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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.36 No.11 (2000年11月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文] [ショート・ペーパー]
■ 階層的な領域分割によるステレオビジョン

法政大・岩月正見,鈴木浩二,山口剛弘

 本論文では,領域分割の手法を用いてステレオ画像を同時に色領域に分割し,同一色領域の輪郭の特徴点どうしを照合することにより,領域の正確な対応付けと3次元構造の復元を可能するステレオビジョンの新しい手法を提案している.色領域分割におけるクラス併合のしきい値の選び方によって,本来分割されるべき領域が1つの領域に併合されてしまったり,併合されるべき領域が2つ以上の領域に分割されてしまい,適切な対応付けが行われないことがある.そこで,このような過併合,過分割の問題に対して,本手法では,併合のしきい値を段階的に変化させて階層的な色領域分割を行い,各階層にまたがって色領域のマッチングを行うことにより,左右画像の分割結果の違いを吸収して誤対応を減らすことを可能にしている.また,本手法では,室内ロボットの作業空間の認識を行うことを目的とし,人工的な物体に取り囲まれた環境を想定している.したがって,このような人工物の側面を構成する領域はほぼ平坦であると仮定することにより,隠ぺいによって生じた領域の偽の特徴点を削除することもできる.


■ エアマットレス型無拘束生体計測の実用化研究

法政大・渡辺嘉二郎,渡辺春美

 本論は,新たな空気圧あるいはエアマットレス方式の生存生体情報計測法の実験調査を報告するものである.この方法は脈拍,呼吸,体動,咳,イビキなどの生存生体情報を,ヒトが乗り従ってヒトの生体運動から影響を受けるエアマットレス内の空気の圧力変動から間接的に計測するものである.血圧計はこのような空気圧式の特殊な例である.エアマットレス法はエアマットレスの上にヒトが存在しなければならない以外何の拘束もなく,血圧計測や従来の電極をヒトの体に貼り付ける方法に比較して,緩やかな拘束しかない.

 本論は実用化を目指して雑音減少,センサとして使われるマットレスの寝心地,この方法が既存のクッションやヒトに作用する圧力を分散させるエアマットレスにそのまま適用できるかについて検討する.結果として,この方法はマットレス内圧力変動に適切な遮断周波数のフィルタを用いることで生活雑音にきわめてロバストであり,マットレスの存在がわからない程度の薄いエアマットレスすなわち厚みが5mm程度のマットレスでも計測が可能であり,また従来からの多様なエアクッションやマットレスでも計測でき安定した方法であることがわかった.この方法は安定したヒトに拘束が最も少ない生存生体計測法である.


■ ローリング軸が未知な船舶に対する船舶姿勢計測

宇部工業高専・米澤俊昭,山口大・田中正吾

 これまで,船舶の姿勢信号を状態変数表示の線形ダイナミックモデルで表わし,これにサーボ型傾斜角センサ,加速度センサによる観測方程式と組み合わせカルマンフィルタを適用する船舶姿勢オンライン計測システムを提案してきた.しかしながら,これまでの方法では,ローリング軸,ピッチング軸の位置を既知としていたため,船舶の重心・浮心の関係からローリング軸の位置が予想軸と異なる場合や,波の状況によりローリング軸の位置が一時的に変化する場合には,高精度な計測は期待できない.

 そこで本論文では,これまでの計測システムに1個のサーボ型傾斜角センサを追加することにより,ローリング軸の位置が未知な場合でも,船舶姿勢がオンラインで,かつ高精度に自動計測できる計測システムを提案する.さらに,ミニマックス規範の観点から,ローリング計測に用いる2個の傾斜角センサの最適配置を考え,1個の傾斜角センサは予想ローリング軸上に,また他の1個の傾斜角センサは予想ローリング軸の上方または下方の可能な限り遠方へ置くのが最適であることを見い出した.なお,今回提案した計測システムは,ピッチング軸の位置は既知であると仮定したが,未知の場合にも,同様なアプローチが可能である.


