SICE 社団法人 計測自動制御学会
Top
新着情報
学会案内
入会案内
部門
支部
学会活動
学科行事
お知らせ
会誌・論文誌・出版物
学会誌
論文集・バックナンバー
英語論文集
産業論文集
学術図書のご案内
残部資料頒布のご案内
リンク
その他
サイトマップ お問い合わせ
 会誌・論文誌・出版物
 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.37 No.7 (2001年7月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文] [ショート・ペーパー]
■ 圧力センサ枕による睡眠時呼吸・体動計測システムの実現

東大・原田達也,坂田晶子,飯田 豊,森 武俊,佐藤知正

 本論文では,無拘束かつ簡便に呼吸と体動が計測可能であり,利用者の枕への趣向の幅の広さにも対応可能な“圧力センサ枕システム”を提案する.このシステムは一般的に使用されている枕,頭部の動作を計測するための枕の下に敷いた圧力センサシート,頭部動作データの無線送信機より構成されている.さらに本論文では,呼吸時における胸郭の動作による頭部の運動モデルを考察することで,寝ている人の体位や頭部の位置や枕の充填物によらず頑健に呼吸を計測するアルゴリズムを提案している.圧力センサ枕システムと医療用呼吸計測機器より計測される呼吸曲線と比較することにより,枕の充填物にもよらず睡眠中の呼吸や体動が計測可能であり無呼吸状態も検出可能であることを示した.


■ 光子計数法を用いた光CTイメージング

松江高専・亀谷 均

 光は生物組織内で強く散乱しほとんど直進透過しない.したがって,光CTにおいて断層画像を再構成するアルゴリズムに従来手法を使う限り,直進光を選択的にとらえ,かつ高感度に検出する技術が必要になる.その方法として時間分解法,CDI法,偏光保存成分検出法などが研究されている.本研究では,新しい試みとして透過光の測定において,光子計数法を採用し,透過光の強度分布が測定可能な光CT装置を開発し,生物組織の断層イメージングを試みた.直進光と散乱光の弁別は,凸レンズと光ファイバーで構成される空間コリメータで行った.この方法は,十分な散乱光の抑制が難しいとされるが,光子計測法と組み合わせてどの程度の断層イメージングが可能か検証した.透過光強度分布の強散乱体濃度依存性実験から強散乱体濃度の変化に伴う光子の動きの変化が,強度分布を測定することで定性的に理解できた.また,強散乱体中の吸収体の断層像を強度分布の計数値の重み付け積分値を投影データとして画像再構成を行った.その結果強散乱体として用いたイントラリピッド濃度が1.3%の場合においても吸収体の断層像を再構成することができた.さらにオクラおよびウズラの卵の断層イメージングを試みたところ,オクラに関しては内部の5つの種が,卵に関しては黄身の部分が卵の中心から偏心していることなどが画像化できた.


■ 細線熱電対を用いた回復温度測定に基づくほぼ非侵襲な音速ノズル内遷音速流速分布の測定

産総研・石橋雅裕,高本正樹

 プラントル数が1ではない気体の流れ場の中に細線熱電対線を張り,回復温度を測定することにより,数m/sから超音速までの流速をほぼ非侵襲に測定できることを示した.熱電対の感度は接点に集中しているため,細線熱電対を用いることにより,10 μmオーダの非常に高い空間分解能が達成できる.また,測定値が熱電対線の長さに依存しないため,長い線を用いることによりサポート位置を測定点から十分に離すことができ,サポートによる乱れの影響がない状態での測定が可能となる.

 本論文では,スロート直径13.4mmφの軸対象音速ノズル内に50mmφの細線熱電対線を張り,これをトラバースすることにより,このノズル内に発生した遷音速流の流速分布を測定した.その結果,測定値は一次元等エントロピー理論と定量的にも非常によく一致するほか,二次元理論の予測する微細構造までも検出していることを示した.さらに,これらの単純な理論では予測不可能な斜め衝撃波や背圧比と共に位置と振幅が複雑に変化する垂直衝撃波も検出された.


■ 出力むだ時間をもつ多変数制御系のコントローラ・パラメトリゼーションによる設計

山形大・伊豆田義人,渡部慶二,羅 志偉

 これまでは,入力や状態にむだ時間をもつ系を中心にロバスト安定化やH∞制御等が検討されてきたが,制御器の実現性に難点がある.実現性に重点をおいた内部モデル制御や繰返し設計法でもつぎの問題がある.前者は不安定系や多変数系に対し不安定極を相殺し,不安定零点を残すフィルターの一般的な設計法が確立されていない.後者については,多変数系では大きさの異なる出力むだ時間を入力側むだ時間として扱うことができないことと,むだ時間が入力にあるか出力に入るかでオブザーバの構造が変わるので,別々に検討する必要がある.これらのことから,出力むだ時間系に対する混合感度仕様を満たす制御器の設計方法は十分整備されていない.本研究では,この点に着目し,出力にむだ時間をもつ多変数制御系の設計方を与えた.本設計方は,異なる複数のむだ時間系が存在する場合にたいして設計可能である.また,内部安定性と混合感度を陽に見ることができるコントローラ・パラメトリゼーションを用い,1つのパラメータの一方向の調整で,2ディスク混合感度仕様やロバスト感度仕様を満たすことができる実現可能な制御器の設計法を提案した.


