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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.36 No.4 (2000年4月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


■ 標本化周波数のランダムなゆらぎによるアンチエリアシング効果

科学警察研・山本広樹,筑波大・青島伸治

 本研究では,標本化周波数にランダムなゆらぎを付与してAD変換を行うと,高い周波数成分ほど高い減衰効果が得られることを理論的に示した.そして,計算機を用いた数値実験による検証を行った結果,新たなアンチエリアシング処理としての可能性が認められた.標本化周波数へのゆらぎの付与は,AD変換器を制御するソフトウエアにより比較的容易に実装可能と考えられる.よって本研究で示した効果を用いれば,システムのAD変換部におけるアナログ回路の簡略化と信頼性向上が期待できる.さらに,アナログ回路のような温度変化に対する特性補償の心配がなく,また,動作中にLPF特性を変化させることが可能である.こうした特長は,たとえば,小型・低価格であることを要求されるリモートセンシングシステムや電子玩具などのマイクロコンピューター使用機器などへの応用に適するであろう.


■ 出力誤差のN重積分値が零となる低次元モデル同定

ダイキン工業・小坂 学,小泉清嗣,阪府大・柴田 浩

 最小二乗法は疑似白色信号などのPE性を満たす同定入力を必要とする.このような信号を電気油圧システムなどの機械系に入力すると騒音や振動などがしばしば発生する.一方ステップ信号は,騒音や振動などが比較的起こりにくく,実用性に優れた同定信号である.

 しかし従来のオフライン同定法であるステップ応答法やステップ同定入力を用いた最小二乗法は,同定モデルの次数に制約をもつ.

 本論文では,出力応答が定常値となるような入出力信号を用いて,任意次数の対象に適用可能な,新しい確定的なオフライン低次元化同定則を提案する.

 本低次元化同定則では,ある種の出力誤差の0〜N重積分の定常値が零となり,かつ無視した高次項に影響されることなく,パラメータが順次一意的に同定される.この同定されたパラメータを用いて低次元化同定モデルの伝達関数の係数が計算される.

 なお,本同定則ではM系列信号を用いた最小二乗法で必要となるサンプル周期決定のための試行錯誤も不要となる.


■ 最小位相系に対する繰返し制御系のパラメトリゼーション

山形大・山田 功,山形産業短大・奥山 正

 本論文では,Causalな繰返し制御系のパラメトリゼーションを与える.これまで検討されてきた繰返し制御系のパラメトリゼーションの研究においては,補償器1/(1−q(s)e-sL)と制御対象の直列結合を内部安定化する補償器のパラメトリゼーションを求めていた.q(s)が安定で真にプロパーの場合には,1/(1−q(s)e-sL)は,閉右半平面に零点を持たないことに着目すると,1/(1−q(s)e-sL)と制御対象の直列結合は,やはり最小位相系となる.このことは,最小位相系に対する繰返し制御系のパラメトリゼーションは,一般的な最小位相系に対するパラメトリゼーションを援用して求められるものと考えられる.本論文では,Glaria and Goodwinの最小位相系に対するパラメトリゼーションを援用して,補償器内部にローパスフィルタを用いた修正制御系のパラメトリゼーションを与える.最後に,数値例により本論文で得られたパラメトリゼーションの有効性を述べる.


■ 1入出力q-Markov COVERの解集合のパラメータによる陽な表示

神戸大・増淵 泉,岩橋宏晃,太田有三

 対象とするシステムの特定の情報に適合するシステムを求めることはシステム制御理論における重要な課題である.その1つであるq-Markov COVER(q-Markov COVariance Equivalent Realization)は,システムのMarkovパラメータとcovarianceパラメータの有限個の部分データに一致する線形システムを求める問題であり,部分データに基づくモデリングやモデルの低次元化などにおいて有効である.従来より,q-Markov COVERのすべての解の集合をパラメトライズする方法が知られているが,そのパラメトリゼーションはデータから構成されるある行列の特異値分解によって与えられている.これに対して本論文では,1入出力系のq-Markov COVERのすべての解のパラメトリゼーションを,与えられたデータで陽に表示する方法を示す.これによって,Markovパラメータ・covarianceパラメータの部分データとそれを満たすシステムの集合との関係がより明らかとなる.


■ ループ整形機能を有するILQロバストサーボ系の解析的設計法

阪大・酒井雅也,藤井隆雄

 ロバストサーボ系の設計法の1つであるILQサーボ系設計法はこれまでに種々の改良や拡張が行われており,またその実用性の高さからいくつかの実システムにも適用されてきた.ILQ設計法では,設計者は目標値応答特性,つまり参照入力から出力までの閉ループ伝達関数をあるクラスで解析的に指定できる.しかし,観測ノイズの抑制やモデル化誤差に対するロバスト安定化という視点は考慮されていなかった.そこで,本論文では上記の視点を設計に取り入れるため,従来のILQサーボ系に新たにオブザーバの設計自由度を付加した構成を考える.そして,従来の目標値追従特性のほかに観測ノイズの抑制特性も考慮して2つの閉ループ特性を同時に整形する設計法に拡張する.周知のように,本設計法と同様にループ整形を達成する設計法として開ループ特性を整形するH∞ループ整形法が提案されている.それと比較して本設計法の特徴は,ふたつの閉ループ整形をモデルマッチングの観点から行う点にあり,これにより,設計結果がプラントパラメータと設計仕様で指定する所望の閉ループ特性から解析的に得られる,というILQ設計法本来の特長がそのまま引き継がれることになる.