■ 水平方向歩行距離の無拘束計測

東北大・佐川貢一,日立・佐藤 豊,東北大・猪岡 光

 平地歩行時の移動距離を無拘束で高精度に計測する方法について述べる.歩行速度は,被験者のつま先に取りつけたセンサシステムにより計測される足の加速度の水平方向成分を積分することによって求める.歩行距離は,歩行速度を積分することによって求める.センサシステムは,3軸加速度センサと1軸ジャイロによって構成されている.加速度センサは,被験者のつま先の3軸方向加速度を測定し,ジャイロはセンサシステムのピッチ角度の角速度を計測する.加速度センサの計測軸は,歩行中にピッチ方向とヨー方向に回転する.加速度センサのピッチ方向の傾きは,計測される加速度に重力加速度が混入する原因となり,積分時の誤差の原因となる.センサシステムの角度は,ジャイロによって計測される角速度を積分することにより計測し,加速度センサの計測軸と同じ方向の水平方向加速度を推定するために使用する.歩行中に足が左右方向(ヨー方向)へ回転したり,センサシステムの装着精度が多少悪い場合でも,水平面に投影される進行方向加速度の大きさには影響しない.水平方向加速度の積分は,1歩ごとに行われる.水平歩行速度の積分定数は立脚相では0となり,センサシステムの角度の積分定数は水平方向加速度から導出する.7人の被験者を対象とした実験の結果,実際の歩行距離と推定歩行距離の差は,平均0.2[%]となった.また,推定歩行距離は,センサシステムの取りつけ時の精度を考慮することなく,また膝や足首の固定や摺り足など不自然な歩行を行った場合でも影響されない.


■ Interpolation of Non-Uniformly Sampled Sequences and Reconstruction of Sampled Sequences with Any Uniform Interval Based on Non-Uniform Sampling Theorem

Tsukuba Univ.・Kimio SASAKIPioneer Co., Ltd. Yoshihiro SEITA

 In this paper we psesent a new non-uniform sampling theorem for band-limited signals, together with an associated interpolation formula of non-uniformly sampled sequences, and propose a practical algorithm for reconstructing sampled sequences of any uniform interval from a non-uniform one by using the frequency sampling technique and FFT algorithm. After a brief review of the ordinary uniform sampling theorem, the non-uniform sampling theorem is given, together with an aliasing free condition being made clear. Based on the fundamentals, an interpolation formula of non-uniformly sampled sequences is derived and a practical implementation algorithm to reconstruct uniformly sampled sequences of any desired interval from a non-uniformly sampled version is proposed by way of the frequency sampling technique and FFT algorithm. The principle as well as the effectiveness of the proposed algorithm are ascertained through numerical experiments with sinusoidal and FM signals of finite bandwidths.


■ ニューラルネットワークによる次数が未知なウィナー型非線形システムの同定

広島市立大・小林康秀,沖田 豪,向谷博明

 本論文では,動的な線形部に静的な非線形部が接続されたウィナーモデルを対象とし,その同定法を提案している.このウィナーモデルは,非線形特性がそれへの入力の多項式で表わされる場合はボルテラ級数モデルに対応し,一般に非線形性の強いシステムも表現可能である.この非線形部の表現法は種々考えられるが,ここではニューラルネットワークの優れた近似性能に着目し,非線形部をニューラルネットワークで,線形部をARXモデルで表現している.これらを結合したウィナーモデルでは,ARXとニューラルネットワークのパラメータが密接に関係しているため,これらのパラメータを同時に一括学習し効率的に最適化を行っている.また,システムの入出力の次数は一般に未知なので,その次数および未知な非線形特性に応じた最適なニューラルネットワークの構造を決定している.最後に,ディジタルシミュレーションにより,本手法の正当性を検証している.


■ 最小L2感度を有する状態推定フィードバック制御器の実現

広島大・雛元孝夫,河野 貴

 状態推定フィードバックディジタル制御器を固定小数点表現を用いて実現する場合において,このディジタル制御器の係数に対する閉ループシステム全体の伝達関数感度をL2ノルムのみを用いて評価する関数を導いている.つぎに,この評価関数を最小化する状態推定フィードバックディジタル制御器の最適実現法を提案している.ここでは,L2ノルムのみを用いて係数感度を評価しており,L1ノルムとL2ノルムの混成によってこれを評価する場合に比べて,十分に合理的な評価関数が導かれている.また,この評価関数を最小化する座標変換行列を逐次推定する場合には,各ステップにおける推定値が閉じた形で解析的に決定できるという利点がある.最後に,数値例では良好な結果が得られており提案手法の有用性が裏付けられている.