■ 直接勾配降下制御による非線形システムの安定化制御

山武・大塚賢司,慶大・志水清孝

 本論文では直接勾配降下制御を取り扱っている.それは評価関数の制御入力に関する勾配に基づき,所望の平衡状態からの二乗誤差を減少するように直接的に制御入力を操作する方式である.直接勾配降下制御の安定性は比較関数法で証明される.さらに本論文では,2次形式の評価関数の設定のもと,直接勾配降下制御が局所的な漸近安定化を実行できるための条件と手法を研究する.その条件は最小位相の性質に注目したものである.直接勾配降下制御系を線形化したシステムが最小位相ならば,漸近安定性を保証するような勾配降下法(最急降下法)の比例係数が存在するということを証明する.さらに,この結果を利用した直接勾配降下制御の簡便な設計手法を提案する.この設計方法はリカッチ代数方程式を道具として用いており,簡単に実行できる.最後に数値例として,非線形モデルに対するシミュレーション結果を示し,本手法の有効性を確かめる.


■ 分布的・集中的柔軟性をもつ大型宇宙構造物の振動系の指数安定化

東工大・松野文俊,大野高史

 本論文では,分布的柔軟性と集中的柔軟性をもった柔軟宇宙構造物の基本的なシステムである,バネ結合された2本の柔軟ビームの分布定数モデルに基づいた振動抑制制御について考える.宇宙における計算機パワーが限られていることを考慮し,有限次元近似を用いない,簡単な出力フィードバック制御則を提案する.ここでは,柔軟ビームに内部減衰を仮定するため,開ループ系は指数安定である.しかし,一般に減衰係数は小さく,振動の減衰は非常に遅い.そこで,システムの指数安定度を改善するようなロバストで実装容易な制御系を構築する.まず,ビームの振動抑制のためにビームの根元における歪みの時間微分に対応する項をフィードバックする制御則を提案する.つぎに,その閉ループ系が指数安定となること,制御器がシステムの指数安定性を改善することを分布定数系として証明する.最後に,提案した制御則の実装が容易であることを述べる.


■ Just In Timeモデリングの新しい手法とその圧延セットアップモデルへの応用

東大・鄭 秋宝,木村英紀

 本稿では非線形性の強い圧延セットアップモデルの同定に対して,JITモデリングを適用した結果を解説する.さらに,予測精度を向上するため,すでに得られている準大域モデルとJITモデリングを組み合わせてできた1つの新たな方法,すなわち,k-BN2(k Bipartite Neighbors2)を述べる.2つの実測した圧延セットアップ・データ集合に基づくシミュレーション結果により,k-BN2の予測精度がk-BNより改善され,準大域モデルよりも優れていることを示される.特に,k-BN2は従来のJITモデリングより孤立点および観測雑音にあまり影響されない.これより,k-BN2が非線形対象に対して予測精度を向上する1つの有力なモデリングの方法であることを示した.


■ ロボットマニピュレータの非線形H∞適応ロバスト制御

名大・尹 英杰,尾形和哉,早川義一

 本論文では,消散性概念を用いて,ロボットマニピュレータの物理パラメータに不確かさがあるにも関わらず,重力項のパラメータのみのオンライン推定機能を用いて,L2外乱抑制性能をもつロバストな制御法を提案する.提案する制御法はノミナル値を用いた非線形補償およびPIDフィードバックで構成されると考えられ,コントローラが簡単で実用的である.またコントローラを設計する際にフィードバック制御量の大きさを評価信号に加えているので,ハイゲインフィードバックを抑えることができる.提案する制御法の有効性および推定パラメータが少ないことへの実用性を,他の方法と比較して,実験結果で示す.


■ 空間分布一般化学習ネットワークを利用した複雑系の相互作用のモデル

日立・楠見尚弘,九大・平澤宏太郎,胡 敬炉,村田純一

 近年,システムの大規模化および複雑化にともない,柔軟性のあるシステムの研究開発が進められている.その1つに,生物のもつ特徴を学習・進化のアルゴリズムに活用し,柔軟性のあるシステムを構築するソフトコンピューティングの研究がある.特に,個々の相互作用により,全体システムとして新しい機能を有するようになる「創発システム」が注目をされている.また,生態学の分野では個間の相互作用を共生,搾取,共利等の共生現象として捉え,その複雑な挙動を数理的に検討する研究も行われている.

 一方,筆者らは多様化,複雑化,大規模化するシステムのモデル化と制御に適した一般化学習ネットワークおよびそれを利用した制御方式を提案し,高次微分を用いたロバスト制御やカオス制御等の応用例を報告してきた.しかし,一般化学習ネットワークではシステムの空間的な時間変化を取り扱っていないため,個間相互作用の空間的な振舞いなどが考慮されるべきシステムには,一般化学習ネットワークをそのまま適用することが困難である.

