計測と制御 2009年6月号

VOL. 48, 2009

特集「モーション・メディアとインフォマティブ・モーション」

最近,サービス・サイエンスやサービス工学と言う,「サービス」に関する研究領域が注目されてい近年ロボットを,コミュニケーション・癒し・セラピー・玩具・教育などへの応用をねらいとして,人とインタラクションするためのメディアと捉える考え方が研究者の間で浸透してきている.一方ビジネスとしての側面では,これらの応用製品の市場は未だ黎明期を脱却しておらず,その真の価値や存在意義について究明すべきことがまだまだ山積している. ロボットの定義も様々あるが,その本質的な特徴は,物理的な実体の「動き=モーション」にあるといえる.そう考えたときに,モーションの価値や意義を明確化し,それを物理的実体であるロボットにおいて,いかに効果的に表現するかが,上記製品の商業的価値を左右すると思われる. このような認識のもとで,ロボットに代表される実体のモーションを,従来のメディアであるテキスト・音・画像・映像と同様に,「モーション・メディア(MM)」と位置づける考え方が最近提唱されている.さらには,音楽や動画などの従来のメディアのコンテンツと同様に,モーション・メディア・コンテンツとそのネットワーク流通の枠組みが議論され,その結果として,ロボットはモーション・メディアの入出力端末という解釈がなされている. 一方「インフォマティブ・モーション(IM)」とは,人(動物)や機械において,明示的ではない情報を含んだ形態・構造や運動・動作をまとめた呼称であり,人間共存型人工機械システムへの導入が検討されている.家庭内などの人と共有する空間で作業する人工機械システムに対して,何をするかわからないという恐怖感や何となく感じる違和感を排除するには,外見を人型(2足2腕+頭部)や動物型にするだけでなく,サイズ・動作と性能・機能などの関係において,人の常識,経験知・暗黙知に合致した形態・動きが必要だと考えられる. このようにMMとIMは,「モーション」を機軸に据えた新しいコンセプトであり,近い将来,真に価値のあるロボットの実用展開に向けての鍵となる可能性がある.そこで本特集では,これら2つの概念の共通性と差異・重要性などを明らかにするために,MMとIMに関連が深いと考えられる様々な分野の専門家の方々を募り,ご専門とされる分野との関連性について論じて頂くことにした.具体的には,身体的コミュニケーション,媒体流通技術,情報コンテンツ・デザイン,教育,制御理論,生体システム,ユーザ・インタフェース,製品応用などの,さまざまな切り口から解説・紹介することで,読者に対してこの分野への関心と参加を促がすものである.

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