■ L2 Gain Analysis of Switched Systems with Average Dwell Time

Wakayama Univ.・Guisheng ZHAI,Univ. of Notre Dame・Bo HU,Wakayama Univ.・Kazunori YASUDA,Univ. of Notre Dame・Anthony N. MICHEL

 In this paper, we investigate the L2 gain properties of time-controlled switched systems consisting of several linear time-invariant subsystems by using an average dwell time approach incorporated with a piecewise Lyapunov function. We show that when all subsystems are Hurwitz stable and have the L2 gain smaller than a positive scalar, the switched system can achieve any L2 gain larger than such scalar if the average dwell time is chosen sufficiently large. The result is extended to the case where state jumps occur at switching points, and to a class of nonlinear switched systems by considering a Hamilton-Jacobi inequality for each subsystem.


■ LMI非共通解による多目的制御系設計―反復計算による方法―

阪大・下村 卓,玉越隆行,藤井隆雄

 線形行列不等式(LMI=Linear Matrix Inequality)に基づく多目的制御系設計では問題の凸性を保つためにLMI共通解が採用され,保守性が問題になっている.本論文では,この保守性を緩和するために,LMI非共通解を用いて多目的制御系設計を実現するための1つの方法を与える.ここでは,問題を状態フィードバックの場合に絞り,H2/H∞制御,領域極配置,およびそれらを組み合わせた問題について,LMI非共通解で解くための新しい方法を提案する.その着眼点は,まず制御器変数に関する平方完成がBMI(=Bilinear Matrix Inequality)項に含まれる2つの変数を(代償として準負定二次項を生じながら)異なる2つのLMI項に分離するという性質に着目し,つぎにSchurの相補定理が適用できない準負定二次項を適切な上界で置き換えながら反復計算により最適解を求めていく点にある.上界に含まれる変数の適切な選定はアルゴリズムの収束性を保証する.二慣性系の数値例により提案手法の有効性が検証される.


■ 高次ノンホロノミック制御系の可変周期有限整定制御と劣駆動機械制御への応用

東工大・南 澤槿,美多 勉

 ノンホロノミック拘束を受ける機械システムはノンホロノミック系と呼ばれ,積分不可能な速度,あるいは,加速度拘束を巧みに利用することにより,制御入力より多い一般化座標を任意の目標値に整定させることができる.速度拘束から導かれるノンホロノミック系は一般にドリフト項のないアファイン系(対称アファイン系)で表現されるが,初期角運動量のある角運動量保存則から導かれる速度拘束や加速度拘束から導かれるノンホロノミック系は一般にドリフト項のあるアファイン系として表現される.対称アファイン系のノンホロノミック制御則は数多く提案されているが,ドリフト項をもつ系に関するフィードバック制御はあまりない.

 これに対して本論文では,Monacoらのマルチレートディジタル制御を,重複Chainを使って表わされるChained Form,および,ドリフト項をもつ高次Chained Formへ統一的に拡張するものである.特に,各入力での制御周期の均等化のため,サンプル周期を可変とする可変周期有限整定制御とその実施方法を提案した.有限制定制御を短い周期で実施すると応答の振幅が大きくなり,Chained Formに変換するときの特異点に到達することが考えられるので,サンプル周期の均一化はこの問題を避けるために有効である.可変周期有限整定制御の効果をシミュレーションにて確かめ,3リンク劣駆動マニピュレータの姿勢制御に適用した.


■ 一般化予測制御と最適レギュレータを用いた火力発電プラントの脱硝制御

東芝・中本政志,東京電力・小久保 隆,東芝・上都礼智,清水佳子

 本論文ではLQRとフィードフォワードを考慮したGPCを用いて火力発電所の脱硝制御を設計し,火力発電所にて試験を行い制御性能の評価を行った.試験は設計点だけでなく各種の運転状態で行い,制御の有効性を確認した.脱硝制御は頻繁に外乱の加わる大きなむだ時間をもつ系であり,一般に外乱に対する出力の影響を低減するのが難しい系である.また下位のループは干渉のある多変数系である.制御構成として,外乱をフィードフォワードすると共に,むだ時間にはGPCを干渉系にはLQRを用いて設計した.また実機への適用を考慮してコントローラをカスケード構成とし制御周期を2重とした.経験的な設計方法にかわり,理論に基づいた設計方法を用いることで,合理的で性能の良い制御が得られることを示した.また制御対象に応じた設計則を選択し組み合わせることでより制御性を向上できることを示した.