 そこで,本論文では,筆者らが提案してきた一般化学習ネットワークに空間分布の機構を付加した空間分布一般化学習ネットワークを立案し,これを利用した個間の複雑な相互作用をモデル化するための技術を提案する.個間の相互作用は,個の大きさに関係する共生パラメータと個の位置に関する追跡・離散パラメータによって表現し,これらのパラメータを個の大きさと位置情報を利用したファジィ推論により計算する個体群の相互作用モデルを提案している.


■ 画像生成モデルを内包した学習による陰影画像からの形状復元問題の汎用性のある解法

京工大・黒江康明,吉崎好彦,川上 肇,森 武宏

 本稿は,コンピュータビジョンにおける重要な問題の1つである陰影画像から形状を復元する問題に対して,ニューラルネットワークを用いた解法を提案している.提案している方法はつぎのような種々の状況が同一の解法で扱える汎用性のある方法である.すなわち,任意の反射特性をもつ物体を扱える,また,同一物体に対し照明方向の異なる複数枚の陰影画像が得られる場合,あるいは画像の陰影情報だけでなく他のセンサなどから奥行き,表面勾配の情報が得られる場合,これらの情報を有効に利用して形状復元が行える.

 そのため本稿では,モデル内包学習という学習の枠組みを新たに提案している.すなわち,対象物体がある撮像条件において撮像され画像として得られる過程を画像生成モデルとして表わし,形状復元問題を,ニューラルネットワークの学習過程のループにこの画像生成モデルを内包させた学習問題へと定式化し,その学習アルゴリズムを導いている.このようにすることにより,種々の状況が画像生成モデルを変更するだけで容易に扱え,汎用性のある方法が実現できる.人工画像および実画像を用いて,種々の状況を設定し提案法により復元実験を行った結果,いずれの場合においても形状は良好に復元され,汎用性のある方法であることを確認している.


■ 輪郭線間に生じる幾何学的錯視量の定量化

アプコット・平井豊祥,広島工大・北山正文広島修道大・高木敬雄,広島工大・森保洋之

 近年CPU能力の飛躍的な向上により,画像処理の速度も向上し画像計測におけるさまざまな手法が提案されてきた.それらの大半は,任意のターゲットをカメラで撮影した画像に対して,分解能などを考慮し,絶対的な座標や,大きさを取得するものである.しかし,われわれ人間が観察している風景は,周囲の状況から経験的に,座標や,大きさを認識するため,従来の画像処理アルゴリズムから得られる座標や,大きさと,人間が知覚する座標や,大きさは必ずしも一致しない.

 したがって,空間を視知覚的に把握するための計測を行う場合や,画像から受ける美的現象などの知覚特性を計測する場合などは,定性的な評価ではなく,数式などでアプリケーションとして利用できるような定量評価が必要である.そこでわれわれは,実験心理学でよく知られている錯視図形に着目し,これら図形の錯視量を定量的に表現し,実画像の誘導線分に対して適用した結果,ある程度納得の行く結果が得られたので,本論文にまとめることにした.


■ 多項式ネットワークによる非線形系の最適制御について

金沢学院大・島 孝司

 本研究では,新しい構造をもつチェビシェフ多項式系からなるネットワークとルジャンドル多項式系からなるネットワークを提案する.特に,ルジャンドル多項式ネットワークの提案は,著者の知る限り初めてである.また,それぞれのネットワークをフィードバック・コントローラとしてもつ制御系の最適制御問題を考え,それぞれの多項式ネットワークの性能をニューラル・ネットワークや一般化ラジアル基底関数ネットワークをコントローラとしてもつ最適制御系と比較する.良好な比較結果が得られることを示し,これらの多項式ネットワークが最適制御問題に有効であることを示す.


■ 確率的分枝限定法によるBMI最適化問題の求解

山武ビル・伊藤修二,東工大・原 辰次,森 耕平

 BMI固有値問題は多くのロバスト制御問題を自然に記述できる最適化問題であり,この問題に対する効率的なアルゴリズムは工学上大きな意味をもっている.しかし現時点では,理論的にも実用的にも,確定的手法によりBMI問題を現実的な計算コストで解くことは非常に難しい.

 本論文では,BMI問題に対する分枝限定法と確率的手法を組み合わせた最適化手法を提案し,計算機実験によりその有効性を示唆することを目的としている.提案手法は,良い解を「高い確率」で「高速」に求めようとするものであり,分枝限定法とランダム化アルゴリズムの中間に位置付けられる手法である.計算機実験においては,通常の分枝限定法と比較して得られる解の精度の極端な劣化は見られず,サイズの大きい難しい問題に対しては生成される子問題数や計算時間の面で大幅な改善が見られた.すなわち,提案手法はBMI問題に対する1つの有効な解法となる可能性があることが示された.パラメータ調整などによる提案アルゴリズムの性能向上に関する検討,得られる解の精度と計算量との関係に関する理論的解析が今後の課題である.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会