計測と制御 2016年 1月号

VOL. 55, 2016

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特集 「企業経営・組織運営への実験科学アプローチ」

 複雑な対象をモデル化し,実験と計測を通じて接近を試みる研究方法は自然科学や工学など広範な領域において発展を遂げて来た.近年は心理学や経済学などより幅広い領域に広がっており,たとえば実験経済学や行動経済学という新たな研究領域を形成している.また,データマイニング,機械学習,シミュレーション,モデリング,最適化など,実験科学に関連する理論および手法も発展してきている.
 しかし,企業経営や組織運営の領域では,これまで多くの理論や仮説が提示されているものの,ケーススタディや帰納的類推が中心であり,実験科学的なアプローチが十分に行われてきたとは言い難い.社会や市場といった外部環境の流動性,組織構成員の認知や判断という主観的な要因,および企業・組織における現象の再現性の乏しさなどによって,この領域における実験科学の方法論が未成熟となっていたためである.
 最近になって,実験科学に関する手法の発展やICTの普及によるデータ蓄積・再利用の容易化等を背景に,企業経営や組織運営の領域でも,実験と計測による仮説立案と裏付けを伴った研究が進展しつつある.社会経済システムが複雑化・大規模化し,従来の分析手法の限界が見られる現在において,企業経営・組織運営分野の問題を複雑適応系として捉え,実験と計測を通じて考察することは意義深く,今後さらなる推進が求められる.
 本特集号では,以上の認識のもとに,企業経営や組織運営の領域において,実験・計測の理論・手法がどのように適用され成果を上げているのか,および実験・計測手法を企業・組織分野で今後どのように活用すべきかという観点から,最近展開されつつある研究の動向と課題について,関係する研究者の方々に執筆をお願いした.

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