■ 頭部装着型インタフェースデバイス(HIDE)の試作と機能評価

京大・下田 宏,朝日放送・二階堂義明,松下電工・梅田直樹,ソニー・林 直樹,京大・吉川榮和

 近年のコンピュータの小型化に伴い,携帯情報端末の1つの形態としてウェアラブルコンピュータが研究されている.著者らは,特に,実作業環境において,ハンドフリーで操作でき,必要な情報が音声や映像で提示できるウェアラブルコンピュータとして頭部装着型インタフェースデバイス(HIDE)を研究開発している.本研究では,HIDEの設計コンセプトを提案し,このコンセプトに基づく機能や構成を検討し,実際にプロトタイプを製作した.HIDEの機能は,(1)音声認識機能,(2)視線方向認識機能,(3)左目へのシースルー映像提示機能,(4)音声提示機能の4つである.特に,視線方向検出機能は,頭部装着ユニットが装着位置からずれた場合でも正しく視線方向を検出できるように,ずれ補正機能を考えた.そして,試作したHIDEを用いて,各機能の評価実験を行った.映像表示機能は,表示される映像の最小分解能を評価し,画像や文字情報提示に十分な解像度があることを確認した.音声認識機能は,音声認識率を評価し,95%以上の認識率であることを確認した.視線方向検出機能は,上下左右,および正面方向について,ずれ補正機能がある場合とない場合の認識率,認識時間を評価した.さらに,HIDEの応用例としてWWWブラウザを作成し,統合化機能の動作を確認した.


■ 因子分解を利用したモーションキャプチャ法

九工大・タン ジュークイ,石川聖二,東亜大・加藤清史

 本論文では,因子分解法を用いてモーションキャプチャを行う手法を提案する.モーションキャプチャは,人の動作を扱うさまざまな分野で利用されている技術である.従来のモーションキャプチャ法は光学的手法と非光学的手法の2種類に分類される.前者はステレオビジョンに代表され,市販品も多いが,使用にあたってはカメラキャリブレーションが必要であるため世界座標系を設定しなければならず,特に屋外では使いにくい.後者にはゴニオメータや磁気センサなどがあるが,身体に装着しなければならないので動作や行動範囲などに制限を受ける.

 提案する方法は,3台以上のビデオカメラを固定して対象を撮影し,時空間に広がる身体上の特徴点の画像座標をすべてまとめて1つの拡大計測行列に記入する.拡大計測行列に因子分解を1回適用することにより,全観察時間内のモーションを一度に3次元復元する.提案法の特徴は,(1)ビデオカメラのキャリブレーションが不要であること,(2)時間軸方向のモーションのつなぎ合わせが不要であること,(3)特徴点が取れるならどんな対象にも適用できるため,剛体・移動体・変形体,また複数物体の復元にも利用できることである.本法は光学像の生成を正射影で近似するので,これによる復元誤差は避けられないが,実験的には5%未満という復元誤差の値を得ている.


■ 混合ガウスモデルを用いたオンライン・ブラインド信号分離

九工大・大畑正志,徳成 剛,松岡清利

 統計的に独立な複数の信号が信号源から発生し(原信号),それらが定数倍され足し合わされた各信号を複数のセンサにより観測しているとする(瞬時的混合過程).本論文では,原信号と観測信号が同数であるとし,各原信号が統計的に独立な非ガウス性信号である以外の仮定を設けない場合のブラインド信号分離を考えた.一般に原信号の確率密度関数はわからないため,原信号を推定することはできない.そこで,原信号の確率モデルとして混合ガウスモデルを採用し,原信号の確率密度関数の推定と分離器の決定を同時に行った.混合ガウスモデルのパラメータのオンラインによる推定は,観測信号に影響を受け推定値が大きく変動する現象を引き起こす.その現象の考察とその対策を行い実用的なアルゴリズムを導いた.導出したアルゴリズムは,オンラインで原信号の確率密度関数の推定と分離器の決定を同時に行えるため,非定常な原信号である場合にも有用である.このことを示すため,原信号に非定常な信号を含む場合のシミュレーションを行った.