■ 直接法による不安定系の閉ループ同定法と磁気浮上系への応用

慶大・孫 連明,三宅泰弘,大森浩充,佐野 昭

 本論文は,不安定プラントの離散時間伝達関数モデルを,プラントの入力と出力データのみを利用して直接閉ループ同定を行う手法を明らかにした.閉ループ同定では,入力と出力雑音の相関性によるバイアスの問題と入出力データ行列のランク落ちの問題の2つを解決する必要がある.式誤差法や部分空間法では,バイアスの補償とともにデータ行列のランク落ちを防ぐための可同定性条件が科せられている.この条件は簡単に言えば,制御器の次数は制御対象の次数よりも大きいということを要求しており,制御器が対象の低次元モデルにより設計されることを考えるとこの条件は現実的ではない.一方,予測誤差法や最尤推定法を直接法による閉ループ同定に利用する場合には,雑音モデルが最小位相系でなければならないという厳しい条件のために,不安定系の閉ループ同定にそのまま適用することができない.不安定系の閉ループ同定の場合には,非最小位相の雑音モデルが発生したり,不安定極の極零相殺が生じるからであり,これらの問題点を解決する必要がある.

 本論文の目的は,従来の可同定性条件を必要としない不安定系の閉ループ同定法を出力インターサンプリングに基づく直接法で実現する手法を与えることである.本手法では,出力インターサンプリングがもつSIMO構造に着目した部分空間法により不安定系の分母多項式を同定し,さらに非最小位相の雑音モデルの問題点を解決するために補助変数の生成に工夫をした手法により分子多項式を同定するという2段階の手順がとられる.また物理的構造を利用した簡便な分子多項式の同定法についても明らかにした.さらに可同定性に関する考察を行い,最後に不安定な磁気浮上系をPID制御器で安定化を行った状況での同定実験を通して本手法の妥当性を検証した.


■ 各レベルに複数定常環境をもつ可変階層構造学習オートマトン

徳島大・最上義夫,大阪教育大・馬場則夫

 未知環境中において動作する大規模かつ複雑なシステムへの適用を目的とした学習オートマトンとして,学習オートマトンを木構造に組み合わせた階層構造学習オートマトンが注目されている.ある問題に階層構造学習オートマトンを適用するときにその出力となり得るもの,すなわち,問題の解となり得るものを学習目標と呼び,それらの集合を目標集合と呼ぶことにすると,従来行われてきた研究はいずれも,目標集合の要素が学習開始時にすべて与えられて確定しており,それらに対するreward(評価)を与える確率のみが未知である場合について考察している.

 しかし,実際の問題に階層構造学習オートマトンを適用することを考えるとき,rewardを与える確率のみならず目標集合の要素数および内容もが未知であるような環境中において動作する階層構造学習オートマトンについても考察することが必要である.このような問題に対して最上は可変階層構造学習オートマトンを提案し,その学習アルゴリズムを構築するとともに学習特性について考察したが,より広範囲の問題を考えるならば,複数の未知環境が存在する場合においても可変階層構造学習オートマトンを構築することが重要になる.

 そこで本論文では,各レベルにP-モデル複数定常環境をもつ可変階層構造学習オートマトンについて考察し,そのときに生じる問題点を指摘する.そしてこの問題点を解決するためにrewardパラメータを導入し,このパラメータを組み込んだ可変階層構造学習アルゴリズムを構築するとともに,本可変階層構造学習アルゴリズムによって最良目標パスが見出される確率はいくらでも1に近くすることができることを理論的に示す.さらに数値シミュレーションによって,本学習アルゴリズムの有用性を検討する.

[ショート・ペーパー]


■ 側壁付着形流体素子の切換え過程における噴流挙動の数値解析

愛媛大・村尾卓爾,広島大・須藤浩三

 本研究は,側壁付着形流体素子の切換え機構の解明を目的にしている.非定常ナビエ・ストークス方程式にk-εモデルを適用して数値計算を行い,非定常流であるため従来求められていなかった,側壁付着形流体素子の切換え過程における素子内流れの流線図を求めた.ついで,得られた結果を実験的に測定した速度分布と比較し,可視化された流動状況を基にして,噴流の切換えの機構を直接的に検討した.その結果,以下の事柄が明らかになった.

(1) 噴流の反対壁への付着の機構はこれまでは推測の域を出なかった.数値計算の結果からは,この付着現象は,壁端のはく離域の発生や流路中央の循環域と噴流の干渉が原因と考えられ,反対壁の壁端近くで始まる機構であることが明らかになった.

(2) 噴流の切換えにおける,付着壁側の付着渦の破壊と反対壁側の付着渦の発生の相互の時間的関係が明瞭に示された.

(3) 数値計算で得られた速度分布図と,実験的に得られた素子中心軸方向の速度分布図を比較し,ほぼ類似の結果が得られたことを確かめた.


■ Controlling Selection Pressure and Diversity in GA's by Partial Enumeration

Kyoto Inst. of Tech.・C.A. BRIZUELA and Nobuo SANNOMIYA

 This paper deals with the presentation of a new selection procedure in order to control selection pressure and population diversity in Genetic Algorithms (GA's). We apply this method to the Job Shop Scheduling Problem and verify its better performance against a standard GA.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会