品投入リアルタイム制御

和歌山大・山本秀彦

 本論文は,JIT生産方式を代表とする,後工程引き取り方式に基づく生産システムへのリアルタイムの部品投入制御方法の開発について述べる.この制御方法SEALS (Realtime Scheduling Control of Automated Flexible Production Lines)は,完成品コンベア上の部品整列状況を逐次観察し,同時にif-thenルールを自動的に生成し,このルールと照合しながら,投入部品を決定する1個流し生産制御である.

 事前の生産計画から大きく異なる突然の生産計画を仮想生産システムに発生させ,生産量の変化を測定した結果,SEALSによるリアルタイム制御を導入した生産では,事前の生産計画から異なる度合いに関係なく,一定水準で平衡する生産量の確保が確認できた.この結果から,アウトパターン概念,同時に複数が乱立する部品投入に関するif-thenルールなど,SEALSのアルゴリズムが有効であることが検証された.


■ 動画像による連続手話の認識方式

東大・喜安千弥,藤村貞夫

 手話の自動認識は,手話通訳システムの実現に不可欠である.動画像を入力とする連続手話の認識方式を開発した.手話による会話では連続的な動作で複数の単語が表現されるため,通訳システムは,このような連続手話を認識する必要がある.連続手話の認識においては,単語間に発生する手の移動を除外し,単語のみを正しく抽出して認識しなければならない.まず手の動きの速度の極小点を検出して時間領域でセグメンテーションを行い,各区間について手の動きと形に基づいて単語候補を決定する.候補を決定した後,辞書データとの一致の良否を総合的に評価し,良好に一致した区間を単語として採用する.それ以外は手の移動区間とみなして認識結果から除外する.手の動きは画像上の座標の時系列データに対してDPマッチングを適用して認識した.各指を異なる色で着色したカラー手袋を用い,各指を画像上で識別して手の形状に関する特徴を抽出し,BDTを用いて手形状の認識を行った.BDTを用いることで少数の適切な特徴を自動的に選択して,効率よく認識が行える.右手のみで表現される手話単語20語を組合せ,2〜4語からなる手話文128文を入力して特定話者に対する認識実験を行った結果,約96%の認識率が得られた.


■ パターン識別に対する斜交軸と変数選択手法の導入

山梨大・吉川雅修,高村亘史,東大・藤村貞夫,広島大・西井龍映,山梨大・宮本 泉,島根大・田中章司郎

 リモートセンシング画像の土地被覆分類に有用な新しい特徴抽出手法を提案する.観測ベクトルから二変数を組み合わせた単純な線形結合形式による新しい変数を導入する.導入した変数は元の二変数に関する主成分に対応し,判別に有効な成分が含まれる.観測ベクトルと線形結合変数とを適切に組み合わせる方法により,より低次元でかつ判別精度の高い判別分析を行う手順を提案する.

 まず,変数の組み合わせ方と判別分析とに関する同値関係を用いて,判別分析に用いることのできる独立な変数組の数を定式化する.第二種スターリング数を用いてあらわすことができ,単純な組合せの数よりも非常に小さなものであることが示される.

 つぎに,この中から判別分析に用いる変数組を選択するための戦略を記述する.ここでは赤池の情報量基準(AIC)を線形判別関数に対して適用し,AICの意味での変数組と対象カテゴリの分離とに関する評価を行う.

 この評価結果と,少数の変数組に関する教師データの判別テストとを組み合わせて,判別に関して最適あるいは準最適な変数組を最終的に選択する.


■ 包絡分析法(DEA)モデルの一般化

阪大・尹 禮分,甲南大・中山弘隆,阪大・谷野哲三

 意思決定体(Decision Making Units)の相対的効率性を測定するために包絡分析法(DEA; Data Envelopment Analysis)が提案されている.DEAにおいては,さまざまな角度からの効率性を測定するために,これまでにCCRモデル,BCCモデル,FDHモデル等が提案されてきた.本論文では,これらの基本的なDEAモデルを含むより一般的なGDEAモデルを提案し,それらの間の相互関係を理論的に明らかにしている.すなわち,GDEAモデルに含まれるパラメータαを適当な大きさの値にとることにより,CCR効率性,BCC効率性,FDH効率性が測定できることを示し,さらに,αの値を変化させることによって,DMUの相互関係を浮かび上がらせることができることを例題とともに示した.実際の意思決定においてはCCRモデルやBCCモデルのように特定の価値基準に基づく効率性では対応できない場合も多く,本論文で提案した手法によって意思決定者の多様な価値観を反映する解をより効果的に見いだすことができるものと思われる.


[ショート・ペーパー]

■ 差圧式二重管気体粘度計

東洋大・小林良二

 二重管気体粘度計においては試料気体は径の差が微小な同軸の円筒の間を流れる.その層流の場合についてNavier-Stokesの方程式から粘度を求める近似式がすでに知られている.

 ここに報告する差圧式二重管気体粘度計は上記の原理に基づくもので,定容・差圧型の気体粘度計である.本粘度計は細管の場合と同様に試料気体の微小質量流量を測定することなく,二重管の両端の差圧のみの測定によって短時間に気体の粘度が知られるという特長をもっている.

 また,構造が簡単で,扱いやすく,工業的な応用測定への活用が期待される.


■ 階段型分数次ホールドの優位性

熊本大・石飛光章,後藤啓一,奥村直樹

 零次ホールドではサンプル値系の零点の安定性を確保することができなくても,分数次ホールドではできる場合がある.しかし,分数次ホールドを実現する回路は複雑になる.そこで本稿では,零次ホールドを用いた階段状信号で分数次ホールドを近似実現する方法を検討し,分数次ホールドと同じ場合に,零次ホールドでは零点が不安定になるにもかかわらずその方法では安定になることを明らかにするとともに,適応制御実験によって零次ホールドより優れていることを実証している.


■ 動作環境が変化するシステムのロバスト制御―補間アプローチによる2自由度サーボ系の設計―

阪府大・村松鋭一,阪大・池田雅夫,神戸大・首藤博司

 動作環境によって動特性が変化するシステムに対するロバストサーボ系の設計について考察する.制御対象は,2つの代表的な動作環境における制御対象の伝達関数の既約分解の補間(補間モデル)によって表わされるとする.このような制御対象に対し,制御量を定常偏差なく目標値に追従させる2自由度ロバストサーボ系の設計法を考える.制御対象の動特性変化に対応するため,フィードバック補償器とフィードフォワード補償器のそれぞれを補間を用いて構成することを提案し,それらが満たすべき条件と設計法を示す.

 
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