■ 進化的計算手法による構造未知線形動的システムの同定

オークマ・公文俊朗,名大・鈴木達也,名工大・岩崎 誠,名古屋産科研・橋山智訓,名工大・松井信行,名大・大熊 繁

 構造が未知であるシステムを対象としたシステム同定は,モデル構造の決定や伝達関数の次数決定時に試行錯誤的な操作が必要とされていた.これらの次数決定をする代表的な手法として,最小AIC推定法が挙げられる.しかし,対象とするシステムが複数の変数を持つ場合は,次数の組み合わせ総数が爆発的に増大するため,最小AIC推定法をそのまま適用するのは,計算量の面から現実的な方法ではない.本論文では,多入力変数の線形動的システムを例とし,遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm: GA)を適用することによって,モデルの構造とパラメータを効率的に同定する手法を提案する.ただし,GAを適用する際においても,モデル構造の探索範囲が広大すぎる,という問題は依然として残る.そのため,本研究ではあらかじめ構造に関する探索範囲をAIC最小化規範で限定した後,GAによってより精度の高いモデルを得ることを試みた.この結果,モデルを構成する冗長な項は削除され,時間応答や周波数特性に優れたモデルが得られることを確認した.


■ GAとSAを併用したニューラルネットワークの設計と硬貨識別への応用

徳島大・満倉靖恵,福見 稔,赤松則男

 ニューラルネットワーク(NN)は幅広い分野で応用されているが,一般に問題が大規模・複雑になるにつれ,演算量が多くなり,実機へのハードウェア化が難しいという現状にある.本論文ではハードウェア化を考慮してNNシステムを小さくする方法を提案し,硬貨識別に適用する.これまでにも,硬貨識別問題において,NNシステムを小さくする試みがなされているが,一方で,実機へのハードウェア化を実現しようとすれば,多大なコストがかかってしまい,ハードウェア化が困難である場合も少なくなかった.そこで本論文では,低コストシステムを実現するために,学習に用いる画像には,身近に存在する安価なスキャナで取り込んだ画像を用いる.このスキャナの制約により,画像全体ではなく,一部を取り込み,コスト削減も考慮して硬貨を認識するためのNNシステムを設計する.このとき,スキャナで取り込んだ画像は極座標に変換し,2次元フーリエ変換を行うことにより回転に不変な信号となる.フーリエ変換後,得られた振幅スペクトルをNNの入力とするが,すべてをNNの入力として学習するのではなく,GAとSAを併用して,より高い認識率を得るための必要最小限の振幅スペクトルを探索し,NNに学習させる.また,GAとSAを併用することで,GAのみで探索するときに比べると,早い世代で良好な結果を得ることが可能であることを示す.


■ ロジックインメモリアーキテクチャに基づく道路抽出用VLSIプロセッサの構成

八戸高専・工藤隆男,東北大・羽生貴弘,亀山充隆

 冗長に用意した演算器とレジスタから構成される処理要素をアロケーションすることにより,メモリと演算器間の通信ボトルネックを解消するVLSIプロセッサの新しいアーキテクチャを提案する.さらに,提案のアーキテクチャが適合する一例として道路抽出VLSIプロセッサを構成し,他のアーキテクチャに基づく同等機能VLSIプロセッサに比較し,高性能化および小型化が達成されることを明らかにする.

 道路抽出は高安全自動車において重要な処理の1つであり,そのリアルタイム処理が望まれている.まず,道路を「3次元形状の観点から車輪が走行可能な領域」と捉えることにより,その処理を大小比較演算に帰着させた,高並列性と規則性を有するVLSI向きアルゴリズムを考案する.このアルゴリズムを局所並列処理に基づき,メモリと演算器間の通信ボトルネックなしに実行するために,多数の処理要素を冗長に配置したVLSIプロセッサを提案する.処理要素間のデータ転送が最小限に抑えられるようなアロケーションを考察し,冗長に配置された処理要素を動的に切り替えながら稼働させる方式に基づくロジックインメモリアーキテクチャが有用であることを明らかにしている.


■ 仮想ポテンシャル関数を用いたエージェントの相互制御方法に関する検討

名古屋産科研・安田 真,名大・古橋 武,名古屋産科研・橋山智訓,名大・大熊 繁

 エージェントの行動を人工的なポテンシャル関数によって制御する手法では,環境に適したポテンシャルの形状をいかに定めるかが問題であり,特に複雑なマルチエージェント環境下では,エージェント設計段階での決定には困難が伴う.筆者らはスカラーポテンシャル関数の勾配によりエージェントの行動を束縛し,かつ,同関数を規定するパラメータを強化学習(クラシファイア・システム)を用いて個々のエージェント自身に自律的に獲得させる手法を提案した.本論文ではさらに効果的なエージェントの相互制御を可能とするために,エージェントに外部制御点となる仮想的なポテンシャル源を設定する能力をもたせる手法について検討する.エージェント自身を表現するスカラーポテンシャル関数に加えて,エージェントが任意の位置に任意の勾配で生成できる一時的に有効な仮想的なスカラーポテンシャル関数を用意し,他のエージェントを誘導可能にする.追跡ゲームを用いた検証実験の結果,複数エージェント間で協調的な空間探索を行える仮想ポテンシャルパラメータの自律的な獲得が可能であること,さらに,仮想ポテンシャルの利用により探索効率が向上することが確認された.


■ 視覚情報を用いた状態・行動空間の自律的生成

東大・小林祐一,太田 順,井上康介,新井民夫

 近年盛んに研究が行われている強化学習をはじめとする行動学習は,センサ情報が離散化など学習するロボットにとって適切な形での状態変数に変換されていることを前提としている.実世界に適用するためには多次元のセンサ入力からロボット自身の身体性に即した状態変数を抽出する過程が重要であり,本研究では,多次元センサ入力として視覚情報を用い,連続値の行動と状態空間を同時に自律的に生成する.ベクトル量子化アルゴリズムのひとつであるTRNアルゴリズムを用いて位相構造を保存した状態表現を用い,行動ごとに与えられる逐次的な評価にもとづいて状態を逐次分割する.行動はRBFを用いて位相近傍において修正・平滑化され,2次元平面上の対象物の押し操作に適用される.シミュレーションにより,入力画素数によらない状態空間の生成および連続値行動の平滑化が達成されることを示し,実験により視覚情報から直接に状態を生成することがシミュレーションにおけるモデル誤差を吸収する上で有効であることを確認した.


■ スキャンラインごとの色領域分割を用いたステレオマッチング

法政大・岩月正見,北川大二,河野祐輔

 本論文では,スキャンラインごとの色領域分割を用いて,ロバストな対応付けを行う新しいステレオマッチングの手法を提案する.本手法では,スキャンラインごとに領域分割を行っているので,画像全体に対して領域分割する場合に比べ,その処理時間は大幅に短縮されている.また,左右画像を同時に領域分割することにより,2つのカメラの特性や撮像のタイミングの違いによる影響を軽減している.しかしながら,色領域分割を行う際に,色空間内のクラスの併合のしきい値の選び方によって,本来分割されるべき領域が1つの領域に併合されてしまったり,併合されるべき領域が2つ以上の領域に分割されてしまい,適切な対応付けが行われないことがある.そこで,このような過併合,過分割の問題に対して,本手法では,併合のしきい値を段階的に変化させて階層的な色領域分割を行っている.これにより,すべての階層に対して色領域のマッチングを行って左右画像の分割結果の違いを吸収できるので,クラス併合のしきい値に依存しない安定したマッチングが行える.また,両側の色パターンが同一な領域境界の最大の連続系列を照合領域とみなしているので,相関値を用いる手法が不得意としていた繰り返しパターンやnarrow occlusionが存在するシーンに対しても誤対応の少ない奥行き情報を取得することができるだけでなく,アルゴリズムも単純化され,従来手法より対応境界探索に費やす計算量を軽減できる.


■ ビレットの誘導加熱坦傷における放射率ノイズの一改善方策

大同工大・遠藤敏夫,大同特殊鋼・八木富一,渡邊裕之,水野正志

 鉄鋼の中間製品であるビレットの表面疵を自動検査する手段の1つとして誘導加熱探傷法がある.この探傷法は,ビレット表層部を高周波誘導加熱で急速加熱させたとき,疵部と健全部の温度上昇に差が生ずることから,その温度差をサーモグラフィで測定し,傷部位を検出する方法である.誘導加熱探傷法は,磁性ビレットのみならず非磁性ビレットにも適用可能,あるいは,装置構成が簡便であるなどの利点を有する.しかし,疵検出にサーモグラフィを用いているためビレット表面の放射率差,とくに,ビレット搬送時に頻繁に生ずる光沢部がノイズとなり,実用化にはビレット表面の放射率を高めると同時に,一様化する技術が必須であった.

 筆者らは,ビレット表面を粉体でまばらに覆うことによって疵信号を大幅に高める方法を考案した.また,自動車部品などの塗装において広く利用されている静電粉体塗布技術を用いて粉体を一様に塗布することにより,ノイズを大幅に低減させることができた.ここで報告した方法を適用することによって非磁性ビレットを対象にした自動探傷装置を実現させることができた.その実用機は生産ラインで現在も順調に稼働を続け,生産性と製品品質の向上に大きく貢献している.


■ MPEG画像による土石流の検知

京工大・小山俊彦,稲葉宏幸,滋賀大・板倉安正,京工大・笠原正雄

 1996年12月長野県小谷村や1997年7月鹿児島県出水市などで発生した大規模な土石流をはじめ,土石流は多くの人命や財産を奪い,社会に与える被害が大きい.土石流の検知を可能な限り早く検知することは緊急の課題である.

 従来法として知られているワイヤーセンサ法は土石流の通過が予想される地点に設置した電流の流れているワイヤーが土石流により切断され,これをもって検知するものであるが,この方法には小動物などによる誤作動や,検知が一度きりで,再設定作業が危険であるなど問題がある.

 そこで本論文では,これらの問題点を克服した検地方法の1つとして,MPEGビデオ映像により遠隔地より自動的に検知するシステムを提案する.

 提案する検知方式は,MPEG方式における動き補償ベクトルの大きさが土石流の通過に伴って大きくなることを利用する.

 本検知方式の性能を確保するため,6種類の土石流映像に対して検知を試みた.その結果,画質の著しく劣る1つを除くすべてのサンプルにおいて検知が成功した.また,提案した検知アルゴリズムは,あらかじめいくつかのパラメータを定める必要があるが,これらは設置場所の状況から容易に定めることができる.


■ Controller Failure Time Analysis for Linear Time-Invariant Systems

Wakayama Univ.・Guisheng ZHAI, Shigemasa TAKAI,Kazunori YASUDA

 In this paper, we consider a controller failure time analysis problem for linear time-invariant systems. By using a piecewise Lyapunov function, we show that if the unavailability rate of the controller is smaller than a specified constant and the average time interval between controller failures is large enough, then global exponential stability of the system is guaranteed.


■ 周波数領域での部分的モデルマッチングによる多自由度構造物の分散アクティブ振動制御

熊本大・王 建坤,岩井善太,Mingcong Deng

 本論文は,これまで著者らが提案している周波数領域上での部分的モデルマッチング法に基づく多入出力線形コントローラ設計法を,構造物のアクティブ制振に実際に適用した結果について報告したものである.ただし,コントローラ構造を簡略化して問題を分散形式でのコントローラ設計問題として処理している.上記手法を制振制御に適用した例はこれまでない.ここでは4層構造物を例に取り,参照モデルの構成,パラメータ同定などに関する具体的検討結果を示し,今後の設計指針とすると共に,実験で実際に検証を行い,手法の有効性を確認した.


■ Controllability of Hierarchical Systems with Direct Product Symmetry

Keio Univ.・Reiko TANAKA

 This paper deals with symmetric control systems consisting of some modules with local internal symmetries. The symmetry of the whole system can be described with a direct product G×L of the groups G for global symmetry and L for local symmetry. As a characteristic determined from the two symmetries, we focus on the loss of controllability in the systems by certain symmetric failures and clarify that the conditions for the loss of controllability are given for each level of symmetry separately.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会